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洋食屋 コッペリア。  作者: シュレディンガーの羊
本編
5/10

05。ショートケーキとミルフィーユ。

05。ショートケーキとミルフィーユ。



机を挟んで向かい合うのは、

セーラー服とブレザー姿の二人。



微かなバニラエッセンスの香り。

上品な苺の赤と、純真なクリームの白。


「やっぱりこれじゃなくちゃねー」

「本当にショートケーキ好きね」

「だってケーキの本質はこれだよー」

「本質ねぇ」

「苺に生クリーム。まさに正統派だもん」

「そう。で、本件はなあに? ショートケーキに免じていま言えば許してあげる」


フォークで切り取られた断面が、だんだんと傾いでいく。ショートケーキの上から苺が転がり落ちる。


「あれー? ばれてた?」

「ケーキを食べに行こうってあんたが言うときには裏があんのよ」

「だって、甘いものを前にしたら怒る気うせるかなーと思って」

「お見通しよ、それぐらい」

「んー。さすが我が親友だね。見事見事」

「何年親友やってると思ってんのよ」


躊躇いなくミルフィーユを横倒しにする。

さくりと音をたてるパイ生地。上にかけられた粉砂糖が少し散る。


「実はわたし、告って付き合って振られて泣いてみたいな感じなことをしましてー」

「そんなの初耳よ」

「うん。親友に言わずにいてごめーん」

「このミルフィーユ、あんたの奢りね」

「うーん。やっぱケーキによる甘さは偉大」

「てゆうか、なんで泣く前に私に相談とかしないわけ?」

「少しは迷惑かけるのやめて、親友離れしようかなーて考えて」

「で、結論は?」

「懲りましたー。私には親友様が必要です」


正統派で純白なショートケーキは傾いて、豪奢で高貴なミルフィーユは横倒し。

でも、見た目が崩れても香りは甘いまま。


「ねぇ、知ってる? ミルフィーユって先に横倒しにしたほうが綺麗に食べやすいの」

「なんの例えかなー。したたかな親友様?」

「それが私の長所だから。あんたの長所は飾り気のない真っさらなとこよ」

「ありがとー。やっぱ親友は必要不可欠、偉大すぎー。もう絶対、浮気しません!」



「もうわたし、親友だけいればいいやー」

「私はいつかあんたとダブルデートしたい」

「やっぱ訂正。四人でケーキ食べれるような人、一緒に見つけよー」



ドアベルが澄んだ音をたてた。

並んで出ていく少女を見送りながら、店長は一人微笑む。


「絆あるご親友様、またお越しください」

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