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第74話 完全に違法

「何でもっと早く気付かなかったんだ……」


 ギルドマスターのマリオが、俺の隣で頭を抱えている。


「申し訳ありません……あまり例のない事だったので、備考欄までしっかり確認しておりませんでした」


 隣でシュンとしながら謝罪するアノン。


「いや違う、君を攻めているんでは無くて、これは私が把握しておかなければならなかった事だった」


 マリオがそう言って、ちらりと俺に目線場向けられる。


「すまない。俺もそんな事があるなんて聞いた事無くて……」


 うああああああ!

 何で疑問に思った時にちゃんと確認しなかったんだ俺のバカバカバカぁ!!


「なんかみんなで謝ってるの面白いな」


 そう呟いた諸悪の根源であるアメリアに、全員から怒りの視線が向けられる。

 流石のアメリアも、慌てて視線を逸らしていた。


「アメリア。お前絶対知ってただろ? 何で言わなかったん――」


「記憶に御座いません」


 俺が言い終わるのを待たずに、アメリアが視線を逸らしたまま食い気味に言った。


「まあ、起きてしまった事は仕方がない。しかし、このままではアメリア君はC級という事になってしまうぞ?」


 転生者は転生直後に行われる基礎教育課程を満了していれば自動的にD級の冒険者ランクを付与され、その後に行われるアカデミーでの合同教育を受ければC級がもらえる仕組みになっている。

 幸か不幸か、アメリアはこの合同教育こそ受けていないものの、”東の勇者”の元で実績を積んでおり、期限付きB級をもらう際に特例でC級に上がっていたらしい。


 これを調べる過程で、俺とパーティーを組ませるために、国がかなり強引な手続きを踏んていたことが判明した。


「でもさ。そんな特例特例で上がれるんならその特例でBに上げてくれても良くね?」


 まるで他人事のように言うアメリアだが、


「あの時はどうしてもヤマト君と組ませないといけない理由があったからそうなっているんだろう。しかし、今となってはそこまでの理由があるかと言われれば……」


 そう言ってマリオとアノンが顔を見合わせる。


 そして、急遽呼び出したオリーがここで口を挟む。


「じゃあいいんじゃないか? それで困るのはアメリアだけだろう?」


「はぁ!? おめーが一番パーティーに不要だろこのハゲ!!」


 激高してオリーの椅子をガシガシ蹴るアメリアだが、表情を見るに一応の焦りは感じている様子である。


「まあ、オリーが要らないってのには同意何だが、そもそも何でこの二人が俺のパーティーじゃないといけないんだ? ぶっちゃけユラリとピチカさえいれば普通に魔王とも戦えるんだが?」


 俺のこの質問にも、マリオとアノンは顔を見合わせている。


 なんか今日はお見合いしてばっかりだな。


「それは……まあ、この二人はヤマト君にしか制御できないからというか……。ヤマト君の元でこそ力を発揮するのであって……」


 歯切れが悪いことを考えると、俺かこいつらのお守りを任されているのではないかという予想は正しいようである。


「あの……話聞いとったんじゃけど、アメリアちゃんのその帽子、東海国の魔法使い見習い帽よね?」


 そこに突然口を挟んできたのは、東海国出身の女性魔法使いである”リーベット”だった。


「その紫色で(つば)に切れ込みが入っとるデザインは東海国の魔術士協会の仮免組が被る帽子なんよ。前からちぃと気になっとったんじゃけど、まさか思うけどアメリアちゃん……」


 盗み聞きしていたとかどうでもよくなる情報に、俺達は一斉にアメリアの方を見る。


「あ? 知らねーよ?」


 今度は一斉にアノンの方へ目線が行く。


「え、あ! ちょ、ちょっと待ってくださいね、魔術士ギルドに問い合わせてみます!」


 そう言ってカウンターの奥に引っ込むアノン。


「……あ、そうだ思い出した。たしかこいつ魔法使いとしてじゃなくて剣士として登録されてるんじゃなかったか?」


 俺がアノンに向けてそう言うと、


「そうなんです。前から気になってたんですが、アメリアさんは何故か剣士として冒険者名簿に載ってるんです。何か都合があるんだろうなとは思ってたんですが、まさか……」


 アノンは魔導気に向かって手を動かしながらそう返して来た。


「基礎教練でたしか”二級魔術士”まではもらえるはずだが、B級冒険者の資格に、魔法使いは”一級魔術士”免許が必須だ。もしかして、だから剣士で登録してあるのか?」


 俺は独り言のようにブツブツと呟きながら情報を整理するが、特例に特例が重なっているため正直訳が分からなくなっている。


「なんか良く分からんけど基礎教練って生まれてから最初にやるあれの事だろ? あたしあれ途中までしかやってないから多分魔術士の資格持ってないぞ?」


 今更とんでもない事を告白するアメリア。


「じゃあその帽子は何なんだ?」


 一級魔法使いを持っているオリーが、余裕の表情でアメリアに尋ねる。


「”東の勇者(ししょう)”に免許取れ免許取れ言われたから仕方なく協会には登録したんだよ。でも取る前にヤマトパーティーに組み込まれちゃったから、そのままだな」


 俺達がそれを聞いて呆れる中、オリーだけがうんうんと頷いて、


「ふむふむ、分かったぞ。つまり東海国から聖王国の冒険者ギルドに引き継ぐ際、何か格好がつかないので東海国側が色々いじってB級までは上げたんだろう。でも結局辻褄が合わないから、聖王国が頑張った結果、今の状態になったんだろう!」


 こいつの感想はさておき、アメリアはこのままではB級どころかC級すらもあやしいのである。


「めんどくせーなぁ! じゃあもうあたしは剣士でいいよ! だったら別に問題ないんだろ?」


 一体、このガキは今まで何を聞いていたんでしょうね?


「アメリアちゃんええ? ジョブって適当に名乗ればええもんじゃのうて、各々に役割があるんよ。例えばパーティー編成の時に前衛職だけとか後衛職だけみたいなパーティーは基本組めんし、クエストによっては職種を指定されることもある。そんでアメリアちゃんにとって死活問題なんは、剣士って攻撃魔法が使えんのんよ? それでもええん?」


 有難いことにリーベットが分かりやすく解説してくれた。


 その話をポカーンと口を開けて聞いていたアメリアが、


「え? じゃあ今まであたしが魔法を使ってたのは?」


 キョロキョロと目を泳がせて周りに回答を求めた。


「完全に違法だ」


 オリーが胸を張ってそう答えた。

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