え?俺の魔法の効果、弱すぎない?〜転生したら『ゴミ拾い』スキルだった件〜
「佐藤ケンジ、23歳。貴方の異世界転生を許可します」
トラックに轢かれて死んだ俺の前に現れたのは、やたらと美しい女神様だった。
「転生者には特別なスキルを一つ授けます。さあ、このルーレットを回してください」
画面に映し出されたのは、煌びやかなスキルの数々。
『聖剣召喚』『無限魔力』『時間停止』『即死魔法』『全属性適正』――
俺の人生、ずっとクソだった。ブラック企業で働き、恋人もできず、趣味はなろう小説を読むこと。
頼む…今度こそ、最強のスキルを…!
カラカラカラ…カチッ。
『清掃Lv.1』
「…え?」
「おめでとうございます!半径10メートルのゴミや汚れを自動回収するスキルです♪」
女神様の笑顔が眩しい。
「いや、待って。これ戦闘力ゼロじゃん!?他の転生者は!?」
「今日の他の転生者様は…田中様が『聖剣召喚』、鈴木様が『無限魔力』、高橋様が『時間停止』ですね!」
俺だけハズレ引いてる!
「ちょ、待って!回し直し!」
「ダメです♪では、頑張ってくださいね!」
女神様の指が光る。
「ファッ…!?なんやて‼︎」
気付けば、俺は草原の真ん中に立っていた。
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異世界。緑の大地、青い空、そして遠くに見える巨大な城壁。
「マジで異世界転生しちゃった…」
ステータスを確認する。この世界では、思い浮かべるだけでステータスが見える仕組みらしい。
```
佐藤ケンジ Lv.1
HP: 50/50
MP: 30/30
スキル: 清掃Lv.1
```
…弱い。弱すぎる。
他のなろう主人公なら、ここで「実は最強でした」展開が待ってるはず。
試しにスキルを発動してみる。
「清掃!」
半径10メートルの草むらから、小枝、落ち葉、虫の死骸がシュッと俺の手元に集まってきた。
「…うわ、キモ」
これがゴミ袋に入れば便利だが、そのまま手に集まってくる。
「クソスキルすぎる…」
ため息をつきながら、俺は近くの街を目指して歩き始めた。
街の名前は「グランベル」。
中世ヨーロッパ風の建物が立ち並び、人々が行き交う。獣人族、エルフ、ドワーフ…まさに異世界。
そして俺が最初に向かったのは、冒険者ギルド。
「転生者か。最近多いんだよな」
受付のお姉さんは、明らかに面倒くさそうな顔をしていた。
「スキルは?」
「清掃です」
「…清掃?」
「はい」
お姉さんは数秒固まった後、ため息をついた。
「わかった。とりあえずGランク登録ね。最低ランク」
冒険者ランクは、G、F、E、D、C、B、A、S、SSの九段階。
俺は最低ランクからのスタート。
「Gランクができる依頼は…これね」
渡された依頼書。
『街の清掃:報酬銅貨3枚』
『下水掃除:報酬銅貨5枚』
『ゴミ捨て場の整理:報酬銅貨4枚』
…全部掃除じゃねえか。
「他には?」
「Gランクはこれだけ。文句あるなら帰んな」
俺は黙って依頼書を受け取った。
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街の清掃現場。
ゴミだらけの路地裏で、俺は一人スキルを発動する。
「清掃」
シュルシュルと、半径10メートルのゴミが俺の元へ集まる。空き瓶、腐った野菜、動物の糞…。
「うぇ…臭い…」
それを近くのゴミ捨て場に運ぶ。
往復すること20回。
3時間後、やっと路地裏が綺麗になった。
「はい、報酬」
受付のお姉さんが銅貨3枚を投げてよこす。
銅貨3枚=約300円。
「…時給100円か」
ブラック企業より酷い。
「あれ?なろう小説の主人公って、もっと楽に稼いでなかったっけ…」
───────
それから一週間。
俺は毎日、清掃依頼をこなした。
街の掃除、下水掃除、ゴミ捨て場整理、貴族の屋敷の掃除…。
「よお、掃除屋」
ギルドの冒険者たちは、俺を見て笑う。
「Gランクから上がれねえのかよ」
「清掃スキルとか、マジでハズレだよな」
「俺なんてBランクだぜ。昨日ドラゴン倒したわ」
悔しい。
だが、俺にできることは掃除だけ。
黙々と、依頼をこなす。
そんなある日――
《レベルアップ!清掃Lv.1→清掃Lv.2》
「お…!?」
スキルがレベルアップした。
