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シナリオ

数歩先も見えない荒れ狂う吹雪の中、頭の先から足の先までを毛皮の防寒着に身を包んだ青年が背にバックパックを背負って深く険しい山道を足早に進んでいる。


青年が歩いた後には、彼がそこを通った証がしっかりと残っている。それこそが彼の生きていた証拠だ。


[S・ジン]


雪が積もっている胸の名札には、手彫りで名が刻まれてある。


いくら歩いても吹雪が止むことはない。だがジンの歩みは緩まるどころが更に早くなっていく。


歩くうちに夜になり、吹雪が少し落ち着いた。ジンの歩みは一度止まり、肩と頭の雪を払ったあと、また足早に進みだす。


夜の山は更に冷える。ジンは口を閉じたまま、前だけを見て進む。


目の前に巨大な尖った岩が現れたとき、不意にジンの歩みが止まった。ジンは右手の分厚い革の手袋を外し、凍える吹雪の中、巨大な尖った岩へ手の甲を向ける。


吹雪の中で微かな緑色の光がジンの手の甲と巨大な尖った岩を細い線が結ぶ。

緑色の光を放つジンの手の甲には螺旋に本の紋章が描かれている。


ジンの手の甲と結ばれている巨大な尖った岩にもゆっくりと螺旋に本の紋章が描かれていく。

やがてその紋章が、外側へと剥がれ始めた。


紋章は綺麗に剥がれると、剥がれた場所からは、吹雪の中でも見えるほどの眩しいほどの光が溢れる。


何の躊躇いもなくジンはその光の中へと歩いていく。本来なら岩に当たるはずだが、ジンの体は光の中へと吸い込まれていった。





ジンはどこかわからない小さな石造りの部屋の中に立っていた。

目の前には大きなカーテンがあり、後ろには大きな螺旋と本の紋章が描かれている。


「いらっしゃーーーい!!」


小さな部屋に響き渡る大きな声で、少女がジンの首へと抱きついてくる。


「ここが、ギルドで合っているのか?」


「合ってるよ!初めまして、そしてようこそ!ここは冒険者ギルド702支部、私はギルドマスターのリーチェ、よろしく!」


目指していた冒険者ギルドにようやく辿り着き、ジンは体の肩の力が少し抜けた。

だがマスターが6歳くらいの少女と言うことにジンは少し不安になった。



肩に積もった雪に気づいたのかリーチェはやっとジンの首から離れ、濡れた手を降る。


「君は冒険者になるために来たんだよね?ここまで来るの大変だったでしょー。」


「何であんな雪山の頂上付近に入り口があるんだ?見つけるのに苦労したよ。」


「ふむー、『冒険者たるもの心身共に強くあれ』。冒険者の掟でね、ここに来るまでに既に君は試されてたんだよ。強い体と心がないとあの雪山の頂上まで登れないからね。」


リーチェは言葉に合わせてモーションをとっている。


「それじゃあ、今から冒険者ギルド702支部を案内するね!さぁさぁこのカーテンをくぐってくぐってー!」


ジンはリーチェに言われるがまま大きなカーテンをめくり、中へ入った。


『ようこそ~!!!』


中は広い石造りのバーのような場所だった。机だけで50を越え、椅子を含めると300をも越える。

その席すべてに冒険者らしき人達が座っていた。


「すごいでしょ?みんな702支部の仲間なんだよ。君は数ある冒険者ギルドの中からここに辿り着いたんだよ。」


「あの雪山から702支部に繋がってるんじゃないのか?」


「うん!ランダムだよ。どこに行くかは上層部しかわからないんだ!だから私たちは君を歓迎してるんだよ。なんたって数年ぶりの新入りさんだもん!」


リーチェはジンの背中を両手で押して、広い部屋の中心へと連れていく。


「はいっ!みんなに自己紹介するんだよ!」


「あ、あぁ。俺の名前はジン。今日からこのギルドの一員となる。足手まといになると思うがよろしく!」


