大きくなっても一緒だよ
今回はホラー系をしてみましたが、ホラー要素は少なめです。
朝、目を覚ましてニュースをつける。そうすると最近多発している、連続誘拐事件のニュースが流れていた。
この誘拐は被害者全員共通点がなく、男女関係なく誘拐されている。一部の間では神隠しとか言われているけどくだらない。
「君もそう思うよね?くーちゃん。」
勿論くーちゃんから返事はない。くーちゃんは私が産まれた時からずっと一緒にいる黒猫のぬいぐるみだから。
私は羽倉雪。しがないOLだ。そこの君、いい歳した女性がぬいぐるみに話しかけるなとか思うな。確かに親とかからは飽きられてるがくーちゃんは私の大切な友達で小さい頃に「ずっと一緒だよ!」と約束してたからその約束を守っているだけだ。
おっと、そろそろ仕事に行く準備をしないといけないな。そう思って全身鏡で身嗜みを整えていると鏡の中から無数の黒い手がこちらに向かって伸ばしてきた。
「ひっ!何よこれ!?」
私は無数の黒い手から逃れようとしたが、体や顔に手が巻き付き鏡の中へ連れ去ろうとしてた。鏡の中へ連れ去られる寸前。
「にゃーん。」
猫の鳴き声が聴こえた気もするが私はそこで意識を失った。
「おねえちゃん、おねえちゃん大丈夫?」
ふと目を覚ますと一人の少年が私の事を心配そうに見ていた。年齢は四歳か五歳くらいだろうか。何処かで見たことあるような顔だが記憶にないからきっと気のせいだろう。
「おねえちゃん?ぐあいわるいの?」
「あ、いや、すまない。少しだけ考え事をしていたんだ。僕、名前は何て言うの?」
「ぼくは、く…じゃなくて!あきらだよ!」
「そうか、よろしくな、あきら君。」
「うん!よろしくね!おねえちゃん!」
一瞬「く」と言いかけてなかったか?まぁ、いい。それよりも問題は何故この様な場所にいるかだ。机と椅子が小さいところから察するに木造建築の小学校か?今時木造建築の学校とは珍しい。
「あきら君。あきら君はここが何処だかわかるかい?」
「ううん。わかんない。」
「そうか。」
どうやら手がかりはないようだ。さて、どうしたものか。そう考えていると左手がぎゅっと握りしめられる。
「おい、一体どうし…」
「おねえちゃん、しー。あれ見て。」
小声で注意され指を指された方を見ると巨大な黒い影が窓の外から見える。本能的にあれに捕まったら危ないと悟った。
私とあきら君はしゃがみこみ音を立てず、あれに見つからないように息を潜めた。
(がったんがったん、バンバンバン!)
黒い影の持ち主があちこちを叩きながら歩き回っているらしい。このままここで身を潜めていても何の解決にもならない。
私はあきら君を抱き上げ影の持ち主の進行方向とは逆側のドアから出ようとドアを開けようとしたその瞬間。
(ガラガラガラ!)
私が開けようとしたドアとは反対側のドアから音がした。私は確認することもなく一気にドアを開けそのまま走り出した。
「おねえちゃん!あのかたまりこわいよ!」
「ひっ!」
見るんじゃなかった。あきら君が泣きそうな声で言うからどんなものか見たら全身から手が生え目はないが、大きな口があるそんな物体だった。
物体は私達を捕まえようとこちらへ向かってきていた。
「しっかり掴まっていて!あきら君!」
私はあきら君にそういうと更に走るスピードをあげた。正直子ども一人抱き抱えながら走るのは力がいるが、私があきら君を降ろして手を繋いで走った所であきら君は足がもつれ転ぶに違いないと思ったからだ。
「待って…置いていかないで…助けて…許さない…」
物体の口から何人もの人の声が混ざったような声がして更に不気味に感じたが私はひたすらあきら君を抱き抱えながら走っていた。
「おねえちゃん!ぼくおもいでしょう!?ぼくのことおろしていいよ!」
「馬鹿を言うな!君はまだ子どもなんだ!大人に甘えていろ!」
どれだけ走っても廊下が続いている。前方には壁が見える。もう捕まるのか。こんな意味がわからない場所でこんな幼い子どもを守れずに…
「おねえちゃん!あそこ!あそこにかいだんがあるよ!」
「でかした!あきら君!」
私はあきら君が見つけた階段へ向かいそのまま降りていった。
(ドンガラガッシャーン!)
