第51話 魔貴族2
・登場人物・
ヤマト……主人公。勇者のはずだが、禄でもない二つ名を沢山持っている。
ベイエル……A級冒険者。チャラ男っぽい雰囲気だが、かなりの実力者。
オリー……転生者の黒人男。自分が認められないのは世間が悪いと思っている。
レンブラント……転生者。D級パーティーのリーダー。乱暴者。
テレピム……D級パーティーの男スカウト。若干の三下感を感じる。
ペトリー……D級パーティーの女魔法使い。グラマラスなIカップ。
シッカ……D級パーティーの女剣士。細マッチョなEカップ。
トンバオ……B級パーティーの男レンジャー。リーダーだが地味なのが悩み。既婚。
グラーベ……B級パーティーの男修道僧。治癒魔法のスペシャリスト。
モンティーヌ……B級バーティーの女魔導士。術士教官も務める。×イチ。
サルッサ……B級パーティーの女センチネル。元王国軍の兵士。既婚。
アキ……男聖職者で転生者。男喰いとか言われるが、本人にその気はない。
眼前に現れた魔族三体は、笑うでもなく怒こるでもなく、ただただ無表情で俺達の顔を眺めている。
隣のベイエルも彼らに怯むことなく、手を腰に当てて自信の笑みを崩さない。
魔族の装束を見るに、恐らく三体とも中位以上の魔族であることが読み取れる。
そして真ん中の女のそれは、明らかに他の二人とは違う尋常ではないオーラを放っていた。
「愚かな猿共よ、お前らに名乗る猶予を与えてやろう」
唐突に真ん中のその魔族が口を開いたかと思うと、そんなことを言い出した。
「魔貴族の常套句だな。この様子だと野良って事はまあ無いだろうな」
ベイエルが無視して俺に話しかけてくる。
しかし、その目は魔族の方を見たままだった。
「どうせこの後名乗って来るから、何者か分かるだろう」
そう、何故か魔族はやたら自己紹介をしたがるのだ。
実は戦国武将が転生した慣れ果てとかではないのだろうかと俺は疑っている。
「言葉も話せぬのか、此の愚鈍な猿共は。良かろう、成らば我から名乗ってやるとしよう」
ほーら来たぞ。
「我が名は”ルジュー”。灰塵の王”シュー”様が配下、巨砲のルジュー。位は叡爵である」
ポーズを決めながら大げさに名乗りを上げる魔族。
魔族の爵位は上から、至・叡・主・大。
この四つが上級魔族と呼ばれる魔貴族の四役である。
この下にもいくつか階級があるが、今回のこの女は上から二番目の、会社で言うと部長ぐらいという事になる。
そして、それにB級の冒険者が接敵して生きていたことは本来なら奇跡に近いのだが、トンバオとアキのパーティーであれば、さもありなんという所だろう。
「我が名は”アッカーネ”。巨砲のルージュ様が配下。位は大である」
「同じく我が名は”コチニル”。巨砲のルージュ様が配下。位は大である」
続けてサイドの二人も名乗りを上げる。
全員女性の魔族パーティーとは珍しい。
「お前ら何をしに来た? ここがどこか分かってんだろ? 完全な協定違反だぞ?」
ベイエルが魔族語で単刀直入に質問する。
「何だ、話せるのでは無いか。然し、名乗りもせずに我に口を利くとは、やはり猿は猿だな。其の様な奴に話す事は何も無い」
やはりこちらも名乗らなければ話にならない様子である。
ベイエルは「ハァ……」と小さくため息をつき、
「俺の名はベイエル。刹那のベイエルだ。冒険者ランクはA級」
相手に合わせて名乗りを上げた。
魔族はそれを満足そうに聞いて、続いて俺に目を向ける。
やっぱり俺も名乗らなければならない模様。
「俺の名はヤマト。終焉の勇者ヤマトだ。冒険者ランクはS級」
俺がそう言うと、魔族は驚いたような表情になり、そして直ぐに満面の笑みを称える。
絵に描いたような邪悪な笑みだった。
「此れは僥倖! まさかこんなに早く貴様に会えるとはな!」
反応的に、どうやらコイツの目的は俺だったようだ。
だから上位魔族を二人も引き連れてきている訳か。
「正式な手続きを踏んでくれたならいくらでも会ってやるのに、今お前のやっている事は人間界への侵犯だぞ?」
言っても無駄だと思うが、一応言っておかなければならないので、俺はそうやってを言っておく。
「どの口が言って居る! 貴様が我々にした事を、よもや忘れたとは言わせんぞ!」
やっぱりあの事を持ち出して来るか。
「何度も言っているが、先に手を出したのはそちらだ。あれはこちらの自己防衛だ」
俺のこの言葉を、女は鼻で笑い飛ばす。
「ハッ! この世の何処に自己防衛で砦一つを消し飛ばす奴がいる。其れに大臣をよくも再起不能にしてくれたじゃないか。まあ、其れに関しては上に空きが出来たから感謝して居ない訳でも無いがな」
再起不能という事は、アイツまだ生きているのか。
しぶといやつだな。
「さて”愚者ヤマト”よ。貴様は余裕の顔をして居るが、此の我はシュー様の配下でも有数の実力者である。至爵の”カマイン大臣”を倒したからと言って、良い気に成るんじゃ無いぞ?」
そんなこと自分で言う事じゃないだろうと思うのだが、魔族と言うのはそう言う生き物なのだ。
そして、自分が一番とはいわず有数の実力者と言っているあたりも突っ込みポイントである。
「フンッ。そうやって上位の配下を連れて来てるあたり。本当はヤマトにビビってるんだろ?」
ベイエルが魔族を挑発する言葉を口にする。
まあ、ここまで堂々と攻めてくるという事は、出会った人間すべて皆殺しにするつもりだったのだろう。
流石に単騎で上位冒険者パーティを蹂躙できるほど奢ってはいないはずだ。
「ほざけ猿! その邪教徒の姿を見て見ろ、我等に手も足も出ず、ベソをかいてのたうち回っていたではないか」
邪教徒とは魔族の言葉で人間の聖職者を指している。
「……ふふ、僕程度の聖職者を殺しきれないのにヤマトさんをどうにかできると思っているとは、なかなかおめでたい頭をお持ちですね?」
アキが強がりを言っているが、実際彼はよく頑張ってくれた。
むしろアキちゃんでなければ、グラーベのパーティーは今頃灰になって消えていたかもしれない。
「アキちゃんは回復次第結界を全面展開で。グラーベもそれをサポートしてやってくれ。他の連中は一塊になって絶対にその場を動かないように」
俺は出来るだけ落ち着いた口調で、そう指示を出す。
返事は無いが、彼等なら大丈夫だろう。
「無駄な足掻きを! 貴様等まとめて全員消し炭にしてくれるわ!」




