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第19話 エピローグ (一章)

・登場人物・

ヤマト……主人公、勇者。魔族相手には容赦ない。

フォルカー……S級冒険者。魔動車の設計者。ボケ防止で冒険者をやっている。

ブラシュ……男剣士。C級冒険者のリーダー。お調子者。

パァス……女スカウト。ムードメイカーでヤマトファンガール。

パレッタ……女魔法使い。学院主席。真面目な性格。

クェント……男センチネル。地味。あまりしゃべらない。

アキ……聖職者。女に見える? だが男だ。

 疲れた……。


 いや、体力的には全然大丈夫なんだけど、怒涛の初体験の連続にオレの精神が持たない……。


「ボウズ、大丈夫か?」


 ずっと無言のオレを心配してくれたのか、フォルカーさんが声をかけてくれた。


「ははは。ちょっとブルっちゃて。まさかあんなサプライズがあるとは」


 出来るだけ明るい声をこころがけたつもりだけど、多分フォルカーさんには強がりにしか聞こえないだろう。


「あいつ、ヤマトが言った事は本当だよ。ワシから見ても、お前らはなかなかスジがいい。ヤマトは見込みが無いやつに自分の時間を割いてまでサービスしたりしないからな」


「サービスって……。確かに、一生見れない物を見たのかもしれませんが……」


 百聞は一見に如かずとはよく言ったものだ。


 オレは自分を、平和ボケした帝国民とは違うと思っていた。

 しかし、実際目の当たりにしたそれは、文字の中とは違い想像の遥か上をいってて、恐怖を感じる暇すらなく、まるで客席から闘技場の試合を見ているような感覚だった。


 帰路に着いた今になって現実に引き戻され、魔族の瘴気とは違う種類の胸のざわめきに苛まれている。


「残酷だと思ったか?」


 フォルカーさんの問いかけに、


「えっと、どうなんでしょうか……」


 オレは思ったことを口に出せなかった。


 おそらく、ヤマトさんには何かしらの意図があったんだと思う。

 しかし、なにもあそこまでやる必要があったのだろうか?

 オレはどうしてもそんなことを考えてしまう。


「ワシもな、あれは流石にやりすぎだと思うんだ」


 あれ? 意外な言葉だった。


「でもな? あいつのあれも理解はできるんだよ。ずっと研究漬けだったワシと違って、あいつはこの世界に来てから、最前線で魔族と戦い続けて来たんだ」


 所謂、”転生者”と呼ばれる異世界人には、この世界に生まれ落ちた時から魔族と戦う定めにと聞く。

 それは、()()で高水準の生活が保障されている彼らの義務であり、その代償なのだそうだ。


 こんなことを言うフォルカーさんも、長年この世界に身を置いて、決して少なくない場数を踏んでいるはずである。


「あいつは別に私怨であんなことしてるわけじゃなくてな、この世界で魔族と戦う人間として愚直にそれをやってるだけなんだ。いわばそいつらの見本だな」


 あれが見本だというなら、オレには早々勤まりそうにない。


「ボウズ。”対魔族”の格言を覚えているか?」


 魔族と格言、というならあれしかないだろう。


「汝、魔族ヲ人ト思フ事無カレ。其ノ行ヒニ一切ノ躊躇ヲ覚ユル事無カレ。而シテ、己ノ業ヲ疑フ事無カレ。……ってやつですか?」


 魔族を人と思うな。

 魔族を殺すのにためらうな。

 自分の仕事を疑うな。


 この世界に生まれた人間ならだれでも知っている言葉で、冒険者になって最初の講習で嫌というほど刷り込まれた言葉だ。


「お前さん、魔族に身内を殺されたことあるか?」


 オレはゆっくりと首を横に振る。


「じゃあついでに、お前らが単独で魔族に遭遇した際、授業ではどうしろと習った?」


 これも常套句がある。


「少しでも違和感を感じたらすぐ引き返せ。魔族を見た瞬間死んだと思え。死んでなければすぐ逃げろ。話かけて来たら絶対に逆らうな。どんな嘘でも今なら許される。親や子を犠牲にしてでも生き延びろ。運よく生きて帰ったらすぐ報告しろ。そこまでしてから、ようやく神に感謝しろ」


 これに関しては、この世界のほとんどの人間が知っている言葉だ。


 C級以下の冒険者が魔族と遭遇した際の生還率はおおよそ十パーセントほどらしい。

 これは、百人に十人が生き残れるという事ではなく、魔族に遭遇した際にその場にいた人間の中で()()でも生き残れる確率という事らしい。


「ボウズがどこまで聞いてるか分からんが、魔族に会った人間はまず生き残れない。その中でも女の生還率はほぼ()()パー。これは単純に男より女の方が美味いからだ」


 魔族は人を食う。


 しかし魔族にとって人間は食料というよりデザートのようなものと言われている。

 それが本当なら彼らは人間を、別に食べなくてもいいけど、あえて食べているという事になる。


「そんで、食べられなかった男はどうなるかというと、一番多いパターンがおもちゃにされて死ぬまで弄ばれることだな。そして、()()()生餌として逃がされた人間。これがほぼ唯一の生存の道だ」


