02。ホットケーキとフレンチトースト。
机を挟んで向かい合うのは、ポニーテールとショートヘアの二人。
バターと蜂蜜の香りが優しく混ざる。
二枚重ねのホットケーキの上をバターが滑っていく。
「まさかアンタが弁護士になってるとか、びっくりなんだけど」
「そっちこそ教師とか驚いたわよ。昔からすごい頑固だった貴女が、今は学校の先生だなんて」
「む、聞き捨てならない。アンタもでしょ」
「確かに否定はしないわ」
「なんか中学の頃が懐かしいなぁ」
「よくじゃんけんしたわね」
「ホットケーキとフレンチトースト?」
お互いの前に置かれた二つの皿。
似ているようで似ていない甘いもの。
「貧しかった中学時代は、割り勘が当たり前だったものね」
「二人で半分ずつだった」
「あと蜂蜜とメイプルシロップも」
「それでよく揉めた、揉めた」
「貴女がホットケーキを頼んだの見て、今日ちょっと嬉しかったのよ」
「アタシも。フレンチトースト頼むの聞いて、変わってないなーって懐かしかった」
「好きなものを大人になっても、好きでいられるって素敵なことだわ」
メイプルシロップの小瓶をつまんで、フレンチトーストに円を描くようにかける。
その小瓶を机に戻せば、蜂蜜の小瓶とぶつかってカツンと音をたてた。
「アタシ、実はフレンチトーストもメイプルシロップも嫌いじゃなかったんだよ」
「実は私も。ホットケーキと蜂蜜、貴女のおかげで好きになったんだから」
「でも、じゃんけんで負けるのはイヤでさ」
「そうそう、負けるのは癪なのよね」
「勝ち誇った顔されると、悔しくてムスッとしてたけどホントは意地張ってただけ」
「美味しいのに不機嫌そうにするのって、案外難しいのよ」
「ねぇ、半分こずつにしない?」
ナイフで二つにされたホットケーキ。
フレンチトーストにもナイフを入れる。
「いい提案ね。そうしましょ」
「自分だけだと、どうしても一番好きなほうにしちゃうからさ」
「私も久しぶりにホットケーキ食べたいわ」
「二人でひとつが、今は二人でふたつかぁ」
「なんかふたつだと、半分ずつも贅沢ね」
「また二人で来ようか」
「えぇ」
ドアベルが澄んだ音をたてた。
並んで出ていく女性を見送りながら、店長は一人微笑む。
「仲のよい旧友様、またお越しください」