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第49話 荷物持ち

・登場人物・

ヤマト……主人公。勇者のはずだが、禄でもない二つ名を沢山持っている。

ベイエル……冒険者。チャラ男っぽい雰囲気。

オリー……転生者の黒人男。本名はメープル・オリヴァー・ホートン。

レンブラント……転生者。D級パーティーのリーダー。乱暴者。

テレピム……D級パーティーの男スカウト。若干の三下感を感じる。

ペトリー……D級パーティーの女魔法使い。グラマラスなIカップ。

シッカ……D級パーティーの女剣士。細マッチョなEカップ。

 背後に視線を感じる。


 全くヤマトには困ったものだ。

 あそこでオレにレンブラントと戦えとか言い出すんではないかとヒヤヒヤしたが、流石にそんな事態にはならなかった。

 しかしその後、彼に完全にロックオンされてしまったようで、オレはレンブラントの熱い眼差しを背中に浴びることになってしまったのである。


 オレ達はヤマトとベイエルを先頭に、道を足早に進んでいる。

 開けた草原には徐々に木々が目立ち始め、そろそろ目的地が近いことを物語ってた。


 とりあえず、今の所ヤマトが何か仕掛けようとする気配はない。


「お、この辺結構生えているな」


 ヤマトが疎林の間に生えている小さな草を指して言う。

 あたりの淡い色の草と比べ、一段と深い青色をしており、それはかなり浮いて見える。


 ヤマトはそれを一つ摘み取ると、


「これをしこたま集めてくれ。多分間違える事は無いと思うけど、分からなかったら俺達の誰かに聞くように。そしてある程度集め終えたらあの黒人にどんどん渡してほしい」


 この草はこの地方の植生だと数少ないのマジックポーションの材料になるのだが、今年は雨が少ないためかなり量が不足しているらしい。

 先の戦争の影響で東からのポーションの供給が滞っていたため、その補填として王国北部でも増産されていたのだが、未だにその輸入量は安定せず、この薬草にもそこそこ需要があるのだ。


「ポーションの材料って、なんか全部毒々しい色してるよねー」


 シッカがその草を拾い上げてまじまじと観察している。


「”魔帯色(またいしょく)”って言って、実際の色では無くて私達の”魂”が脳に働きかけてそう見せているのよ。魔族の瘴気と一緒」


 ペトリーが黙々と薬草を積み上げながら彼女に説明した。

 先ほどは小競り合いをしていたが、別に仲が悪いという訳ではないのだろうか。


 ヤマトとベイエルはずんずんと林の奥に進んで行く。

 そしてオレの後ろでは、


「お前は摘まないのかレンブラント?」


 仁王立ちしている男に、俺は声をかける。


「……そう言うお前はどうなんだ?」


 レンブラントから機嫌が悪そうな回答が返ってきた。


「オレの役目は”荷物持ち(ポーター)”だからな。それに今回の警戒役はオレが兼任している」


 ポーターの本文はその名の通り荷物を持つこと。

 そしてそれを守ることにある。


 なので、基本的に荷物持ちはクエストの内容には関わらず、常に荷物に集中していなければならない。

 まあそれは建前で、オレくらいになると多少戦闘をしようが全然大丈夫なのだが、ヤマトがうるさいので手を出さないようにしているだけなのだ。


「あなたの背負ってるバックは”ポーターズバック”よね? ここの荷物持ちはみんなそれを持ってるの?」


 ペトリーがオレのバックパックを見ながらそう質問をしてきた。


「まあほとんど必須だな。ここの連中は一度にとんでもない量の素材を採集するから、これが無きゃ始まらない」


 このバックは魔法素材で出来た”マジックアイテム”であり、中の空間を拡張する術式が埋め込まれている。

 そしてこれを作るために必要な素材に、ボーパルバニー等の空間系で希少性の高い魔石を必要とするため、とんでもなく高価なのだ。

 それに、常に魔力を流して空間拡張を維持しておかなければならず、野宿ともなると就寝中もそれを続けなければならないので、扱いの難易度が高い。

 よく荷物持ちをバカにするやつがいるが、それは低ランクの冒険者の話で、オレの様に上位の荷物持ちになると、それは引く手数多なのである。

 今朝のカチューシャのクエストも、野宿込みでかなり高額な報酬を提示されたので同行したのだが、大変な目に合ってしまった。


 バサバサバサバサ!!


「うおぉ!?」


 突然林の奥から大量の薬草の塊が飛んできて、素っ頓狂な声を上げてしまった。


「バックパックを開けろオリー。ただでさえ役に立たねーんだから、自分の役目くらい果たしてくれ」


 ヤマトがこちらに歩きながらそう伝えてくる。

 オレは大急ぎでバックパックを脱ぐと、その口を開ける。

 その瞬間、薬草の塊がスルスルとそこに吸い込まれていった。


「うそでしょ!? この短時間で一体どうやってこんな大量の薬草を取ったんすか!?」


 驚いたテレピムが駆け寄ってきて、バックの中を覗き込む。


「こんなの魔法でちょちょいのちょいだ」


 今度はベイエルがそう言いながらこちらに歩いて来ていた。

 またもや飛んできた薬草の塊に、再びテレピムが驚いて後ずさる。


「ちょっとまって!? 魔法の薬草って魔力の干渉を避けるために手摘みが基本でしょう? 大丈夫なの??」


 ペトリーの言うそれはもっともなもので、この集め方は一般の冒険者の常識からは完全に外れている。

 しかし、ここにいるのはそんな常識が通用しない人間ばかりである。


「これで少しは分かっただろ。採集依頼一つとってもこれだけレベルが違うんだ。お前らにこの地域はまだ早い。大人しく国へ帰るんだな」


 ヤマトがソニックブームを放ちそうなセリフを放つ。

 その言葉で、先ほどまで良くなって来ていた雰囲気が、一気に暗鬱としたものに変わってしまった。


「……みとめねぇ」


 背後からそんな声が聞こえてくる。


「俺様はこんなのみとめねぇ!!」


 そうやってレンブラントがまた癇癪を起し始めた。


「こんなことしに俺はこんな北まで来たんじゃねぇ!! 魔物だ!! いや、”魔族”と戦わせろ!! そうすれば俺様の力が分かるはずだ!!」


 そうやって猛り狂うレンブラント、それに対して半ば諦め気味に周りが視線を寄せている。


「じゃあお望み通り戦ってもらうとしようか、ヤマト、お前あれを――」


 ベイエルが何かを言いかけたと思うと、突然ハッとして視線を遠くの丘へと移す。


「ヤマト? お前もう()()やったのか?」


 彼は言いかけた言葉を途中で切って、ヤマトにそう尋ねた」


「いや、これは俺じゃない」


 気付けばヤマトも同じ方向を見ている。

 そっちに何かあるのだろうか。


 オレはその方向に対して、展開していた魔法の索敵範囲を絞り込もうとする。


「おいハゲ。お前は余計な事をするな」


 いや、ちょっと酷くないですかヤマトさん?


 しかし、彼らが思ったより深刻な顔をしているので、オレもそれっぽく遠くを見ながら口をつぐんだ。


「おい! なんだよ貴様ら!! 一体何があるんだよ!!」


「少し黙れレンブラント。お前の望みが叶うかもしれないぞ」


 ヤマトが冷たさと悪戯心の混じった声でそう言った。

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