初配信と警告1
翌日、いつも通りの朝を迎えて早速行動に移し始める。
まだ、警察は自分の事を特定出来ていない様で、テレビやネットでは相変わらず自分の事を取り上げるニュースばかりだった。
一通りニュースを確認した後は、机に向かって今日の予定と一番重要な部分についての調整に入る。
配信をする。
昨日、あれから色々考えて一番今の状況の打開に有効なのは配信しか無いと結論した。
「逃げるにしても、その内見つかる。見つからなかったとしても、血の日曜日が始まってしまう。」
ダンジョンからゴブリンが溢れる一番の原因はダンジョンを放置するからだ。
幸い、自分が昨日突入して間引きを行って、ゴブリン将軍も倒したのでダンジョン内の瘴気は薄まっているとは思う。
「ただ、このまま放置されるとゲートから魔物が溢れるのが遅れるだけだし、何よりゲートから出てきたゴブリンは強化されている」
であるならば、一番の理想は国がゲートを封鎖するのを止めて、覚醒者で希望する人をダンジョン内に入れて間引きをし続ける事だ。
「それに、あの始まりのダンジョンは他の世界と違ってかなり初心者向けだ。現に無職だった前の俺でも通常ゴブリンは倒せていた」
前の人生の時は血の日曜日の後に[剣聖]の職業を持っていた覚醒者がダンジョンボスを倒した事でゲートが封鎖されて、以降初心者でも安全に狩りが出来るダンジョンの出現と狩りのマニュアル化に時間が掛かっていた。
核爆弾や銃火器と同じで安全に使える状態を保てばダンジョンは有能な資源の宝庫であると言うのが共通認識だったが、それを早める必要がある。
問題は覚醒する方法だ。
「覚醒するには死の危険とダンジョンの瘴気を浴びる事だったけど、これはどうするかね」
無差別に覚醒を促すなら、血の日曜日は起きるのを放置すれば勝手に覚醒するが、その場合多数の死者と今後の国の方針が望まない方向に進む。
ここまでの思考をノートにペンを走らせて纏めていく。
「そもそも前の時も結局ダンジョンの瘴気が関係しているのは確定したけど、死の危険についてはかなりあいまいだったよな。それに、だとすると久遠真白が覚醒したのが不自然だ」
最初に覚醒した久遠真白は、覚醒した時は比較的安全な場所で実況していた。
覚醒してしばらく後、自衛隊の防御陣地が決壊してゴブリンが襲ってきたのだから少なくとも覚醒時は死の危険は無かったのだ。
「一先ず覚醒についてはここまでにして、この後の配信について考えるべきか」
疑いの目が掛からないように、尚且つ自然にみんなに信じ込ませる方法を考えながら台本を作っていく。
それと合わせて、配信スペースも作る。
自宅での配信だから、特定されないように、なるべく周りの景色が見えない様に工夫しておくか。
途中何度かパトカーのサイレンが聞こえて緊張で肩が震える。
流石にいくら冷静になっていても、不安はあるのだ。
何度も配信スペースの状態を確認していく。
念入りに、画角に物が映っていないか?窓の光にすら注意して服装も変える。
プラットフォームからの特定はこの際どうしようも無いが、それ以外に特定出来そうな物は完全に排除していく。
そうして準備を進めていくと、時間が思っている以上に掛かっていた様で
午前中に始めていた作業は気づけば夕方までかかっていた。
だが、それでも準備は終わった。
後は、告知か。
今使ってるSNSアカウントは身バレリスクがあるから、別のアカウントを作成するか。
早速配信告知用アカウントを作成する。
名前は配信名と同じReviveにしとくか
正直告知なんてしなくても良いとは思うが、今後の事と現状の変化を考えたら行っておいた方が良い。
アカウントを作成して早速告知を行った。
Revive@gasecs11d
世間を騒がせている件について配信します。
配信告知
[初配信]新宿についてと今後起こりえる事象について
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投稿して直ぐなのと、アカウントをフォローしている人もいないので見られていないけれど
一旦これで良い。
スマホを閉じて、今度はPCの配信管理画面を開く。
今度は限定公開ではなく[公開]にした状態で配信開始ボタンにマウスを持っていく。
なんだ?
「手が震えてる?緊張してんのか?」
小刻みに震える手を見て思わず声が出る。
ダンジョンにいた時でもこんな風に緊張はしなかった。
初めて、魔物を殺した前の時と同じくらい緊張してる。
胸に手を当ててゆっくりと深呼吸する。
「落ち着け、これは必要な事だ」
配信をすることに緊張しているのでない、これはもっと純粋な。
人と接する事への恐怖なのだろう。
「やろうか」
カチッとマウスクリック音と共に配信開始を告げる赤いマークが画面に点灯する。
裏切られ、見捨てられ殺された過去の自分。
そして、今の自分。
果たして本当の自分は一体どちらなのだろうか。




