第46話 ソードマスター・ヤマト
「ああ……間違いない。その顔はあの”ソードマスター・ヤマト”の顔だ!」
男は大げさに手を広げ、仰け反りながら吠えた。
「東洋人は年を取らないと言うが、あの動画の時の顔のままだ。いや、さすがにちょっと老けたか? それにしても、本当に転生して来てたとはな」
一人でベラベラとじゃべり続けるレンブラント。
「流石のネームバリューですねぇーヤマトさーん!」
そしてさっきまで捨てられた子犬みたいに縮こまってたオリーが、なぜか俺を煽って来る。
「俺はポテトだ」
俺はいたって真顔で答えるが、それに対してベイエルが半笑いで、
「お前それ、いっつも言ってるけど、どういうボケなん?」
そう言って渋い表情を作っている。
こういう時にアメリアがいれば面白い反応をしてくれるのだが。
「レンブラントさん! ヤマトってあの”凌辱の勇者ヤマト”っすか!? 魔族の女を見つけると××せずにはいられないという!?」
スカウト風の男がなんかとんでもないことを言っている。
「ヤマトお前、また二つ名が増えたのか?」
ベイエルはそう言って相変わらずニヤニヤ笑っているが、流石にその二つ名は看過できない。
俺はそれらの言葉を鼻で笑い飛ばして、ヤレヤレと口にしながら首を振る。
「ブラザー、お前はもしかしなくても帝国から来たのかい? だったらそこで言われている事は全部忘れる事だな。確かに俺は魔族に容赦無いが、極めて紳士的な人間だ?」
そう言った後に、俺は言われたことを否定しきれていない事に気づくが、ここで必死に否定するのもなんか違うので中二病っぽいポーズを取って誤魔化した。
「さて、その凌辱のヤマトさんが、俺にどんなレクチャーをしてくれるって?」
そんな考えをよそに、レンブラントが意地の悪そうな笑みで俺に問いかける。
「時にレンブラント君。君はどこから来たんだ?」
俺は極めて紳士的な口調で質問を返す。
「それはどっちの意味だ? 地球と言う意味ではオランダだし、この世界でと言う意味なら帝都だが?」
やはり帝国だったようだ。
そしてオランダ人と言われてなるほどと思う。
レンブラントの身長は190ある俺と同じくらいだろう。
また、年齢は恐らく十代後半だろうか。
肌は白く、深い茶髪の髪をバッチリ決めいる。
改めて見ても、冒険者にはとうてい思えない装いだ。
「そうかそうか、ちなみに君は現世でビデオゲームはしてたかい?」
「? 人並みにはしてたが、それが何だ?」
レンブラントは、一体何を言い出すんだという目を俺に向けてくる。
「いいかい? RPGで言うなら、君の出身地である帝都は、言わば”始まりの町”だ。そして聖王都がその中間地点だとすると、ここは”ラストダンジョン前の最後の町”ということになる」
俺のその話に、何かを察したように眉を上げるレンブラント。
「分かるだろ? 君らがどういう工程を踏んでここまで来たかは分からないけど、君らは本来こなさなければならないイベントをすっ飛ばしているんだ。さっきも言った通り、冒険者の依頼なんて腐るほどあるんだ、とりあえずまずはB級を取る所からはじめないか?」
ここまで素直に俺の話を聞いていたレンブラントだが、聞き終わった直後、明らかに俺をバカにしているような顔を向けてくる。
「まさかあんたがそんな事を言うなんてな。何だったか……そう、あれだ。これは”強くてニューゲーム”だ。分かるだろ? あんな試験を受けるなんて時間の無駄だ。それに、あんたは知らないかもしれないが、今は自由度の高いオープンワールドのゲームが流行ってるんだよ」
確かにアメリアがそう言うゲームが流行ってるみたいなこと言っていた気がする。
しかし、彼は根本的な事を誤解している。
「まあ言いたいことは分かる。だけど、君は”この世界と言うゲーム”を極めたわけじゃないだろう? 俺から見たら、通常プレイに飽きた奴がやる縛りプレイを、初見でいきなりやろうとしている様に見えるんだよ」
俺がそう言い返すと、レンブラントは少しむっとした表情をする。
「じゃあお前は俺様の何を知っている? 何度も言わせるな、俺の力は言わば”チート”だチート。神に授けられたこの強大な力を振るうには、帝国はぬる過ぎるんだ」
転生者に限った話では無く、帝国から流れてくる冒険者の殆どがコイツと似たような理由で聖王国に来ており、それは先日のブラシュのパーティーですら同様だ。
ただ、あの真摯な態度がレアケースであるというだけである。
「だったら、その力を俺に見せてくれよ。そして証明してくれ」
俺はここで締めの言葉を放つ。
この流れで俺のこの誘いを断るバカはおらんだろう。
「……いいだろう」
「決まりだな」
とはいえ俺は本来、正規の仕事でもないのに他の冒険者の面倒を見る余裕は無いのだが、だからと言って他人に投げるほど無責任でもない。
今回は俺が貧乏くじを引いただけで、初心者を正しい道に導くことは、上級冒険者全員の務めだと思っている。
「ヤマト! オレも連れて行ってくれー!」
叫ぶオリーを無視して、俺はカウンターに向かう。
彼のパーティーの連中は、不安からなのか少しソワソワしている様に見える。
カウンターの前に立つと、髪を直したアノンが俺を出迎える。
まだ少し髪が乱れているが、いつもと変わらない凛々しい表情をしている。
とりあえずBランクのクエストを受けるとしよう。
俺とならCランクの彼らでも依頼を受けれるはずだ。
「アノン、Bランクのクエストで一番難易度が高いのは何だ? 金額が割に合わなくてもいいから」
そう問いかけるが、その彼女の反応は俺が思ったのとは別の物だった。
「あの、それなんですが……」
アノンは非常に言いずらそうな様子で後を続ける。
「そちらのパーティーの方々は、Dランクなんです」




