第2章‐19 スマホとエブリイをどう守るか
「いやぁ……やっぱりスマホって神だね」
エブリイの荷室で充電復活したスマホを見つめながら、沙良は深くため息をついた。
「ほんとだよ。これなかったら、マジでただの異世界迷子」
夏帆も頷く。
二人はしばし真剣に考え込む。
「スマホとディスプレイオーディオ、どう守るか……」
「どうって、守るしかなくない?」
「いや、でももし盗まれたら? 壊れたら? 翻訳終わり、ナビ終わり、研究も終わり」
「……『あんたは何の研究をする気なの』」
夏帆も言葉を失った。
が、数秒後。
「まあ、なるようにしかならないでしょ」
沙良はあっさり笑い飛ばした。
「結論それかーい!」
夏帆は額を押さえる。
結局いつもの二人である。
◆◆◆
「で、今日はどうする?」
「決まってるでしょ。宿屋!」
「は?」
「幼女成分を摂取するの!」
「……またそれ?」
「私の癒やしは彼女しかいないのだ!」
沙良は拳を握る。
「……まあ、いいけど」
夏帆は呆れつつも許可した。
◆◆◆
こうして二人は“ミスターブラウンの宿”へやって来た。
「いや絶対そんな名前じゃないから」
夏帆が笑う。
(※実際はもっと立派な名前だが、二人の頭の中では“ブラウン”で固定されていた)
中では幼女――看板娘のマリアが、ちょこちょこと走り回っていた。
「わーい、お姉ちゃんたち、来てくれたの?」
「うぉぉぉ! 尊い!」
沙良が崩れ落ちる。
「またやってる……」
夏帆は肩をすくめた。
◆◆◆
その夜。
食事を頼み、マリアとわいわい話す。
沙良は満面の笑みでご飯をほおばり、夏帆も微笑ましく見守る。
だが、ここで問題発生。
「姉ちゃんたち、飲み物は?大人なんだし、これ飲んでみなよ」
ミスターブラウン(店主)がにやりと差し出したのは、地元のおすすめ酒。
「え、いや、私たち酒弱いから……」
「ちょっとだけ、ちょっとだけ!」
沙良と夏帆、軽率にコップを受け取る。
――そして。
「おっ、うまっ……あれ? なんか世界がぐるぐるしてる」
「ひゃー、マリアちゃーん! 君は天使かぁ!」
「オイオイ!お客さん……完全に酔ってるじゃないか」
店主は呆れた。
結局そのまま、二人は宿泊することに。
布団に転がりながら、沙良が呟いた。
「幼女成分……尊かった……」
「もう寝ろ」
夏帆の声が遠のく中、夜は静かに更けていった。