清掃範囲が半径20メートルに拡大。さらに、回収速度も2倍になった。
「これなら…もっと効率良くなる」
希望が見えた。
それから俺は、さらに依頼をこなしまくった。
一日5件、10件、15件…。
他の冒険者が昼寝してる間も、酒を飲んでる間も、俺は掃除をし続けた。
そして――
二週間後。
《レベルアップ!清掃Lv.5→分解Lv.1》
「分解…?」
スキル名が変わった。
試しに、近くの木箱に向けて発動してみる。
「分解」
パキン。
木箱が一瞬で分解され、素材になった。
《木材×5、鉄釘×8を獲得しました》
「…マジか」
これは、ただの掃除スキルじゃない。
物質を素材レベルまで分解するスキルだ。
─────
「おい、佐藤」
ギルドの受付嬢が、珍しく俺に声をかけてきた。
「Bランク冒険者のガルドが、お前に依頼したいってさ」
「俺に?」
案内された先には、傷だらけの大男が立っていた。
「お前、分解スキル持ってるんだって?」
「…ああ」
「これ、処理できるか?」
ドサッ。
床に置かれたのは、巨大な魔物の死骸。
「アイアンベアの死骸だ。普通、解体に三日かかる。魔物は死後すぐに腐るから、素材の価値が下がるんだ」
「それを?」
「一瞬で素材化できるなら、金貨10枚出してやるよ」
金貨10枚=10万円。
俺の二週間分の稼ぎだ。
「くっ…やる」
俺は死骸に手を触れ、スキルを発動した。
「分解」
ブワッ。
魔物の死骸が光に包まれ、次々と素材に変わっていく。
《アイアンベアの毛皮×1、爪×20、牙×4、魔石×1を獲得しました》
所要時間、10秒。
「…マジかよ」
ガルドが目を見開く。
「完璧じゃねえか…しかも魔石まで無傷で取り出してる…」
「これでいいか?」
「ああ…いや、最高だ。金貨10枚、確かに」
ジャラリと、金貨が手渡される。
「なあ、また依頼していいか?俺の知り合いにも紹介したい」
「…ああ」
その日から、俺の元には冒険者が殺到した。
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「オークの死骸、頼む!」
「ゴブリン50体分、まとめて処理してくれ!」
「俺のは古竜の死骸だ!報酬は金貨100枚出す!」
毎日、死骸が運び込まれる。
俺はそれを次々と分解していく。
《分解完了――竜鱗×320、竜牙×48、竜血×12リットル、竜核×1を獲得》
「竜核まで無傷…!?ありえねえ…」
普通、古竜の死骸から竜核を取り出すには、熟練の解体師が一週間かけて慎重に作業する。
少しでもミスれば、竜核は砕け散る。
だが俺のスキルは、完璧に素材化する。
一ヶ月後。
俺の所持金は、金貨500枚を超えていた。
「佐藤、ランクアップ審査受けないか?」
受付嬢が、今度は笑顔で話しかけてくる。
「お前の実績なら、Cランクまで一気に上がれるよ」
だが俺は首を振った。
「いい。Gランクのままで」
「なんで?」
「目立ちたくない」
実際、俺のスキルはヤバすぎる。
分解できるのは、死骸だけじゃない。
武器、防具、建物、魔法陣…あらゆるものを素材に戻せる。
もしこれが王国に知られたら、確実に利用される。
「そう…まあ、お前の自由だけどさ」
──────
ある日、ギルドに一人の貴族が訪れた。
「分解スキルを持つ冒険者はいるか?」
受付嬢が俺を指差す。
「彼です」
貴族――ヴェルナー伯爵という男は、俺をじっと見た。
「…Gランク?」
「はい」
「まあいい。報酬は金貨1000枚。ついてこい」
金貨1000枚=100万円。
俺は黙ってついていった。
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馬車で一時間。
辿り着いたのは、巨大な遺跡だった。
「ここは、千年前の古代魔導文明の遺跡だ」
「魔導文明?」
「ああ。この世界には、千年前に栄えた超高度な魔法文明があった。だが、ある日突然滅んだ」
遺跡の入口には、立入禁止の看板。
「中には莫大な魔導技術が眠っている。だが…」
「だが?」
「内部が『魔力汚染』されていて、誰も近づけない」
魔力汚染。
この世界では、魔力が一箇所に溜まりすぎると、毒のような性質を持つようになる。
「触れれば即死。どんな浄化魔法も効かない。だが…分解スキルなら、もしかすると」
