第14話 闇魔法適性
・登場人物・
ヤマト……主人公、勇者。
フォルカー……S級冒険者。魔動車の設計者。
ブラシュ……剣士。C級冒険者。リーダー。
パァス……スカウト。ムードメイカー。
パレッタ……魔法使い。学院主席。
クェント……センチネル。あまりしゃべらない。
アキ……聖職者。中性的な顔立ち。
森に入ってから、体感ではかなり歩いたように感じるが、恐らくまだ試験開始から一刻も経っていないだろう。
奥に進むにつれて、周囲の瘴気が常に肌で感じられるレベルになっていた。
突然あてられたのとは違う、じわりじわりと浸透してくるような不快感だった。
「あの、すみません……気分が……」
パレッタが歩きながら片手を小さく上げて答える。
その言葉に、ヤマトさんが止まれのハンドサインを出す。
そして、むねにてを当てて浅い呼吸をしているパレッタに近づくいて、彼女の背後に立った。
「失礼」
ヤマトさんが一言そう言うと、彼はそっとパレッタの両肩に手を乗せる。
パレッタが一瞬、ピクリと身を震わせる。
そして、ヤマトさんは肩を撫でるように伝って、指を首筋まで這わした。
「あ……またやってる」
アキさん呆れたようにが呟く。
どういう意味だろうか?
確かに、あの手つきには若干のいやらしさを感じるが……。
「光魔法適性が高いのか。魔力探知を切った方がいい」
ヤマトさんが答える。
「え? 分かるんですか?」
パレッタが問いかける。
「まあな。光魔法適性が高い人は他人の魔力への官能が高いだろ? そういう人が対策無しに瘴気の中で魔力探知を使っちゃうと、必要以上に瘴気の影響を受けちゃって、魔力にあてられる原因になる」
そう言いながら、ヤマトさんが今度はパァスの後ろに立つ。
それをジト目で見ていたアキさんが、
「気を付けて下さい。それ、体型まで探られてますから」
冷たい声で言う。
「「え゛っ!?」」
パーティー全員の声がハモリ、女性二人が咄嗟に身構える。
「ええっ!? そんな感じはしませんでしたけど……」
パレッたが自分の体を確認しながら、不審な目線をヤマトに向ける。
「それが出来ちゃうのが”勇者ヤマト”なんですよ」
アキさんはそう言ってため息を吐いた。
「おいおい。そんな人を変態みたいに言うなよ」
ヤマトさんがパァスから手を放して、やれやれとポーズを取る。
「ウチは……別に気にしませんよ?」
「「え゛!?」」
今度は全員がパァスの方を見た。
「パァスちゃんは”闇魔法適性”があるね」
「はい。ほんの少しですが」
ヤマトさんは再び、パァスの肩に手を置いてそう口にする。
それをパァスは甘んじて……どころか若干嬉しそうに受け入れている。
どうも、身体スキャンの件はうやむやになりそうな気配だ。
そもそも、二人ともスレンダーではあるが、残念ながら胸も非常にスレンダーなため、体型を見たところであまり得られるものがあるとは思えないが。
「その少しが”闇魔法”に対して、生死を分けることが良くある。もしあまり勉強してないなら、今からでも学んでおいで損は無い」
ヤマトさんのアドバイスに、パァスは嬉しそうに「はい!」と答える。
彼女にとって、今日は感情の変化が激しい日である。
「闇魔法か……本当にうらやましいなあ……」
パレッタの口調は悔しさを含んでいる。
闇魔法適性を多少でも持っている人間というのは、真偽は置いておいて百人に二・三人程度と言われているらしい。
適性を少しでも持っている者は、汚染魔力への抵抗値が大幅に上昇し、対魔族戦の生存率が大幅に上昇する。
そしてそれは”Bランク”へ上がるための審査に大きく影響するとかしないとか。
「神よ、我らを守り給え。『”シュライン”!』」
アキさんが唱える。
そうすると、一瞬周囲が何かに包まれたように淡く光り、先ほどまで感じていた瘴気が嘘のように消え去った。
先ほどから聖魔法には驚きっぱなしである。
同時に、こんなものがあるなら最初からやってくれてもいいのではと思ったが、何かしら事情があるのだろうと思う。
「少し急ぎましょう。ここから先、私達が居るからと言って油断しないでください。この結界には範囲があるので僕から離れすぎないように」
そうアキさんは真剣に言っているが、
「いや、別にいいよ。時間はあるからゆっくり進もう」
ヤマトさんは特段、変わらない口調で言う。
それに少し呆れ気味のアキさんは、
「あのですねヤマトさん? 皆さんがこれを当たり前だと思ったらどうするんですか? それに――」
「いいからいいから。それは大丈夫だからさ」
先ほどからアキさんは何かを気にしている様子だが、ことごとくヤマトさんに遮られている。
「ええと、結局魔族は居るんですか?」
道を進みながらパレッタがヤマトさんに尋ねる。
「さあ? どうだろうね?」
それに曖昧な返事を返すヤマトさん。
どうも彼は、知っててはぐらしている感が拭えない。
僕らはそんな、もやもやした気持ちを抱えながらしばらく歩いていた時、一人が何かを発見して歩みを止めた。
「何かある……」
パァスが道の先に目を凝らしながら口にする。
「ようし着いたな」
いままで黙々と歩いていたフォルカーさんがもそう言って足を止める。
僕の目にはまだ何も見えていない。
「ん? あれは?」
先を歩くブラシュが何かを指差す。
「何だ? 馬車?」
そこには潰れた馬車が二台、道の真ん中を塞ぐように鎮座していた。




