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洋食屋 コッペリア。  作者: シュレディンガーの羊
本編
3/10

03。スパゲッティとグラタン。



机を挟んで向かい合うのは、ジーンズとスカートの二人。



机の上でトマトの赤は鮮やかだった。

美味しそうなナポリタンのスパゲッティがふんわり湯気をたてる。


「ねぇ、今日は何回目のデート?」

「三回目。放課後も入れたら八回目」

「それって少ないかな?」

「付き合って三ヶ月ならこのくらいが妥当」

「妥当って今までの経験上?」

「これは一般論に近いと思う」


くるくるとフォークにスパゲッティを巻き付ける手には少しの動揺もない。

傍らに置かれたスプーンは手付かず。


「スパゲッティ、好きなの?」

「どうして」

「いつも頼んでるでしょ」

「君だっていつもグラタンを頼む。それと同じだろ」

「……ずるいわ」

「何が?」

「いつも私だけが好きみたいで。余裕がないのはいつも私のほうだけで」


グラタンのマカロニを掬おうとすれば、スプーンが白い陶器の底に当たる。

とろけていたチーズはいつの間にか、もう固まりかけている。


「君、どうしてスパゲッティ頼まないの?」

「え?」

「実はスパゲッティ好きだろ。いつも僕のを羨ましそうに見てる」

「だ、だって、スパゲッティは上手く食べられないんだもの! それにデートで食べるのはNGだって本に書いて」

「ほら、やっと本音言った」

「あ、ちが、違うの!」

「違わない。僕がそんなこともわからないとでも思った?」


机の上に並ぶ二つの料理。

食べにくいスパゲッティ。

食べやすいグラタン。


「余裕なんてない。ただ僕の前では素直でいてほしいだけ」

「……やっぱりずるいわ」

「でも、君はずるいくらいじゃ僕のこと嫌いになったりしないだろ」

「それこそ、わかってるくせに」



「次は二人で大皿のスパゲッティ頼むか」

「イカスミはやめてね」

「その時は、君の好きな味でいいさ」



ドアベルが澄んだ音をたてた。

並んで出ていく男女を見送りながら、店長は一人微笑む。


「素直なカップル様、またお越しください」

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