第1章-6 スキーシーズン到来!スタッドレスタイヤ大作戦
雪の便りが届き始めたある日。
窓の外はまだちらほらとしか降っていないが、空気には冬の気配が漂っていた。
沙良の胸は自然と高鳴る。ついに待ちに待ったスキーシーズン到来――!
「ねえ、沙良、そのままスキー行くの?」
リビングで、夏帆が少し呆れたように首を傾げて聞いてきた。
「うん。キャリアも付いてるし、夏帆パッパの車中泊装備もあるし、準備は完璧だよ!」
沙良はリビングのカレンダーに貼られたスキー場の写真を指差す。雪景色の中でニッコリ笑う自分を想像して、自然と口元が緩む。
「でもさ、それ……」
夏帆はエブリイのタイヤを指さす。
「ああぁぁぁ、スタッドレスタイヤぁぁ~!お金が飛んでいくぅぅぅ!」
沙良の声は思わず伸びてしまった。
自分の理系脳は、冬道の安全性の重要性を理解している。だが、予算とにらめっこすると、心の奥で悲鳴が響くのだ。
結局二人はそのままカーショップへ向かうことになった。
車内では、冬の風が窓から差し込み、街路樹の葉はすでに落ちていて、少し冷たい空気が車内に満ちていた。
カーショップでの現実
店内は冬用タイヤのコーナーがずらりと並ぶ。
展示されているのはアルミホイール付きのスタッドレスタイヤセット。
価格を見て、沙良は思わず顔をしかめる。
「……うう、予算オーバーだ」
店員に聞いても、「やはりアルミ付きだとこれくらいかかりますね」と淡々と答えられる。
沙良は唇を噛みながら、頭の中で計算する。
「うーん、考える……とりあえず、ちょっとほしいものあるから付き合って」と、夏帆に目で合図する。
ホムセン、再び
やってきました、沙良お気に入りのコッコのマーク。
自動ドアを押して店内に入ると、軽トラや農業資材が並ぶ一角で、まさに運命の出会いが待っていた。
「……あぁぁ」
二人は同時に声を上げて、スタッドレスタイヤセットを指さす。
展示されているのは鉄プレスホイール、いわゆる“鉄チン”。
カーショップよりずっと安く、しかも展示品は未使用に近い。
沙良は目を輝かせながら、エブリイ専用のフロアマットや小物も物色する。
店員を見つけると、すぐに駆け寄った。
価格交渉と店長の顔
「すみません、このタイヤ……ちょっと値下げとかできますか?」
沙良は理数系脳をフル稼働させ、過去の相場や在庫状況を頭の中でシミュレーションしている。
「えっ……ホムセンで値切る人って、珍しいなぁ……」
夏帆が小声で呆れる。
沙良は気にせず、計算式のように理論的に値段交渉を続ける。
すると、なんと捕まえた店員が店長だったこともあり、話はあっという間にまとまる。
「じゃあ、取付まで含めてやりますよ」とのこと。
沙良の目は思わず輝き、心の中でガッツポーズ。
夏帆も苦笑しつつ「やっぱり沙良こわいわ……」とつぶやく。
フォークリフトの迫力
そしてそのまま取り付け作業。
店長はフォークリフトを使って、エブリイを軽々と持ち上げる。
その光景を見て、沙良は心の中で「……やべー、これは生で見ると迫力が違う」と震えた。
エブリイがトミカの様に感じた沙良
[良い子はマネしちゃだめだよ。ちゃんとジャッキを使おうね。店長]
取り付けは手際よく進み、あっという間にエブリイは冬道仕様に変身。
試しに雪の少ない道を軽く走ると、安定したグリップ感だが今までよりノイジーな走行音に沙良は安全に変えられないとあきらめる。
追加装備もバッチリ
ついでに、ホムセンで購入したフロアマットや荷室の滑り止めシートも設置。
マットは荷室の形状にぴったりで、滑る心配もなし。
細かい小物類も整理して、車中泊準備はほぼ完璧となった。
「よし……これでいつでもスキー行けるぞ!」
沙良は運転席に座り、冬の青空を見上げる。
夏帆も助手席から「え、やっぱり沙良は本気だねぇ……」と笑う。
冬のワクワク感
帰り道、雪はまだちらほらとしか降っていないが、空気の冷たさが冬を実感させる。
沙良は自分のエブリイを駐車場に停めると、荷室の温もりやフロアマットの感触を確かめながら心の中で呟く。
「これで準備完了。あとは滑るだけ……あぁ、早く雪山に行きたい!」
夏帆も笑いながら、「ま、楽しんでおいで」と背中を押してくれた。
二人の間には、冬の冒険が始まる予感がふわりと漂っていた。
「夏帆、行かないの?」
「あっ、あたしはスキーもスノボもしないよ。寒いの苦手だし」