女神様、妹を救うのが僕の転生の使命じゃないんですか⁉
半年ほど前に別のタイトルで投稿して途中で設定変更の必要あり停止した作品ですが、書き直して今回は完成させています。
3日程度で全話投稿しますのでよろしくお付き合いください。
くそっ! 魔獣はまだ半分近く残ってる。
南に向かう平原でミーナと二人、数十匹の魔獣に囲まれている。
包囲され、じりじりと近づいてきて逃げ道がない。
ミーナは百七十センチ近い体を頭からお尻まで僕と背中合わせでピッタリと密着させているので、お尻のふっくらした感触が伝わってくる。
大柄な僕の服を手直しした前開きの白いシャツを着て裾をヘソの上で結んでいてブカブカのはずなのに胸の部分はパッツンパッツンにふくらんでいる。
そして周囲を警戒して左右に顔を動かすのに合わせて大きなオッパイもブルンブルンと大きく揺れる。
ミーナが言ってた通り、立派な巨乳に育ったな……。
僕のズボンを直した青い短パンからムチッと健康的な太もも、スラっとした長い脚が伸び、腰まで伸びる長い黒髪が風になびく。
ホントに立派な十八の女性の体だ。
昨日までちっちゃい六歳の女の子だったなんて、とても信じられないな。
「おにいちゃん、また来ます!」
油断しないでとでも伝えたいように、つないでいるミーナの左手が僕の右手をギュッと握ってくるが、両端が蛇の頭のようなヒモの魔道具が手錠のようにからみつき、互いの手首を結んでいる。
僕は右利きなのに、これじゃ剣が持てないので慣れない左手で剣を構えている。
長く鋭い牙と爪を持った高さ数メートルの巨大なクマ、サーベルベアーが十数匹。
銀の毛で長い牙、全長約三メートルのシルバーウルフ三、四十匹。
あと半日も南に歩けばモルティスの街。
魔獣の生息地である魔王軍の支配地域はモルティスのずっと南側。
こんなところにこれだけの魔獣がいるわけがないのに……。
「火球連撃!」
ミーナのかかげた右手の前に展開した赤い魔方陣から火球が何発も発射され、こっちに向かってきたシルバーウルフの群れに叩き込まれて爆煙が上がる。
数匹の体が宙を舞った。
ミーナの魔法攻撃は討魔軍の黒魔道士数人分の威力はある。
さらに向かってくるシルバーウルフに右手をかざして火球を発射するが、一匹がかわして飛びかかってきた。
させるか!
首筋に剣を叩き込んで地面に倒した。
「おにいちゃん、すごい!」
「だてに十五から十三年も討魔軍で戦ってないからな!」
と言っても、その他大勢のモブ兵士で最後の三年は後方支援、ついにはリストラされたぐらいだけど、おにいちゃんも少しは格好をつけたいんだよ。
間髪入れずさらに三匹のシルバーウルフが飛びかかってくる。
二匹はミーナの火球で吹き飛ばし、一匹は口を開いて突っ込んできたその口に剣を突き刺す。
二、三匹が相手なら勝てない相手じゃないが数が多すぎる。
ハアハア……とミーナの息が上がり始めた。
魔獣はまだ三十匹ぐらい残っている。
マズいな、ミーナは魔力をもうじき使い切る。
せっかく助けたミーナの命、前世と同じく僕はなにもしてやれないのか。
いや、今回は僕も一緒だからさびしい思いはさせずにすむか。
……くそ、せめて、この魔道具が無ければ一人は逃げられるかもしれないのに。
「おにいちゃん、短い間でしたけど、お嫁さんになれてうれしかったです」
口元にかすかな笑みが浮かんでいる。もうあきらめてしまったのか。
だけど、ミーナ、妹にはなってくれたけど、お嫁さんにはまだなってないじゃないか……。
女神様、ミーナを救うのが僕の転生の使命じゃないんですか?
こういうピンチでは転生した人間がチートスキルでヒロインを救うのがテンプレですよね!
昨日、やっと獲得したスキルの「増幅」とかも使い方の説明がなかったんでぜんぜん使えないんですけど!
だいたい女神様は初めて会ったときから説明不足なんですよ!
今ここでミーナと死んでいくバッドエンドも僕の自己責任なんですか⁉
前世ではアラフォーの氷河期世代だった僕に女神様は言った。
”結果は全てあなたの『自己責任』です”と……。
次回、『第1話:「妹ゲット」を願いに転生してチートスキルもお預けなのは女神様のせいです』に続きます。