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第52話 炎の鳥

・登場人物・

ヤマト……主人公。勇者のはずだが、禄でもない二つ名を沢山持っている。

ベイエル……A級冒険者。チャラ男っぽい雰囲気だが、かなりの実力者。

オリー……転生者の黒人男。自分が認められないのは世間が悪いと思っている。

レンブラント……転生者。D級パーティーのリーダー。乱暴者。

テレピム……D級パーティーの男スカウト。若干の三下感を感じる。

ペトリー……D級パーティーの女魔法使い。グラマラスなIカップ。

シッカ……D級パーティーの女剣士。細マッチョなEカップ。

トンバオ……B級パーティーの男レンジャー。リーダーだが地味なのが悩み。既婚。

グラーベ……B級パーティーの男修道僧。治癒魔法のスペシャリスト。

モンティーヌ……B級バーティーの女魔導士。術士教官も務める。×イチ。

サルッサ……B級パーティーの女センチネル。元王国軍の兵士。既婚。

アキ……男聖職者で転生者。男喰いとか言われるが、本人にその気はない。

 さて、ここで厄介なのは後ろの連中を集中的に狙われる事だろうか。


 こちらにはヤマトがいるので、まず負ける事は無いだろうが、相手が頭を使って来たなら、後ろにいる何人かが犠牲にならないとも限らない。


 ならば、俺はその可能性を少しでも減らすことが仕事だろう。


 まあ、後ろにはアキとグラーベが居るわけだから、あいつらだけならそんな心配は少ないと思うのだが、問題はD級のパーティーのやつらである。


 レンブラントは流石にあれ以上前に出て来る様子は無いようだが、何を考えているかは分からない。


 お願いだから大人しくしておいて欲しい。


「魔族……あれが魔族か」


 俺の願いを裏切るように、レンブラントの声が聞こえて来た。


「丁度いい。俺様があいつらを一人で倒してやる。お前らは手出しをするな」


 そう言いながらこちらへ歩いて来る彼の足音がする。

 内心、吹っ飛ばしてでも止めてやりたかったが、ヤマトがコイツを残すと言ったのには何か考えがあっての事なのだろう。


「やってみりゃいいんじゃね。でも俺はお前が手を出した瞬間、お前を見捨てるからな? 悪いがバカ一人のために他を危険にさらすことは出来ねえよ」


 一応、忠告だけはしておいた。


 魔族とレンブラントの力量差は火を見るよりも明らかだ。

 俺に穏便にこれを止める手立てはないので、後はヤマトがコイツをどうするかである。


「俺様は最強なんだ。ヤマトだろうが魔族だろうが、俺様の足元にも及ばない」


 それは虚勢なのか、もし本心で言っているなら本当に救いようのない愚か者かもしれない。


「面白い事を言うな貴様。おいアッカーネ。余興にあいつと遊んでやれ」


 アッカーネと呼ばれた魔族が、微笑みながら一歩前に出る。


「何だ!? やるのかああん!?」


 レンブラントが叫びながら勢いよく剣を抜く。

 その様子は、浮足立っている様に見えた。


「『”ブレイズダッシャー』!!」


 ベイエルが放ったそれは、勢いよく魔族の元へと飛んでいく。

 そして、間もなく勢いを失って、綿毛のように呆気なく散ってしまった。


「……えっ?」


 何が起こったのか分からず、剣で魔族を指したまま硬直するレンブラント。


「は? なんだそれは? まさか貴様それは本気でやっているのか?」


 配下の魔族が呆れた声でそう言う。


「ま、まだだ! 『”ファイヤーウォール”』!!」


 魔族と俺達を分断する炎の壁が展開される。

 まさかの”ファイヤーウォール”()()()である。


「『”ブレイズダッシャー”!!』


 再び彼の火球が飛んでいく。


 それは先ほどレンブラントが自分で敷いたファイヤーウォールを貫きながら、先の魔族に向かって行くが、やはりそいつらには届かず、ファイヤーウォールと共に霧散して消えてしまう。


「ははははッ! これは酷い。”|火の壁(ベギ・フィオルダ)”の横張りなんて見たのは、下級共の幼年訓練以来だぞ!」


 そうやって魔族にも笑われてしまう始末である。


 確かに、こちらの姿を隠しつつ相手を攻撃する今のような戦法は教本の中では存在するのだが、同時にこちら側からも相手の姿が見えなくなってしまうため、実戦で使うことは余程特殊な状態でもない限りありえない。


「それにしても、灰塵の王ロードオブヴァーミリオンたるシュー様の配下である我々に対して、火属性の魔法とは舐められたものだな」


 大陸最北端を占拠する魔王は、炎の魔法を得意としている。

 極寒の大地でありながら、その支配領域はその加護により温暖であり、それが世界の気候にも少なくない影響を与えていると言われている。


「クソッ! ニヤニヤと笑いやがって!! こっちの魔力は一千万あるんだ!! 何度だってぶちこんでやる!!」


 そう叫びながら剣を振り上げるレンブラント。


「愚かな猿共よ。本物の”炎”と言うものを見せてやろう!」


 魔族もそう高らかに言い放つと、右手を天に向けて掲げる。


「『”ブレイズダッシャー”』!!」


「『”炎の鳥(パタリィ・フィオルダ)”』」


 魔族の手から大量の火の粉が飛び立ち、星屑のごとく大地を駆け巡る。


 それはいくつもの町や冒険者パーティーを壊滅させてきた、火属性の広域大魔法である。


 レブラントの魔法など、無かったかのようにその炎に巻かれ、その炎の鳥達が彼と俺達に降りかかって来る。


「ぐわぁあ!! 熱いッ!! うわああああああ!!」


 必死に防御魔法を展開するレンブラントだが、その熱量は凄まじく、蒸し焼きになりそうになった男が叫び声を上げる。


 その炎は俺達にも襲い掛かり、俺は”耐熱円蓋(クールドーム)”の魔法を展開してそれをやり過ごす。

 アキ達も同様に防御魔法を展開して耐えているようだった。


 そして、俺は有言実行でレンブラントに対しては何のサポートも行わなかった。


「ああッ!! ああああああ!! 助けっ!! 助けてくれええぇえ!!」


 遂に助けを求めたレンブラントに対し、ヤマトが彼に対して防御魔法を展開する。

 そしてそれを隙と取ったのか、次の瞬間、ルジューと名乗った魔族がヤマトを指差して魔法を放った。


「『”全てを消し飛ばす砲撃バズ・ジュリ・ヴォールラ”』」


 強烈な閃光がヤマトを包み、漏れ出た衝撃が俺達を襲う。

 俺はめいいっぱい障壁を展開して、背後の連中をその波動から保護する。


 しかし、とんでもない威力だ。

 大丈夫だと分かっていても、ヤマトの安否がどうしても気になってしまう。


 バシンという轟音と共に、魔族の魔法と土埃がかき消され、中からヤマトの姿が現れる。


「流石は人間の愚者! そうこなくては面白くない!」


 ズバババンッ!!


 続けて炸裂音が周囲に響く。


「……は?」


 左右の二人の魔族の頭部が吹き飛び、真ん中の魔族も地面を抉りながら向こうへ吹っ飛んでいった。

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