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第71話 結局いつもの感じ

「――私からは以上です。閣下には度重なるご迷惑をお掛け致しました事を、ここに深く謝罪致します」


 俺は双方の言い分を要約して辺境伯に伝え、謝罪の言葉でそれを締めくくった。


「アメリア。ヤマト君の言った事は本当か?」


 辺境伯は俺に何も言わず、アメリアにそう尋ねる。


「……はい。間違いありません」


 流石のアメリアも、どことなく緊張した声色でそう返した。


「なるほど。では、死人が出ていないという事であれば、今回の件は全て私が預かろう」


 まあ、辺境伯がわざわざここに来るという事はそういうことだろう。

 とりあえず最悪の事態は防げたようだった。


「閣下、此度の責任は私にあります。その処遇は何なりとお申し付けください」


 俺は礼をしたまま伯爵に言葉をかける。


「必要ない。話を聞く限り、卿はピチカ君の神託を受けてここへ参じたのであろう。であれば何を責任を取る必要がある?」


 つまり、閣下は今回の件を冒険者パーティーが起こした事として見ていないという事である。


「そしてアメリア」


 辺境伯に声をかけられたアメリアの方がピクリと跳ねる。


「御前のやったことは本来なら許される事ではない。しかし、状況から考えて、特に魔族絡みとなると君の行動の全てを非難できる訳でもあるまい。後程、憲兵の調べを受ける事となるだろうが、その点に関しては私の方から口添えをしておこう」


 閣下の口添えとなれば、恐らくアメリアはすぐに放免されるだろう。

 こうして辺境伯にどんどん借りが増えて行く。


「あ……ありがとうございます……」


 アメリアがぎこちないお礼の言葉を口にする。


「閣下、重ね重ね、本当に申し訳ございませんでした」


 そう言って俺は再び辺境伯に謝罪をする。


 言われた辺境伯は俺を一瞥すると、


「はあ……本当に君は謝ってばかりだな。勘違いしないで欲しいのだが、今回のこれは君達だからという訳ではない。別に謝罪も感謝もされる謂れは無いのだよ」


 そう言って踵を返す。


「フォルカー殿。とりあえず建物の様子を見て回りましょうか」


 辺境伯はフォルクと一緒に車に戻ろうとする。


 そして、それに乗り込む寸前に、ピタリと動作を止める。


「ヤマト君」


 俺は頭を下げたまま、その言葉に「はい」と返事を返す。


「この前は言い過ぎた。あの時は私も少し大人げ無かったと反省している。どうか許してほしい」


 開いた魔動車のドアで隠れた向こうから、そんな声が聞こえて来た。


「いえそんな、とんでも御座いません」


 俺はその後に何か続けようと思ったが、上手く言葉が出てこなかった。


 その後すぐに魔動車に乗り込んだ二入は、バジョンの運転で村の奥へと消えて行った。


「よかったですわねっ! ヤマトさんっ!」


 ピチカの底抜けに明るい声が、沈黙を破って聞こえて来る。


 あ、やばい。

 ちょっと泣きそう。


「閣下とは昔からの知り合いでね。ダメもとで頼んでみたのだが、いやはや言ってみるものだな」


 村長はあっけらかんとそんなことを言うが、


「ああ、失礼しました。ヤマト様に対して言葉遣いがなっていませんでしたな」


「いや、必要ない。今回は本当に申し訳なかった。そして本当に助かった。ありがとう」


 俺としては本当に助かったと言う他無かった。


「アメリア。良かったわね、閣下のお口添えならきっとすぐに返してもらえるわ」


 聖職者の老婆がアメリアの傍らに来て彼女に声をかけている。


「うん……でもあたしのせいでいっぱいケガ人が……」


 そう口にしてシュンとするアメリア。


「それなら心配ないわ。ヤマト様とピチッカーテ様が全部、奇麗に直して下さったから」


 それを聞いたアメリアは、素早く頭を上げて俺達を見る。


「……ホント?」


 俺達はそれに対して無言で頷く。


「よかったぁ…………」


 アメリアは袖で目を覆ってすすり泣き始めた。

 真摯な謝罪もそうだが、ここまで慎ましいアメリアは本当にレアだ。


 全く、いつもこんな感じでちゃんと反省してくれればいいのにな。


「あの、疑うわけでは無いんですが、本当に彼女は魔女じゃないんですよね?」


 衛兵はアメリアの事がどうしても信じられないようで、その前置きとは裏腹に未だに懐疑的な目をアメリアに向けている。


「いやあ、だってこんな小さい子どもがあんなとてつもない魔法を使うのが、どうも信じられなくて……」


 いつもならガキ扱いされてアメリアが沸騰するところだが、今の彼女は泣いてばかりでそういう様子は無いようである。


「まあ、あいつは一応転生者だからな。それに、見た目ほど幼いわけでも無いんだよ」


 その言葉に、衛兵は「ああなるほど」と言いながらもイマイチよく分かっていない様子だった。


「いや、あの子はちゃんと大人ですよ」


 ここで口を挟んできたのは、今までずっと居たにも関わらず一切存在感を放っていなかった別の衛兵だった。


 俺達は言葉の意味が分からず、頭にハテナマークを携えて彼の顔を見る。


「俺……見たんですよ……」


 意味深な言い方をする衛兵。

 それに対して、アメリアが急いで顔を上げて、


「待て! それ以上言うなあああぁあ!!」


 泣きはらした顔のまま、そう叫びながらその衛兵に飛び掛かった。


 その様子を見て、キャッキャとはしゃぐピチカ。


 ああ、なんか結局いつもの感じだな。


 と、俺はその三景を眺めるのであった。

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