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華栖国の占い女官~前世はいかさま占い師~  作者: マチバリ


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18


「それで、小怜が占い師というのは本当なの?」

 長椅子に腰掛け、膝に乗せた桂々を撫でながら麗妃が小首を傾げる。

 その傍に立つ駿仁の視線は、明らかに疑いを孕んでおり、欠片も私を信じていないのがわかる。

「本当です。小怜の占いはとてもよく当たると評判で……厨房女官の間で有名は話でございます」

 必死に私を守ろうとするかのように緑汐がまっさき声を上げた。

 それを聞きた麗妃は少し考え込むと、近くに控えていた女官を手招きして呼び寄せる。

「厨房で女官たちに話を聞いてきてちょうだい」

 命令された女官は頷くと、さっと宮から出て行いった。

「さて、小怜。確認するけれど、先ほどの話は本当なの? あの日、私の身によくない出来事があると言う暗示があったと」

 美しい顔がじっと私を探るように見つめてくる。

「本当でございます。正確には、あの日に何が起きるかを私は占ったのです。すると、後宮の花に危険が迫っているという暗示が出ました。私は、麗妃様と瑠妃様どちらかに何ごとかが起きるのではないかと考えたのです」

「それで、私を探したの? 瑠妃に何か起きる可能性もあったのに?」

「私の占いでは、花に水難の相が出ておりました。麗妃様が裏庭に向かわれたことにきがついた私は、咄嗟に池を連想したのです。あわてて池に向かってみれば、桂々様が松の枝で泣いておられました。もし、あの光景を麗妃様が見てしまえば、助けに行ってしまうのではないかと……」

 深く腰を折りながら言葉を紡げば、どこか面白がるような麗妃の声が聞こえた。

「なるほど。つじつまは合いますね」

「このような世迷い言を信じるのですか」

「信じるも何も、小怜が言うようにもし私が松の枝で鳴く桂々を見つけていたら、人を呼ぶのを待てず助けに行っていたかもしれません」

 麗妃は桂々の頭を指先で優しく撫でながら笑みを浮かべる。

「この子は、私にとって我が子のような存在です。だからこそ、誰かがこの子を囮にしたのでしょう」

「麗妃様……」

「小怜。犯人についてはなにもわかっていないの?」

 私は首を横に振る。

「明確には。ですが、誰かの悪意によるもので間違いないと感じました」

「そう……」

 寂しげに目を伏せる麗妃の表情には、隠しきれない憂いが滲んでいた。

「貴様、麗妃様の優しさにつけいり謀る気だろう。占いなどという曖昧なもの持ち出せば、俺がだませると思ったのか」

「騙すも何も、私は正直に打ち明けたまです」

「莫将軍は少し落ち着いてください。小怜、私はあなたを信じたいと思うけれど将軍が言うように、あまりにも唐突な話だわ。どうしてあの日、正直に言ってくれなかったの?」

「突然占いの話など口にしたら頭のおかしい女官として切り捨てられそうだったので」

「ああ……」

 苦笑いを浮かべ、麗妃は駿仁に視線を向けた。

「今になって打ち明けたのはどうして?」

「莫将軍があまりにもしつこ……私を疑うので流石に疲れました。それに、今の麗妃様なら私を信じて下さるかと」

「そうねぇ。小怜は真面目だしよく気が付くよい女官だわ。あなたが私を騙そうとしているとは到底思えない」

「麗妃様!」

「ねぇ、莫将軍。私と勝負をしませんか?」

「は?」

 唐突な麗妃の言葉に、駿仁が動き止める。

「勝負、とは……急に何を」

「ふふ。ねえ小怜、貴方が本当に占い師だというのなら、一つ私のために占いをしてくれないかしら」

「占い、でございますか?」

 にっこりと微笑む麗妃に、私は思わず喉をならす。

(これは、試されてるわね)

 駿仁ほど私を疑ってもいないが、信じてもいないのだろう。

「実は、私の髪飾りがひとつ見当たらないの。探してもらえないかしら」

「失せ物探し、でございますね」

「ええ」

 感情の読めない麗妃の笑みに、私もまた笑みを浮かべる。

「承知しました。麗妃様の髪飾りを探し当ててみせましょう」

「頼もしいわ。さて、莫将軍」

 麗妃が再び駿仁に顔を向けた。

「勝負の内容は簡単ですわ。小怜が髪飾りを見つけ出したら私の勝ち。小怜の言葉を信じて、これ以後は患わせないとお約束してくださいませ。もし、見つけられなければ私の負け。小怜の処分は将軍にお任せいたします」

「なっ……」

「小怜もそれでいいわね」

 いいもなにも、すでに土俵に上げられてしまっている。ここで否と言えば、駿仁に切り捨てられても文句は言えない。なにせ、今の私は大した後ろ盾もない下っ端女官だ。

(麗妃様って案外、怖いお人なのかも)

 私に向ける微笑みから、その感情を読み取ることはできない。だが、その意図は伝わってくる。

(信じて欲しければ、納得させろってことね)

「承知しました。必ずや、ご期待にお応えいたします」

 深々と頭を下げれば、麗妃は満足げに頷いた。


今年もお世話になりました。三が日中は毎日更新します。

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