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第1章-7 いよいよ初スキー遠征、エブリイで雪道を行く!

我慢できない女、沙良

 

 その朝、天気予報は「山沿いは大雪」。

 カーテンを開ければ街中はまだうっすら白くなる程度だが、遠くの山々はすでに銀世界。

 前夜からそわそわしていた沙良は、布団の中でスマホの天気アプリを確認し、にやりと笑った。


「……行くしかない」


 冬用キャリアはすでに装着済み、タイヤは新しいスタッドレス。

 車中泊装備は夏帆パッパ仕様の豪華セット。

 あとは行くだけ。

 いや、行かずにいられるわけがない。


 結局、夏帆を誘う前にエンジンをかけてしまい、朝8時、エブリイは単独で雪山へ向けて走り出した。


国道は快適、県道も余裕


 国道は路面にうっすら雪が残る程度。

 新品スタッドレスのグリップ感は頼もしく、ハンドルから伝わる感触は安定している。

 「へへっ、楽勝じゃん」

 沙良は鼻歌交じりでハンドルを握る。


 県道に入ると、道の両脇に積雪が増え、道路も一部圧雪路面に。

 それでもエブリイは軽快に進む。

 「やっぱ冬タイヤってすごいなぁ……」と、車内で独り言。

 あのときホムセンで即決して正解だったと、改めて自分を褒めたくなった。


ゲレンデ近くの坂道で現実を見る


 しかし――。

 スキー場手前の長い上り坂に差し掛かった瞬間、事態は変わる。


 アクセルを踏み込んだ途端、リアタイヤが「キュルキュルッ」と空転。

 速度計の針は思ったより上がらず、ハンドルに微妙な振動が伝わる。


「うわ、やっぱり……」

 エブリイはFR(後輪駆動)。

 荷室には車中泊装備が積んであるとはいえ、軽バンの後輪荷重は冬山では心もとない。

 そのうえ、我慢できない女、沙良。タイヤの皮むきなどしているはずもない。


 しかも、電子制御のトラクションコントロールなんて洒落た装備は一切なし。

 以前、夏帆が「今どきの車って、空転すると勝手にピコピコしてくれるんだよ」と言っていたのを思い出す。


「うちのエブリイちゃんはピコピコしないもんなぁ……」

 思わず苦笑する。

 空転は短時間で収まり、なんとか坂を登りきったが、もし雪が深くなったら……と思うと、背中にうっすら冷たいものが走った。


ゲレンデ到着、そして夜の冷え込み


 スキー場に着くと、空は青く澄み、ゲレンデはふかふかの新雪に覆われていた。

 沙良は久しぶりの滑走を存分に楽しみ、夕方には心地よい疲労感と共に駐車場へ戻る。


 だが、日が落ちると一気に冷え込みが増し、車内の空気はひやりとする。

 エンジンを切ってしばらくすると、外気温計は氷点下に突入。


 寝袋を広げて潜り込むも、冷気がじわじわと侵入してくる。

 「うぅ……寒っ……!」

 これでは熟睡できない。


 ポータブル電源と電気毛布の必要性を、身をもって痛感した瞬間だった。

 「絶対買う。次は絶対……!」と心に固く誓う沙良。


チェーンの重要性を思い知る


 さらに帰り道、雪が激しく降り始め、道はあっという間に深い新雪に。

 幸い、今回はスタッドレスで乗り切れたが、もし吹雪と凍結が重なれば……と考えると不安がよぎる。


「やっぱ、チェーンも持っとかなきゃダメだな」

 安全策を取るのは理系女子の本能。

 帰宅後、迷わずスマホで近場のホムセン在庫を検索。

 ヒットしたのは――そう、例のコッコのマークであった。


再びコッコのマークへ


 翌日。

 「ただいま戻りましたー!」と言わんばかりに、堂々とコッコのマークに入店。

 店内は冬支度コーナーが拡大され、除雪機、雪かきスコップ、そして車用チェーンがずらりと並んでいる。


 金属チェーン、布チェーン、樹脂ラダー……種類の多さに目移りする。

 そこへ例の店長が現れ、「お、また来たね」と笑う。


「チェーンって、どれがエブリイに合いますか?」

 沙良は真剣な表情で聞く。

 店長は即座に型番を確認し、最適な樹脂ラダータイプを勧めてくれた。


「これなら装着も簡単だよ、でも収納が少し大きいんだ」

 値段はそこそこするが、あの上り坂の記憶が背中を押す。

が、「安いやつは……」と沙良。

「まあ、これだね」と、昔ながらの金属チェーンを説明する店長。

それをみた沙良は『意外とコンパクトなんだ』

 「これください!」と即決。


 夏帆が横にいたら「また即決だ……」と呆れたに違いない。

 だが今回は安全第一、迷う余地などなかった。


冬山仕様、さらに強化


 帰宅後、チェーンは後輪用として荷台の一番手前に収納。

 ポータブル電源と電気毛布の購入計画も立て、次回の雪山車中泊に向けて着々と準備が進む。


「よし、これで完璧だ……!」

 沙良はエブリイのボンネットを軽く叩き、まるで戦友に話しかけるように微笑んだ。


 ――そして、次の雪山遠征では、きっともっと快適で、安全で、そして楽しい車中泊が待っている。


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