「…やってみる」
俺は遺跡の中に入った。
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内部は、紫色の霧で満たされていた。
《警告:超高濃度魔力汚染を検知。HP継続ダメージ》
「うぐ…!」
体が痛い。
だが、ここで引き返すわけにはいかない。
「分解!」
スキルを発動。
すると――
《超高濃度魔力汚染を分解中…1%…5%…10%…》
紫の霧が、ゆっくりと晴れていく。
「効いてる…!」
10分後。
《分解完了――魔石×9999、オリハルコン×1、失われた古代魔法書×23を獲得しました》
遺跡の汚染が、完全に消えた。
「信じられん…千年の汚染が…消えた…!」
伯爵が震える声で呟く。
そして、遺跡の最深部。
そこには、一冊の日記が置かれていた。
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『古代魔導師ゼノンの記録』
『我々は、魔力を極限まで使用することで、世界を発展させた』
『だが、ある日気付いた』
『魔力は、使えば使うほど世界に”汚染”として蓄積される』
『そして、その汚染が一定量を超えると――』
『“魔王”が誕生する』
「…魔王?」
『魔王とは、世界に蓄積した魔力汚染の結晶である』
『我々の文明は、自らが生み出した魔王によって滅ぼされた』
『もし、この記録を読んでいる者がいるなら――』
『魔王を倒すには、汚染を”浄化”するのではなく、“分解”しなければならない』
日記はそこで終わっていた。
「…マジかよ」
つまり、俺のスキルは――
魔王を倒せる唯一のスキルってことか‼︎
帰り道、伯爵が言った。
「佐藤殿。貴方のスキルは、この世界を救う鍵、貴方は大英雄となるべき人かもしれない」
「大げさだろ」
「いや、本気だ。実は今、魔王軍の動きが活発化している。このままでは、人類は滅ぶ」
「…」
「力を貸してくれ。報酬は、いくらでも出す」
だが俺は首を振った。
「俺は、ただの掃除屋だ。英雄じゃない」
「しかし…!」
「でも」
俺は遺跡を振り返った。
「もし、世界が本当にヤバくなったら…その時は考える」
「…わかった」
伯爵は、それ以上何も言わなかった。
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それから三ヶ月。
俺は相変わらず、分解屋として依頼をこなしていた。
だが、街の雰囲気が変わってきた。
「魔王軍が、北の国を滅ぼしたらしい」
「勇者様でも勝てなかったって…」
「このままじゃ、人類が…」
ある日、ギルドに一人の男が現れた。
「佐藤ケンジはいるか!」
それは、Sランク勇者――アレクだった。
「お前が、分解スキル持ちか」
「…ああ」
「頼む。力を貸してくれ。魔王を倒すには、お前の力が必要だ」
「断る」
「なぜだ!?世界が滅ぶんだぞ!?」
「俺は戦えない。足手まといになる」
「…」
アレクは悔しそうに歯を食いしばった。
だが、その時――
ドゴォン!
街が揺れた。
「な、何だ!?」
外に飛び出すと、空が真っ黒に染まっていた。
「魔王軍…!ここまで来たのか…!」
巨大な魔物の群れが、街を襲う。
人々が逃げ惑い、悲鳴が響く。
「クソ…!」
アレクが剣を抜く。
だが、魔物の数は数千。
一人では無理だ。
その時――
俺の目の前で、子供が倒れた。
「た、助けて…」
背後には、巨大なオーガ。
「…チッ」
俺は走り出した。
「分解!」
オーガの体が、一瞬で粉々に砕け散る。
《分解完了――オーガの魔石×1を獲得》
「…やるしかねえか」
俺はアレクを振り返った。
「行くぞ。魔王城へ」
「…ああ!」
## 第六章:魔王討伐
魔王城。
それは、世界の中心にそびえる、巨大な黒い塔だった。
「ここが…」
俺とアレク、そしてSランク冒険者パーティ『蒼天の剣』の5人。
計7人で、魔王城に乗り込んだ。
「行くぞ!」
内部には、無数の魔物。
「『聖剣召喚』!」
アレクの聖剣が、魔物を次々と斬り裂く。
「『大炎上魔法・歯火剣』!」
魔法使いの攻撃が、魔物の群れを焼き尽くす。
だが――
「数が多すぎる…!」
「このままじゃ、キリがない…!」
その時、俺が前に出た。
「任せろ」
「佐藤!?何を…!」
「分解」
ブワァッ!
