第59話 エピローグ(三章)
・登場人物・
ヤマト……主人公。勇者のはずだが、禄でもない二つ名を沢山持っている。
ベイエル……A級冒険者。チャラ男っぽい雰囲気だが、かなりの実力者。
オリー……転生者の黒人男。自分が認められないのは世間が悪いと思っている。
レンブラント……転生者。D級パーティーのリーダー。乱暴者。
テレピム……D級パーティーの男スカウト。若干の三下感を感じる。
ペトリー……D級パーティーの女魔法使い。グラマラスなIカップ。
シッカ……D級パーティーの女剣士。細マッチョなEカップ。
トンバオ……B級パーティーの男レンジャー。リーダーだが地味なのが悩み。既婚。
グラーベ……B級パーティーの男修道僧。治癒魔法のスペシャリスト。
モンティーヌ……B級バーティーの女魔導士。術士教官も務める。×イチ。
サルッサ……B級パーティーの女センチネル。元王国軍の兵士。既婚。
アキ……男聖職者で転生者。男喰いとか言われるが、本人にその気はない。
俺は大きく背伸びをする。
心地いいストレッチ感で体がリフレッシュするとともに、あくびが喉の底まで登って来る。
今日は大変だったが、予想だにしない収穫があった。
「ヤマト……流石のオレも疲れるんだが……」
パーティーの最後尾でオリーが音を上げているが、俺は当然のようにそれを無視する。
お前は荷物持ちなのだから、全ての荷物を持つのが当然の仕事だろう。
「先に教会に預けましょうか? ギルドに持って行くのもアレですし」
アキがそう言うと、全身大やけどの魔族を抱っこしたオリーが「当たり前だ」と即答する。
俺達は町への帰路を歩きながら、今日の出来事を振り返っていた。
街までもう間もなくの所、ようやく緊張が解けたのか、D級パーティーのシッカが俺に話しかけてきた。
「あの……こういう事ってよくある事なんですか?」
彼女は今朝のテンションと比べると、かなりトーンダウンした様子だった。
こういう事とは、魔族とエンカウントした事だろうか。
「まあ、あると言えばあるな。流石に最上級貴族はかなりレアだけど」
俺は出来るだけ優しめの口調を選んでそう言った。
「オレ……あんなの絶対無理っす……」
テレピムも独り言なのか、消え入りそうな声でそう呟いた。
そしてペトリーは、その二人へと伏し目がちに視線を送っていた。
「レンブラント。これで分かっただろう? お前等にここはまだ早い。まずは帝都でしっかりとレベリングしてから聖王都でC級の試験を受けろ。今まで魔法のゴリ押しで何とかしてたんだろうが、それには限界があるんだよ」
完全に消沈してしまったレンブラントに対し、俺は真剣な口調でそう言った。
彼はそれに答えることは無く、項垂れて頭を上げることも無かった。
実際こいつが連発していた”ブレイズダッシャー”と言う魔法は、ロスはデカいし無駄に周囲を燃やすし、何なら”大結界”に誤検知されやすいから迷惑なだけで良いとこがあまり無い。
「ん? おい聞き間違いか? お前今C級試験って言わなかったか?」
俺の少し後ろでそう言ったのは、B級パーティーの修道僧、グラーベだ。
「そうなんだわ。コイツらD級冒険者なの」
代わりにそう答えるベイエルに、B級の彼らが一斉に驚きの声を上げる。
「あんたら何やってるの! そんなの命知らずどころかただの愚か者じゃない! 冒険者になった時にちゃんと教わったでしょ! 大体、どうやってここまで来たわけ!?」
魔導士のモンティーヌが声を荒げる。
それを聞いたD級のメンバーが、シュンとする。
「あなた魔法使いよね? 一体どこの学校を出たの? 全く、信じられないわ! もう一度学校に戻って基本過程から学び直してきなさい!」
矢継ぎ早に叱責の言葉を並べるモンティーヌ。
ペトリーの目から大粒の涙がボロボロと零れ落ちる。
「ちょ、落ち着いてモンティーヌ。言いすぎよ」
センチネルのサルッサが、そう言って彼女を諫める。
モンティーヌは導士号を取っている事からも分かる通り、インテリでお堅い性格をしている。
俺はこの前の試験で女の子二人を泣かせてしまった反省から、出来るだけ穏便に済ませようと思っていたのだが、結局こんな感じの雰囲気になってしまった。
「いいえ! ここは言わせてもらうわ! 貴方達は帝国出身? 町に帰ったら、すぐに馬車で帝都まで帰りなさい! そしてもう一度、一から基礎を勉強し直すの!」
止まらないモンティーヌの説教に、シッカまでも声を上げて泣き出してしまう。
その脇でテレピムがオロオロと二人を交互に見比べている。
「うぐうううううううう……」
突然後ろから聞こえてきた唸り声に、俺はゆっくりと目を向ける。
そこには、肩を震わせて立ち止まるレンブラントの姿があった。
「うううう……ぞごまで言わなぐでもいいじゃんかあああああああああ゛あ゛!!!!」
レンブラントが大声を上げて泣き出した。
大の大男が子どものように泣きじゃくる姿に、一同が唖然となる。
「ま、まあまあ。君達はまだ若いんだし、まだいくらでもやり直せるから。とりあえず町で一緒に食事でもしてちょっと話そう」
最後まで黙っていたレンジャーのトンバオが、場を鎮めようと声をかける。
「うわああああああぁぁああああああああんっ!!!!」
彼の声はレンブラントに届いているのかいないのか、周囲がドン引きする勢いで泣き続ける。
そこに、おずおずと女子二人の元を抜け出してきたテレピムが、俺達の元に忍び寄る。
「あの、レンブラントはああなったらもうしばらくは止まらないんで、ちょっと待ってもらえませんか?」
俺達にそんなことを言ってくる。
「ああなったらって、何度かこんな事があったのか?」
ベイエルが戸惑いつつも、彼にそう質問する。
「いや、頻繁にってわけじゃねんすけど……前回は確か、店で出された肉が他のテーブルより小さいとか何とか因縁をつけた時に大暴れして、それで憲兵に取り押さえられて泣いてましたね」
俺とベイエルは思わず顔を見合わせる。
「いやいやいや! そんな本当にガキじゃねーんだから、そんなの冒険者うんぬん以前の問題じゃないか!?」
ベイエルが呆れたようにそう言う。
それに対し、テレピムが渋い顔をしながら、
「ガキなんすよ……比喩とかじゃなくて、レンブラントは実年齢で十二歳らしいんす……」
「「はあっ?!?!」」
それを聞いた全員が一斉に声を上げる。
「待て待て待て待て! 実年齢って前世含めての年齢って事だろ? 何かの間違えだろ!!」
待て待てを連呼するベイエルだが、彼の疑問はもっともだろう。
「あのさ、レンブラントはこっちに生まれて何年だ?」
俺は疑問に思った事をテレピムに聞いた。
「えっと、レンブラントが言って居ることが本当なら、一年ちょっとくらいのはずっす」
????
