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女の子

 アニロビ王国に来て二日目の昼。


 旅の疲れも取れたので今日はアレンと都市の中を見て回った。


 高級住宅街の店を巡っても、お世話になる機会は少なそうなので平民街へと足を運ぶ。

 昨日通った道ではあるが、再度見ても驚く。


 活気がすごい。


 見たことがないたくさんの食べのも。

 アクセサリーや武器の数々。


 どこをみても興味が惹かれるものばかりだ。


「なんでも好きなもの買ってやるぞ!

 ほら、あれなんてどうだ」


 そう意気揚々と指をさすアレン。

 このようにアレンはときどき私に物を買い与えだがる。


 二人で暮らしていた時はいまいち欲しいものが思い浮かばなかったが今は別だ。

 だってこんなに周りに素敵な物が溢れている!


 思わず私はアレンの腕を引っ張り、アレンの指さした方向へ向かう。

 そこには、こんがりと焼けた肉にこれでもかという量のチーズをかけた露店があった。


「アレン、これ食べたい!!」

「あ、ああ!

 店主、これ一つ頼むよ」


 お金の使い方を学ぶことなんてすっかり忘れ、私はじっと食べ物を見ていた。


「ほら、お嬢ちゃん」


 そう言われ、容器を手渡される。

 その瞬間、湯気とともに濃厚なチーズの香りが私を覆った。


 自然と口の中にたまった唾を飲み込む。


 私は我慢できず、口を大きく開けた。

 チーズに覆われた肉にたどり着くように、かぶりつく。


「うっっっっっまあああああ!」


 チーズのとろみに肉の表面のカリッとした食感。

 それらを押し寄せるように飛び出る肉のやわらかさと肉汁。

 

 本能によびかけるようなジャンクフードを全開に出したおいしさである。

 ひさしぶりの不健康な食事にテンションがあがる。


 と同時にアレンが出してくれていた料理はとても健康的なものだったと理解する。

 しかもかなりおいしい。


 そんな今のテンションとアレンの料理に愛がこもっていたことを認識したからだろうか。

 私は満面の笑みをアレンに向ける。


「アレン、ありがとう・・・!」

「うぐぅっ」


 突然変な声を出すアレン。

 しかし気にせず私は肉にかぶりつく。


 食べ終わり、視線を上げると、私たちを囲うようにまばらに人が集まっていることに気が付いた。


 え? なにこの人たち? なんか私のこと見てない?


 人々が話しながら、こちらをちらちら見ている。


 私はすこし怖くなり呆けたアレンの手ををつかむ。

 するとアレンもハッと気が付いたようで、私の手を握ぎる。


「移動しよう」


 そう言い、私の腕を引っ張っていった。





 人混みから離れ、少し暗い裏路地についた。

 さきほどとは打って変わって静かな場所だ。


「なんかすごい見られてたね・・・。

 なんだったんだろう?」


 ハルが眉尻を下げ、不思議だという表情しながら口を開いた。


 魔力漏れ、魅了スキルが出ていたことに気づかなかったのか・・・。

 まああれだけ夢中になって肉にかぶりついてたもんな。


 俺は先ほどの年相応な無邪気さをみせるハルを思い出し、少し笑いをこぼす。

 その間もハルは首をかしげていたので説明しようと俺は口を開いた。


「さっきの人だかりは、ハルが持ってるスキ―――]

「―――ちょっと待ちなさいよ!!」


 突然聞こえる女の子の声。

 

 俺たちは音のへすぐに顔を向ける。

 そこにはハルよりも少し背が低いであろう女の子が息を切らす姿があった。


 前かがみの体勢をし、息が整え終わったのだろうか。

 ゆっくりと息を吸いながら上半身を上げる女の子。


 次の瞬間―――


「―――この泥棒猫!!

 アレンを返しなさい!!」


 突然の怒号に面を食らい、俺とハルは何も言えずにいた。


 ずかずかとこちらに向かって歩いて来る少女。

 目を凝らしじっくり眺め、顔をよく見る。


 真っ赤に染まる赤髪のショートヘア。

 少し釣り目で、顔をひそめるような表情の目元。


 ・・・この子は―――エレノア!


 エレノア・カスティーユだ。



 俺が3年前に魔法の家庭教師を勤めた当時7歳の女の子。

 四大公爵の一人娘であり、魔術の才能にあふれていた。


 それにしても大きくなったなあ。

 目の前で歩みを止め、こちらを見上げるエレノア。

 成長を感じてうれしくなり、つい快活に話しかける。


「久しぶりじゃないか! エレノア!

 いったいどうしたんだ?」

「・・・アレン。

 この子とどういう関係?」


 なおも恐ろしい表情を見せるエレノアに俺は真剣な表情に切り替える。


 どういう関係? そうだな・・・。

 

 一緒に暮らしていて、家族のような関係。

 襲ってしまったことがあったが・・・いや、今は考えるのをやめよう。


 鍛錬をつけているので―――弟子。

 うん、師匠と弟子という関係性がぴったりかもしれない。


「この子はハル。

 俺の弟子だ。仲良くしてやってくれ」

「ふーん。弟子ね」


 じろりとハルの方を眺めるエレノア。

 俺も続いて視線を移すと、ふにゃふにゃな顔で目を泳がせるハルがいた。


 なんだその顔!?

 初めて見た・・・。


 驚いているとエレノアがハルに向かってしゃべりだす。


「私はアレンの一番弟子、エレノア・カスティーユよ。

 半年もアレンに魔法を鍛えてもらったわ」

「ハ、ハルです・・・。

 わ、私は一年くらいです・・・へへ」


 突然自慢げに語るハル。

 まずい雰囲気を感じる。


 間に入ろうとするが間髪入れずエレノアは一歩前に出て、ハルに顔を近づけた。


「ふん、たいした魔力量もなさそうね。

 あんた今年から学園に?」

「は、はい・・・」

「・・・」


 しばらく見つめあっていた二人。

 この膠着状態を動かすように、老人の叫び声が聞こえた。


「お嬢様―――!

 じいやを置いていかないでくださいませぇ!」

「ふん、今日はこれくらいにしといてあげるわ。

 クラス分けを楽しみにしていなさい。

 またね、アレン」


 そう言い、老執事と一緒に表通りへ消えていった。


 相変わらず嵐のような女の子だ。

 我が強いところも変わってなくて安心した。


 そんなことを思っているとハルがプルプルと震えている姿が視界に映る。

 初めて出会って、迫力に押されてしまったかと心配になる。


 するとなにやらぶつぶつとしゃべっていることに気が付いた。

 耳を凝らして聞いてみると―――


「ひ、ひさしぶりの女の子・・・。

 けっこうしゃべれた・・・!」


 不気味に笑いながらガッツポーズをするハル。


 あれでしゃべれていたのか・・・?


 出会ったころの自分の股間をじっくり触っていたハルを思い出す。

 残念な子であることを再認識させられたな。


 そんなことを考えながら、俺たちは帰路に就いた。 

 

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