半径100メートルの魔物が、全て消滅した。
《分解完了――魔石×356を獲得》
「な…!?一瞬で…!?」
「スキルレベルが上がったんだ。行くぞ」
-----
最上階。
そこには、魔王がいた。
「…人間よ」
漆黒の鎧を纏った、巨大な存在。
「我はドーアクーラ。世界の汚染が生み出した、終焉の化身」
「…」
「貴様らでは、我を倒せぬ。何千年も、勇者が挑み、全て敗れた」
アレクが剣を構える。
「それでも、俺たちは戦う!」
「愚かな」
魔王の手から、黒い光が放たれる。
「うぐぁ…!」
アレクたちが吹き飛ばされる。
「強い…!」
「くそ…これが魔王…!」
全員がボロボロだ。
だが、魔王は無傷。
「終わりだ」
魔王の手に、巨大な魔力の塊が生まれる。
このままでは、全員死ぬ。
「…俺が行く」
「佐藤!?ダメだ!お前じゃ…!」
「大丈夫だ」
俺は魔王の前に立った。
「…貴様、何をする気だ」
「お前を、分解する」
「分解…?ふざけるな。我は汚染の結晶。分解などできぬ」
「試してみないとわからない」
俺は、スキルを発動した。
「分解」
その瞬間――
魔王の体が、光に包まれた。
「な…何だ…!?我が体が…消えていく…!?」
《対象:魔力汚染の集合体を分解中…10%…30%…50%…》
「バカな…!汚染は浄化できぬはず…!分解など…!」
「俺のスキルは、掃除だ。汚れを取り除く」
「お前が…世界を汚してるなら…」
「俺が、綺麗にする」
《分解完了――世界樹の種×1、創世の魔石×1、平和な世界×1を獲得しました》
ドサリ。
魔王の体が崩れ落ちる。
「…まさか、こんな形で…敗れるとは…」
「人間よ…世界を、頼んだぞ…」
魔王は、そう言い残して消えた。
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世界が、光に包まれる。
千年間蓄積された魔力汚染が、全て消えていく。
「終わった…のか?」
「ああ…魔王は、もういない」
俺たちは、世界を救った。
───────
## エピローグ:掃除屋の日常
それから一年。
俺は『世界を救った英雄』として、各国から招待を受けた。
だが、全て断った。
「英雄、佐藤様!パーティーに是非…!」
「すみません、忙しいんで」
俺は今も、ギルドで清掃依頼を受けている。
「街の掃除、銅貨3枚ですね」
「え…英雄なのに、料金変わらないんですか!?」
「だって、俺がやりたくてやってるだけだし」
受付嬢が呆れた顔をする。
「変わってるよ、あんた」
「そうか?」
俺は街に出て、スキルを発動する。
「清掃」
シュルシュルと、ゴミが集まってくる。
子供たちが手を振る。
「掃除のお兄ちゃん、ありがとう!」
「おう」
俺の異世界生活は、今日も平和だ。
弱小スキル『清掃』。
だけど、このスキルで――
俺は世界を救った。
汚れを祓うことが、平和を守ること。
それが俺の、英雄としての戦い方だ。
最初は最弱だと思われていた『清掃』スキル。
でもレベルアップで『分解』に進化し、最終的には魔王すら倒せる力に。
実は、魔王=世界の汚染という設定で、掃除スキルこそが最適解だったというオチでした。
「一見弱いけど実は最強」系の王道展開、楽しんでいただけましたか?
続編希望の方は、感想お待ちしてます!