 魔物や野生動物に殺された人間なら沢山いたが、幸か不幸か、オレは今まで近しい人間を魔族に殺され事が無い。

 このフォルカーさんの話も、オレには全く実感がわかず、失礼ながら他人事のように感じてしまう。


 先ほどの平和ボケもそうだけど、この点は自分で自分をとても情けなく思っている。


「ああ、ビビらせたいわけじゃねえよ? しかしまあ、あれを見て冒険者になるのが嫌になったって言うんならワシわ止めんよ」


「いや、オレは別に……」


 別に。

 その続きは何だろう。


 正直、オレが冒険者になったのなんて特に大した理由があるわけでは無い。

 だからなのか、こんな中途半端な覚悟で冒険者をやってていいのかという気持ちになっている自分がいる。


「まあ、残念ながらこの先冒険者をやっていくなら、否が応でにでも辛いことにぶちあたる。でもな? お前の助けを必要にしている人間は山ほどいるし、それで救われる人間も沢山いるさ」


「そうだといいんスけど……」


 今まで帝国で冒険者をしてきて感謝されたことがどれほどあっただろうか。

 それどころか、社会の底辺として冷たい目を向けられた事の方が多いまであるんじゃないだろうか。


 そういえば、他のメンバーはどうなんだろうか、特にパレッタは――。


「少しは気分良くなった?」


 後ろを振り返ると、ちょうどパレッタが、魔族を背負ったヤマトさんに話しかけられているところだった。


「……はい。すみません、あれだけ大口を叩いておいて、こんな体たらくで」


 そう言うパレッタは青白い顔をしてうつ向きながら歩いている。


「あんなの気にするな気にするな。うちのパーティーの魔法使いなんて、昨日ギルドで盛大に()()()()()てたから」


 勇者パーティーの魔法使いでもそんな失態をすることがあるのだろうか。


 件のパレッタは、魔族を威勢よく燃やしたところまでは良かったのだが、途中で突然冷静になったらしい彼女は、


「生きている人型の物を燃やしたのは初めてだったので……急に気持ち悪くなっちゃって……」


 いつになく弱っているパレッタに、クェントが、


「いや、すごいよパレッタは。僕なんて固まっちゃって声すら出せなかったもん」


 ぎこちない笑顔を作って励ましている。


「おいヤマト、アキの件はどうするんだ?」


 唐突にフォルカーさんがヤマトさんに呼び掛けてそう言った。


「ん? ああ。いいんじゃない?」


「え? どういうことですか? 僕は何も聞いてませんけど?」


 最後尾でパァスと並んで歩いていたアキさんが、突然自分の名前が出たことに疑問を感じている。


「アキ。フォルクがお前を”プリースト”に推薦してくれるって話」


 そう言われたアキさんは、一瞬硬直して、


「ええ!?」


 驚きの声を上げた。


「ああ、ワシから教会に言っておくよ。まあ聞いてくれるかはしらんがな」


 フォルカーさんがしれっと答える。


「だから!? だからですか!? それであんなバカみたいな事してたんですか!?」


「ん? 今バカって言った?」


「いやバカでしょ!? おかしいと思ったんですよ! いくらヤマトさんでもあまりにもやり方が杜撰すぎるって! 何故かフォルカーさんも何も言わないし!」


 ああ……、こんな気の抜けるやり取りを聞いていると、さっきまで自分が悩んでいたことがどうでもよくなってしまう。


「今朝急に色々思いついたから突貫で作戦立てたんだよ? 寝ずにロケハンもしたのに正直ほとんどアドリブになったけど、でもまあ驚くほど上手くいったわ」


「危ないでしょ!? それにやり方が人として終わってる! 鬼畜!! あなたもそう思うでしょ? これが勇者ですよ!?」


 そう声を荒げたアキさんが話を振った先にはパァスがいた。


 全員の注目がパァスに集まる中。


「ガハハハハ! 無茶ぶりだろそりゃあ!」


 フォルカーさんが大声で笑う。


「え? むっちゃカッコえかったじゃないですか?」


「「えっ!?」」


 その場にいるヤマトさん以外の全員の声がハモった。


「えっと、あの……ちょっと下品かもしれやんですけど……」


 彼女は股間を抑えてもじもじしながら。


「ウチ、興奮しちゃいました……」



 第一章 完

これにて第一章が完結です。

ここまでご覧いただいてありがとうございます。

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引き続き、当作品を宜しくお願いいたします。

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