久遠家の事情と仮定
真白は「少し電話してきますね」と言ってスマホを片手に悠馬をその場に残して部屋を出ると先に出ていた父、英明を探した。
幸い出て直ぐに英明は見つかり、丁度電話が終わったタイミングだったので近づく。
英明の企みを遂行するには、言い方的に自分も動く必要があると思ったからだ。
「お父さん。この後私はどうすれば良い?」
そう言って話しかけると少し悩んだ後、英明は会長室の方をチラリと見た。
「その前にだ。彼とは殆ど初対面だろうけど、仲良くやっていけるか?」
そう言って真っすぐ真白を見る英明。
英明の質問を正確に読み取った真白は「分からないけど、今のところは」と答える。
「分かった。なら彼には今後未来視の力は行使させない様に注意しなさい」
そう言って優しく言う英明にもしかしたらと自分が思っていた仮説に父も気付いたのかと思った。
「あぁ、彼にとってもショックになるし、今は言わないで良い。それよりも、彼は商売人だな」
「商売人って?」
不思議そうに真白が問いかけると英明は息を軽くはきながら彼の先ほどの説明に対しての回答をした。
「彼も言っていただろう。´´あのダンジョンは崩壊させない方が良いのが自分としての考えです´´と。あれは、ダンジョンから出る資源について正しく理解していたから出来たのだろうが、それとは別に先の事を考えてたって事だ」
「さきの事って、資源を巡る今の現状が問題なのに、どうして先の事を想像したって結論になるの?私なら、面倒な事になる前にコアモンスターを倒してダンジョンなんてさっさと封鎖しちゃうけど」
「それが、一つだけならな。もし今後も出てくるとしたら?そして、その出てきたダンジョンのモンスターが全員デカい図体をしたモンスターしか出てこなかったとしたらどうだ?」
優しく諭すような口調で真白に疑問を投げかけると、今度こそ彼の真意を理解した様子でハッとしながら真白は英明を見る。
「彼がもう一つ知っていたのは覚醒者が今後大量に現れると言う事。なら、彼の様に最初から戦える者でも´´練習場´´は必要だ。それに、彼自身は先にダンジョンに入ってある程度の実力を付けた。だから、今後、仮に例えば真白が覚醒者になり、力を身に着ける必要が出たとしても彼が居れば安全に力を磨ける環境があのダンジョンになる。他の者も同様に、覚醒していない者でも倒せる存在がいて、尚且つ彼がそこに居れば強敵が出た際にも安全率を確保出来るのは覚醒者にとっても、´´企業´´にとっても利点だ」
「国はしらんけどな」そう付け足して悠馬の意図を正しく指摘する。
命の危険が伴うダンジョンではあるが、職業としての最低限のリスクにまで抑えられる土壌が出来れば新たな産業として機能出来る。
どんな仕事でもリスクは伴うが、そのリスクを極限まで減らす。
「なら、なんでそれを説明しないのかしら。まさかそれも?」
考え込む様な動作で独り言の様に呟いた真白の発言を英明も聞き取り頷く。
「多分な。´´彼の先の発言に嘘´´は無かったように感じる。だから俺も気付いたし、今真白に注意した。」
父はあの短い時間で悠馬さんの状態を理解したのだ。
流石、魔王と呼ばれるだけはあると感心した様子の真白を見ながら改めて真剣な様子で英明は真白に指示を出す。
「話を戻すが、先ほど真白の働いている局の明日の朝の報道番組を一つ買い取った。他のスポンサーも居るには居るが俺の知り合いで事情も今後の事も賛成している企業だ。真白にはそれに出てもらう。台本もこちらで準備した上で真白の護衛も創玄が手配した。俺は番組終了後に会見を開く」
そう言って真白の頭を撫でながら英明はニコリと笑う。
「世間からは不仲だと言われているが、元々真白の夢を手助けしないでくれと真白から言われて、スポンサー契約も出来なかったが、今回は良いよな?」
「仕方ないわ。こればっかりは.....でも今回だけだよ」
恥ずかしそうな表情を浮かべる真白に笑いかけると英明は会長室に目を向ける。
「俺もこの後やる事が多い。創玄には今後の為に必要な事は伝えてある。真白は創玄と彼の所に行って一先ず彼の持っている魔石の買取とポーションとやらの買取、後明日の報道前に一度配信をしてもらう様にお願いしてきてくれ。後、その交渉が終わったら真白が知っている中で信用出来る番組プロデューサーに俺が話をしたいと伝える事。時間が無いからな、明日中に終わらせるぞ」
いつの間にか近くに居た創玄さんがお辞儀をする。
本当にこの人は気配を消すのが上手いと思う。
「わかった。頑張るね」
そう言って、真白は創玄と共に会長室に戻る。