どうやらあの物体は曲がりきれずにそのまま何処かにぶつかったようだ。
そのまま下の階に降りるとよくある掲示板や貼り紙があったが殆んど掠れていて字が読めない。唯一読めたのが小学校という文字だけ。やっぱりここは小学校だったのか。
「おねえちゃん、いき、はーはーしてるよ?どこかでおやすみしようよ。」
「ああ、そうしたいところだが、またあの物体が来るかも知れないからな。休む時間もない。」
「ならぼくをおろして?てをつないであるけば…」
「駄目だ!それだけは絶対に駄目だ!」
思わず大声が出てしまった。私は何をこんなに怖がっているのだろうか。ついさっき出会ったばかりのこの子を今、この腕から離すともう二度と会えないという恐怖が込み上げてくる。
「大声を出してすまない。出口を探そう。」
私はあきら君を抱き締めたまま歩き始めた。
「おねえちゃん、おねえちゃんはなんでずっとぼくと…ううん。なんでもない」
あきら君はそう言うと私の肩に顔を埋めた。
本当におかしな子だ。
暫く歩いていると全文読める貼り紙があった。
「出口は鏡にある?普通ドアじゃないのか。いや、実際にここに来る寸前に鏡の中から出てきた手に引っ張られて鏡の中に入ったから入口と出口は同じということか?」
私がそう考えていると
「おねえちゃん、あそこ…」
あきら君が震えながら指を指したそこには様々な人形があった。その殆んどが汚れていたり何処か焼けた痕があったりと酷い有り様だった。
「何でこんなところに人形がてか、酷い汚れてるな。」
私はその人形のうちの一つに手を伸ばそうとすると…
「おねえちゃん!それにさわっちゃだめ!」
あきら君がそういった瞬間
「「あと、もう少しだったのに」」
ぬいぐるみ達がカタカタと笑いながら言った。
「黒い不気味な物体の次は人形かよ!」
私はまた走り出した。その間も人形は
「「仲間になろう?君もすぐ捨てられる」」
とかよく訳がわからないことを言っていたが構わず走り続けた。あきら君が震えて私の服にすがったのにもわからないまま無我夢中で走り続けた。
「あった!鏡!」
本来なら玄関があるであろう場所に大きな鏡が置いてあった。
「あきら君、これでここからおさらばできるぞ。」
「ねぇ、おねえちゃん。おねえちゃんはくろいねこのぬいぐるみをもってるよね?いつかそのぬいぐるみのことすてる?」
ふと、あきら君がそんなことを言ってきた。私はあきら君にそんな話をした覚えは一切ない。それなのに何故知っているのだろうか。本来ならここで不気味だと思う筈なのに私は更に強く、でも痛くないように抱き締めた。
「捨てないさ、小さい頃ずっと一緒にと約束した人形だからな。これからもずっと一緒だ、くーちゃん。」
「えっ!?」
あきら君、いや、くーちゃんは驚いて顔をあげた。あの言葉を問いかけられた瞬間あきら君に感じてた懐かしさの正体に気づいていた。あれは子どもの頃の私の姿だと。子どもの頃の私は言動や服装から周りから男だと誤解されることが多かった。だからくーちゃんがその頃の私の姿をしていて男の子として振る舞っていても違和感はなかったんだ。いや、何故くーちゃんが人間の姿になってるかは謎だが、恐らくこの場所のせいだろう。黒い手に巻き込まれたくーちゃんがこの不思議な場所で人形ではなく人間の姿をしていてもおかしくはない。
「さぁ、帰ろう。くーちゃん。」
「うん!」
私達は鏡に足を踏み入れた前を向いていたくーちゃんが人形達にざまぁみろと口パクしていたのにも気づかないで。
(ジリリリリリ!)
アラームがなってる?そうだ!仕事にいかなくては!でもどうして私は気を失っていたのだろうか。まぁ、いい。そんなことより仕事だ。
「行ってきます。くーちゃん。」
私は玄関を出てドアを閉めた。
(バタン!)
「今回のペアは素晴らしかったですね。前回の男性は自分一人だけ逃げようとしたのに対し彼女はその様な行動を示さなかった。あの問いかけで不気味がる人も何名もいましたがそれもしなかった。ああ!何て素晴らしい!さて、今回のショーお楽しみ頂けましたでしょうか?もしかすると次はあなたがゲストになるかもしれませんよ。」
物って大切にすると魂が宿ると言われていますよね。付喪神、もしかしたらあなたの身の回りにあるものにも付喪神が宿っているかもしれませんよ。




