第54話 嘘
・登場人物・
ヤマト……主人公。勇者のはずだが、禄でもない二つ名を沢山持っている。
ベイエル……A級冒険者。チャラ男っぽい雰囲気だが、かなりの実力者。
オリー……転生者の黒人男。自分が認められないのは世間が悪いと思っている。
レンブラント……転生者。D級パーティーのリーダー。乱暴者。
テレピム……D級パーティーの男スカウト。若干の三下感を感じる。
ペトリー……D級パーティーの女魔法使い。グラマラスなIカップ。
シッカ……D級パーティーの女剣士。細マッチョなEカップ。
トンバオ……B級パーティーの男レンジャー。リーダーだが地味なのが悩み。既婚。
グラーベ……B級パーティーの男修道僧。治癒魔法のスペシャリスト。
モンティーヌ……B級バーティーの女魔導士。術士教官も務める。×イチ。
サルッサ……B級パーティーの女センチネル。元王国軍の兵士。既婚。
アキ……男聖職者で転生者。男喰いとか言われるが、本人にその気はない。
さっきまでの光景は、俺様の知る戦闘とは全然違うものだった。
魔法と魔法、体と体のぶつかり合いこそが戦いだ。
しかし何だこれは?
こんなのか勇者ヤマトの戦い方だというのか?
「分かったヤマトよ。見ての通り我はもう何も出来ぬ。此れから一切の抵抗をしないことを誓おう」
勇者ヤマトに首根っこを掴まれた魔族が、降参するっぽい事を言っている。
「そこで提案なのだが、命だけは助けてくれないだろうか? 勿論、只でとは言わない。我で可能な事であれば何でもしよう。何なら此の体で貴様に奉仕してやっても良い。自分で言うのも何だが、我は中々の美貌だろう? そして、こっちの方も中々具合がいいぞ?」
魔族とセックスをすると、ペニスをもがれると教わった。
しかし、その魔族の言う通り、肌が紫で角があること以外は絶世の美女なのは間違いない。
胸のサイズもペトリー並みだし、腰のくびれも俺様好みだ。
不覚にも、魔族に対して下腹部が反応してしまう。
「最低……魔族ってあんな事言うの?」
ペトリーが嫌悪感にまみれた声で呟く。
最初、俺様に対して言ったのかと思って、少しドキッとした。
「命乞いするなら武器は何でも使うべきだと思うけどね、アタシは」
シッカがそう言うと、ペトリーが「あんたはそうだろうね」と、ため息交じりに返した。
地球で生まれた俺様的に衝撃だったのは、”帝国”では大きすぎる胸は全く好まれないという事だ。
そしてペトリーはこう見えてかなり陰キャなので、今朝方のヤマトへの態度も、誘惑していたわけでは無くシッカの尻軽っぷりを嫌っての事だと思っている。
「それは魅力的な提案だが遠慮しておく。ベイエル? お前はどうする?」
「冗談。魔族と馬鍬うとチンポが腐って落ちちまうからな」
やっぱりその噂は本当なのだろうか。
「黙れ! 我は今、ヤマトと会話しているんだ! 貴様はお呼びで無い!」
俺様は、魔族の脅威を身をもって知った今となっては魔族の事を帝国の一部が言っているような”保護対象”だとは思わない。
しかし、この会話を聞いている限り、完全に駆逐すべき対象でもない気がしている。
魔族は普通に会話が通じるし、馬鹿にしている人間に対してこのような命乞いもする。
やはり聖王国の魔族嫌いは過剰なのではないか?
「じゃあとりあえず、お前に今から質問するから、それに全部答えられれば逃がしてやってもいいぞ」
ヤマトが驚きの発言をする。
それに対し、魔族はニヤリと笑い、
「分かった。我で答えられることで有れば幾らでも答えてやろう」
と言った。
聖王国の戦士は魔族に容赦がなく、その筆頭が勇者達だと聞いていた。
その中でも指折りの魔族嫌いだとされるヤマトが、一度捕らえた魔族をみすみす逃がすなんてことがあるだろうか?
「まず一つ目だ。今日お前がここに来た理由は、本当に俺だけが目的なのか?」
本当にヤマトは魔族へ質問し始めてしまった。
「勿論である。貴様を屠るために我は此の様な下賤な地まで降りて来たのだ」
魔族は自信満々にそう言い切った。
「それはお前の独断か? それとも誰かから命令されたのか?」
「我の独断だ」
この質問に何の意味があるのか。
嘘何てつき放題じゃないか。
「次に二つ目だ。俺はこの前、お前らの大臣の息子らしき人物に会ったのだが、その他に追放された奴の親類はいないのか?」
「居ないぎゃあああああああああ!!!!」
突然魔族が叫び声を上げる。
「嘘を吐いたな。もうお前の話は信用ならん。お前には聖王都に送って実験の材料になって――」
「待て待て待て!! 知らん! 其の様な事、我は知らん!!」
魔族が頭を振り乱しながら必死でそう叫ぶ。
「じゃあなぜ最初からそう言わない?」
「ハァ、ハァ……本当にそう思っていたからだ……其れに、貴様らも知っているだろう。我らは魔王様の加護により、自分達が不利に成る様な事は言えんのだ」
確か、これは”魔王の加護”と呼ばれるもので、魔王から膨大な”バフ”を受ける代わり、それを裏切ることの一切を禁じられているらしい。
「では三つ目だ。そこの聖職者達を襲った経緯を言え」
魔族の噓の件はそれ以上追及せず、ヤマトは次の質問に移る。
「其れは、貴様を探す途中に偶然奴らに接敵したため、止む終えず突発的に戦闘を行ったまでだ」
「嘘ですよ。我々は交渉を試みましたし、そもそも僕達があの場所に出向いたのを明らかに待ち伏せしてました」
「うびびびびびびいびびびびび!!!!」
聖職者の女の言葉を聞いたヤマトが、また魔族に対して何かをやったようだった。
「あばばば違う! ちち違う! 待ち伏せなどして居ない! ハァ……ハァ……確かに、確かに話を聞かなかったのは悪かった。しかし、此方にも事情があるのだ……」
「その事情とは?」
「そ、其れは…………うぎゃあああああああああ!!!!」
言い淀んだ魔族に対し、容赦なく制裁が下される。
「持ち帰って捕虜と食料にしようとした!! 此処までだ! 此れ以上は言えん!!」
とんでもない嘘つきだ。
食料などとは、”人魔協定”とかいうのはどこへ行った?
帝国では、逆に聖王国側が魔族の領域を侵犯していると言っていたぞ?
「じゃあやはり俺が目的だったといったのも嘘じゃないか?」
「いや其れは間違いない! 只、旨そうな猿が釣れたのであっ……」
口をすべらせてしまった魔族が固まっている。
「すみませんでした」
そして普通に謝った。
「まあ、許さないんだけどね?」
ヤマトがそう一言言うと、魔族の体が一度、ビクンと跳ねる。
最初は彼の一言に驚いただけなのかと思ったが、それにしてはどうも様子がおかしい。
「うがっ……がががっ……うがっ……」
「やっぱり、最上級の貴族でも、魔族とはまともに会話何て出来ないな」
ヤバそうな呻き声を上げている魔族を見ながら、ヤマトが呟く。
「そんなの最初から分かってるだろ? で、結局それ、やるの?」
ベイエルがヤマトに質問しているが、それとは何の事だろうか?