「はいっ!じゃあ次はこっちに来てね!」


リーチェは軽快に冒険者の間を走り抜け、隣の部屋へと向かう扉の前で立ち止まった。


「みんな!ちょっと待っててねっ!!」


そう言うとリーチェはジンにこっちこっちと手招きをし、獣の刺繍の入った大きなカーテンをくぐって、奥へと進む。


ジンはリーチェに続き大きなカーテンをくぐる。



「来たね、はい!この名簿に君の名前を書くんだよ。この名簿は702支部に所属する冒険者たちの名前が書かれてあるんだよ。君もこれで正式に702支部の冒険者だね!」


とても分厚い、古びた名簿を重そうにジンへと手渡した。

ジンは名簿を開き、その末端に自分名前をサインした。


「書けたね!ホラ、君の腕の紋章が変わるよ。」


ジンの腕にある紋章が朧気に光り、螺旋と本の紋章の中に [702] と刻み込まれた。


「この紋章は、君が戻ってくるときに702支部に繋げてくれるんだ!だから安心して冒険してくるんだよ。」



そう言うと、リーチェは部屋の奥へと走っていった。


どうやらこの部屋はリーチェの私部屋のようだ。 可愛いげなぬいぐるみやら、人形やら共に机や寝具が一通り揃っている。

机には山積みになっている書類がある。

ギルドマスターということもあってそれなりに忙しいようだ。



「えへへー、はいこれ!冒険書!!これに冒険の記録をするんだよ。永続の守護魔法がかけられているから無くす心配もないし、濡れることもないし、燃えることもないから常に持っててね。書ききったら次のをあげるから言ってね!」



リーチェはジンの持っていた名簿と冒険書を取り替えて、こう言った。


「うん、ここに名前を書いてね。書かないと魔法が効かないから。」


ジンは冒険書に自分の名前を書き込んだ。


「はい!これで手続き終わりっ!これで君は立派な冒険者!!私はこれからやらなきゃいけないことがたくさんあるから後はみんなに聞いてね。」


「わかった、ありがとう。ではまた。」


「うん!」



ジンは部屋を出て先程の広い部屋へと戻る。


『おつかれ~!』


他の冒険者が一斉にジンへと駆け寄って来る。

皆酒が入っているのか酒の匂いが漂っている。



「こっちよ、こっち。」


広部屋の奥で女冒険者が手招きをしている。

ジンは冒険者の輪を切り抜け女冒険者の方へと向かう。


「なんだ?」


「初めまして、私はヘラよ、よろしくね。」


「よろしく。」


「ここじゃみんなが寄ってくるから向かうへ行きましょう。」


ジンとヘラは静かに


「何も分からないようだからこのギルドのこと、教えといてあげる。まず階級ね。」


ヘラの話ではギルドマスターが頂点となり、その下に冒険者がいる。

冒険者にも様々な職種があり、その職種に従った階級がある。


「次にこのギルドのことね。」


まずこの広い部屋はリビングと呼ばれているらしい。そしてマスターの部屋はリーチェルーム、玄関はゲートと呼ばれている。他にもいくつか部屋はあるが、全てマスターのリーチェが独特の呼び方をつけているらしい。



「そうそう、食べ物はたっぷりあるけど、それ以外は自腹よ。お金がないときは掲示板から依頼を受けて働いてくるの。お金がたまったら武器や防具、必要なものを買ったりして、みんな自分の目的のために旅に出たりするのが普通ね。」


ヘラはそう言い残すとリビングの方へ戻っていった。



ジンはリビングにある武防具屋へ行き、持ち金で手頃な剣を一振り買った。


「もう行くのかい」


冒険者の一人がジンに声をかけてきた。


「あぁ、やりたいことがあるんだ。」


「そうかい」



そこで会話は終わり、ジンはゲートへと行き、光の中へと消えた。







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