全員の頭の上にクエスチョンマークが浮かぶ。
「私の記憶が確かなら、計算が合わないわよ? 転生者って、五歳くらい若返るんでしょう?」
「いやそもそも何で誰も身長に突っ込まないんだ? レンブラントは異世界の巨人族か何かなのか?」
モンティーヌとグラーベが疑問を口にすると、ドヤ顔でオリーが一歩踏み出し、
「オホン! 確かに前世で死んだ転生者の肉体が、転生後に五歳ほど若返るというのは周知の事実だが、そこにはある程度の振れ幅があるんだ。そして彼のように前世での年齢が若い場合、前世とほぼ変わらない姿で転生してくることが多いらしいぞ!」
ドヤ顔でウンチクを語った。
しかし、それはもはや転生ではなく転移なのではないだろうか。
「オランダ人って平均身長が世界一高いって聞くが、小学生でもこんなに背が高いのか?」
俺がそんなことを呟くと、ここぞとばかりにオリーが再び身を乗り出す。
「第二次成長期までの身長は各国で大差ないはずだから、レンブラントが嘘をついていないのであれば、単にあれは普通に背が高いだけだろうな」
それを聞いたアキは、「へー」と普通に感心しているが、オリーを調子に乗らせるとろくなことが無いのでやめて欲しい。
「ん? って待てよ? そういやペトリーってレンブラントと付き合ってるとか何とか言ってなかったっけ?」
俺が危ない香りがして聞かなかったことを、ベイエルが堂々と口にした。
「ああ、あれはシッカが勝手に行ってるだけで、実際はどっちか言うと――」
「いいえ、違わないわ」
テレピムが言いかけて、途中でペトリーが割って入る。
ペトリーは涙を袖で拭って鼻をすすりあげると、ゆっくりとギャン泣きしているレンブラントの元に歩いて行く。
「ごめんねレンブラント……私がしっかりあなたを止められていれば、こんなに惨めな思いをさせずに済んだのに」
そう言って背伸びしながらレンブラントを抱きしめる。
「触んじゃねえよぉ……クソババアぁ……」
相変わらずの口の悪さだが、そのペトリーを払いのけるようなことはせず、甘んじて受け入れている。
「なるほどね。こりゃ彼女ってよりお母さんだな」
「だぁれがお母さんだとおおおおお!!!!」
上手く締めようとしていたベイエルが、ペトリーの思わぬブチ切れに合って虚を突かれた思いをしている。
まあ、それでもこれで一件落着だろう。
しかし、俺は帰ったら報告書を書き上げて、その後は猛獣の相手をしなければならない。
「ねえヤマトぉ。アタシも誰かに慰めて欲しいなぁ~」
シッカが俺の右腕に自身の腕を絡めてそう言ってくる。
「悪いけど、今夜は先約があるんだよ……」
惜しい!
非常に惜しいが相手が相手だけに、あちらを優先せざるを負えない。
クソっ!
何て残念なんだ!
俺は苦渋の決断をしたのだが、それを聞いたシッカは引くどころか更に体を寄せてくる。
「アタシは何人でも構わないよ? 何ならこの後抜け出さない? アタシのコレ、すごく形がいいの。見て見たくない?」
そう言って彼女は自分の胸元のシャツをめくり、こちらに見せびらかして来る。
革鎧の間に、谷間がチラリ。
俺は努めて爽やかな笑顔で微笑むと、
「まあ、レディーに誘わせといて断るのも失礼だ――」
ドゴッ!!
後頭部に衝撃が走り、パッシブアーマーが展開される。
「ヤマトぉ! あんた本当にこのっ! クズ男がッ!!」
モンティーヌが杖で俺の後頭部を執拗に殴って来る。
「いいだろ、これは勇者特権だ。別に法律を冒してるわけじゃないんだから」
俺は涼しい顔でそう言うが、
「ちーーがーーうーーだーーろおおおおぉおおおお!!!!」
彼女は殴るのを止めない。
やれやれ、報告書の掲出って明日でも大丈夫かな?
これにて第三章が完結です。
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三章あとがき
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