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洋食屋 コッペリア。  作者: シュレディンガーの羊
本編
9/10

09。お子様ランチとハヤシライス。

09。お子様ランチとハヤシライス。



机を挟んで向かい合うのは、

パーカーとワンピースの二人。



プラスチックの可愛らしいプレート。

プリン型のチキンライスには、日の丸の旗が刺さっている。


「ねぇ、パパ」

「ん、どうした?」

「パパとママはどうしてけっこんしたの?」

「……えーと、いきなりどうしたのかな?」

「ママはびじんだから、パパがいっしょーけんめー、たのんだんでしょ?」

「違うよ!」

「ちがうの?」


スパゲティーにハンバーグ。カラフルでどこか玩具じみた料理にフォークが入れられていく。


「実はママの方から好きだって言ったんだ」

「パパ、まけたの?」

「……先に言った方が勝ちになるわけじゃないんだよ? 確かに後に言うのはちょっと格好悪いけど」

「ママはパパに、なんてゆったの?」

「君の料理が好きって言われたよ。一生、君の料理が食べたいってね」

「ママはパパのおりょーりがすきなの?」

「……我が娘ながら、手厳しいなぁ。ねぇ、ママをどう思う?」


どことなくトマトが香るハヤシライス。じっくりと炒められた玉葱が飴色で甘い。


「ママ、かっこいいっ!」

「うん。仕事をしてるママはとびっきり素敵だ。でも、ママは料理ができないだろ?」

「まっくろー」

「そう。で、パパは料理はできるけど、仕事は得意じゃない」

「パパはせんぎょーしゅふ!」

「うん。だから、パパとママはお互いに一緒にいたいと思ったんだ」

「すきだからじゃなくて?」

「もちろん好きだよ。それで、認め合ってるんだ。だから結婚したの」

「わたしもパパママすきー」


プラスチックのスプーンとフォークが、かちゃかちゃと音をたてる。銀のスプーンは器用にハヤシライスを掬う。


「パパも好きだよ」

「はやくママにあいたい」

「大丈夫。明日の夜には帰ってくるから」

「そしたら、ママにもすきってゆーの」

「ママ、照れちゃうだろうなー」

「ぎゅーってしてくれるといいな」



「ママが帰ってきたら、何作ってあげようかなぁ」

「おこさまらんちがいい!」

「あぁ、いいね。いつも気を張ってるママを一日だけお子様にしてあげよう」

「うん!」



ドアベルが澄んだ音をたてた。

並んで出ていく親子を見送りながら、店長は一人微笑む。


「優しい親子様、またお越しください」


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