行動の結果
今日はハルの試験の結果とともに入学にあたる書類が届く日である。
結果は見るまでもない。ハルの実力なら当然受かっている。
ただ当の本人はというと―――元気がない。
鍛錬はいつも通りこなすが、外には遊びに行こうとせず、ベッドで寝転がっていた。
大丈夫だと励ますが、絶対落ちたの一点張り。
日に日に暗くなるハルへの心配は増すばかりだ。
早くハルの元気な姿が見たい。書類はまだか?
そう思いながら宿屋のフロントで待っていると、ヘンリーが話しかけてきた。
「おいおい、ハルちゃんの結果待ちか?
届け物なら俺が受け取っとくからよぉ、自室に戻るなりどっか行くなりしたらどうだ?」
「いや、大丈夫だ」
やれやれといったように両手を挙げ、軽い笑みを浮かべるヘンリー。
「そういえばよ、貴族の間で噂されてたぜ?
とんでもねえ魔力操作の少女が現れたってよ。しかもお前の姓を持ってるときた。
取り込もうとするやつがわんさか現れんのが目に浮かぶぜ」
「ああ、だからヘンリー、頼んだぞ」
「人使いのあれぇ」
そんな会話をしていると、ドアが開く音とともに声が聞こえた。
「お届けもので―――っ!
こ、こちらハル・ベラフォードさん宛てのもので・・・す」
俺は配達員が言い終わる前に受け取り、サインを書いて渡す。
そしてその封筒をもって、ハルの部屋へと向かった。
「ハル、入って大丈夫か?」
「・・・だいじょうぶ」
すこし間を開けてハルの声が聞こえた。
俺はドアを開けて中に入っていくと、ハルがベッドの上で寝転がっていた。
「学園の合否通知が届いた」
ベッドの真横まで来て封筒をみせる。
ハルは体を起こし、ゆっくりと封筒を受け取った。
じっと眺めて数秒。決心がついたのか、封を開けて紙を取り出す。
紙を眺めた瞬間、徐々に目を見開く。
大きく開ききったところでこちらに顔を向けた。
「アレン!!
受かってた!!」
「はは、おめでとう。
ハルなら余裕でう―――うぉっ!」
突然抱き着いてくるハル。
そして体重をつかって引っ張るようにベッドに引き込まれた。
「やった! やったよアレン!」
「あ、ああ・・・」
俺は生返事をすることしかできなかった。
ハルが仰向けで俺に抱き着く。
俺は体を下向きにして、ハルの上にかぶさるような状態だ。
体を密着させまいと、俺は両腕に力を入れ上半身をあげる。
しかし、体をそらせることになったからだろうか。
俺の下半身が、ハルの下腹部にあたる。
まずい!
自覚した時にはすでに、俺のモノは固くなっていた。
「え? ええ!?!? 」
驚き、ハルは抱きしめるのをやめた。
そして、視線を下に移す。
その間俺は少しも動かず、ただハルの顔を吸い込まれるように見ていた。
ハルがゆっくりとベッドに体重をかける。
さきほどまで俺の背中にあった手を顔の高さまであげ、ベッドにつけた。
うるんだ瞳と唇で俺を見つめるハル。
「・・・」
その口がゆっくりと、小さく開いた。
「い・・・い―――」
「―――俺もいるんだが?」
その瞬間、俺は声の方向に顔を向ける。
そこにはヘンリーの姿。
「届け物まだ全部受け取ってなかったからもってきたんだが・・・。
おいおい、一応ノックはしたんだぞ?」
俺はすぐにベッドの上から降りる。
「ほらこれ。
じゃああとは二人でごゆっくり~」
そう言い、部屋から出ていくヘンリー。
その場で数秒間立ち、俺は気づいたようにハルの方へ向き直す。
そこには、顔を赤くし、困った顔をするハル。
「なんか変なとこ見られちゃったね・・・」
「あ、ああ・・・」
俺たちは椅子に座り直した。
その後、静粛に書類の手続きを行った。
宿屋のフロントに座るヘンリーと俺。
二人でハルの入学にあたっての書類整理や確認事項を共有していた。
「よし、こんなものか。
なにかほかに気になることはないか? ヘンリー」
「・・・お前、ハルちゃんのこと恋愛的に好きだ―――」
「―――それは勘違いだ。
昼間のことでそう思ってるんだろうが、あれは事故なんだ。
たしかに魅了スキルで惹かれてしまうことはあれど、手を出すことは絶対にしない。
そもそ―――」
「―――わかったわかった!
そんなにまくしたてんなって!」
間髪入れず、つい早口で否定してしまう。
過去の自分への自戒の意味も込めて。
「まあどっちにしろだ。
お前はもっと自分の気持ちや行動を話すべきだと思うぞ」
「・・・ああ」
「ったく、わかってんのかよ。
今日はもう解散だ」
そう言い、バックヤードに変えるヘンリー。
その背を見送った後、俺も自分の部屋へと戻った。




