第47話 薬草採取
・登場人物・
ヤマト……主人公。勇者のはずだが、禄でもない二つ名を沢山持っている。
ベイエル……冒険者。チャラ男っぽい雰囲気。
オリー……転生者の黒人男。本名はメープル・オリヴァー・ホートン。
レンブラント……転生者。D級パーティーのリーダー。
クエストのランクを一つ下げろと言う冒険者は実際それなりにいるし、交渉次第でそれが通ることは稀にある事例だ。
しかし、二つとなるとこれは初めてのパターンだった。
結局俺達はC級のクエストを受ける事になったのだが、この北部でC級の依頼など、たかが知れている。
つまり、本当にここに来たばかりの冒険者が腕ならしで受けるような、お使いレベルの物しかないのだ。
そのせいで、先ほどからレンブラントは大いに気分を害しており、ずっとため息しか出していない。
あの後、またゴネ始めたこいつを引っ張って来るのに、またえらい苦労させられてしまった。
「薬草採取なんて、Eランクのやる仕事っすよ……」
ボヤいているこのスカウト風の男。
こいつの名は”テレピム”というらしい。
すらっとひょろ長く、いかにもスカウトらしい容姿をしている。
「はぁ……なんで私達がこんな事しなきゃいけないのよ」
このイライラしている女魔法使いはペトリー。
身長は高めで、とてもグラマラスな体型だ。
パーティーの中では一番年上だろうか。
「アタシは生のヤマトが見れて、ちょっと嬉しいかもー」
この軽そうな剣士の女は、確か”シッカ”と言っていた。
こちらは背は低めだが、引き締まった筋肉質の体をしている。
「キミ等三人は転生者じゃないんだろ? だったらなおさらだって。オレが手取り足取り、何なら腰を取り教えてやるからさ! なーんつって!」
先ほどからベイエルは女の子二人に絡んでいるが、今の所軽くあしらわれているようだ。
そして……。
「いやー! 普通の採集任務何て何年ぶりだろうなー! 初心を思い出すなー!」
一人テンションの高い黒人が一人。
あれほど付いてくるなと言ったのに、強引について来てしまった。
まあ、所詮Cランクの依頼なので本気では止めなかったのだが、正直既にウザいので少し後悔している。
さてどうしたものか。
試験の時のように幻影魔法で仮想敵を出してもいいのだが、試験と言う名目が無いので故意に仲間を攻撃するようなことは出来るだけ避けたい。
だからと言って、本当に薬草を採取して終わりだと本当に退屈なだけなので、彼らを分からせることが出来ないのだ。
「ねえねえ、ここって高ランクの冒険者しかいないんでしょ? こういうクエストって普段誰がやってんの?」
剣士のシッカがベイエルではなく、俺の元に来て話かけてくる。
「君達みたいな初心者が練習で受けるか、他の依頼のついでに受けるかって感じだね」
相手に悪意が無さそうなので、自然と俺の口調も柔らかくなる。
「ああそっか、Bランク以上なら複数のクエストが受けれるのかー。いいなー」
少し呑気だが、彼女はこのパーティーの仲だと一番話が通じそうではある。
「ちょっとシッカ! あんたまさか勇者ヤマトを狙ってんじゃないでしょうね? この尻軽女!」
そう言いながらペトリーもこちらへ駆けてくる。
大きな胸がばいんばいんなっている。
「ねえヤマト、この女はやめた方がいいわよ? コイツときたら男をとっかえひっかえして、それで毎回パーティーに居づらくなってすぐ逃げだすんだから!」
隣に来るなりそんなことを言い出すペトリーに対し、
「そんなんじゃないよー。ペトリーはすぐそう言う事にしたがるんだから。あなたは自分の男がいるんだから、そっちにかまってればいいじゃない」
シッカに言い返されたペトリーがムッとする。
「あんた毎回そう言うけど、前の町でだって酒場で男引っかけて――」
どうも、このパーティーの女子は上手くいっていなそうだ。
そして、シッカの言うペトリーの男とはスカウトのテレピムとは思えないので、おそらくレンブラントの事だろうと思う。
「ねえヤマト! あなたはこんな筋肉女よりももっと……えっ、何?」
俺は白熱しているペトリーの肩に、おもむろに手を乗せる。
「え? 何してるのヤマト?」
シッカも驚いて足を止める。
ペトリーも足を止めるが、そこまで嫌がっている素振りは無い。
「魔力10万前後で、火属性と土の適性が高い。出力はそこそこだけど、速射と精密性に若干の不安ありって感じかな?」
そして胸はIカップ。
「ええっ! 当たってる!」
シッカが再度驚いて見せ、ペトリーの方は目をぱちくりさせている。
「ええっ! 勇者ってそんなこと出来るんすか!?」
テレピムもこちらに駆けよって来る。
「アタシにもやって!」
シッカがそう言って、俺の横に背を向けて立つ。
「あーあーいいですねー勇者ヤマトは。女の子にモテモテで」
ベイエルが面白くなさそうにこちらに振り向きながらそう漏らす。
そして、もう一人面白くなさそうな男が一人……。
俺はそれに気づいているが、あえて無視をしている。
「シッカちゃんは、魔力が2万くらいで、風魔法適性が高いね」
一応、転生者のパーティーだけあって、D級の魔力の水準からするとかなり高めである。
しかし正直、ここでやっていくにはいささか心もとない数字だ。
胸はEカップで、意外と大き目だった。
「おい何やってんだ! とっとと行くぞ!」
遂に感情を抑えられなくなったレンブラントがズカズカとこちらに歩いて来て、シッカに乗せた俺の手を乱暴に払う。
「あれ? レンブラント妬いてる――グェッ!?」
レンブラントがシッカにかなり強めの蹴りを入れ、彼女の”パッシブアーマー”が発動する。
シッカがよろめいて、蹴られたお腹を押さえ、それを俺が後ろから支えた。
「ちょっ! レンブラントやりすぎ! シッカ、あんた大丈夫?」
さすがのペトリーも驚いて、シッカを気遣う。
それに対しシッカは「ちょっと驚いただけで全然大丈夫」と答えていた。
軽くちょっかいを出して彼の素の性格を見ようと思っていたのだが、予想より遥かに粗暴な感じに見える。
「なあヤマト? やっぱり最近の転生者ってヤバイやつ多くないか?」
ベイエルが小声でそう言う通り、これは最近大陸中で問題になっているらしい。
俺自身がそこまで長い事この世界に居るわけでは無いし、当初は近頃の若いやつは的な物だと思っていたのだが、関係者から聞く限り、どうやらそういう訳ではない様子なのだ。
そしてそれは、俺が教育と試験官を担当するようになって肌で直に感じていることでもある。
「全くだ! 本当に最近の転生者はどうなっているんだ! 漢は常にレディーファーストで無ければならんぞ!」
誰かが何か言っているが、それを聞こえていないとでもいう様に、レンブラントはズンズンと道を進んで行った。




