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売れない画家

夜空が広がる庭園。

そこでマリカと画家の青年アレクスは東屋で星を眺めていた。


「聖女様。ご覧下さい、この星たちの並びって芸術的だと思いませんか?」


「すごく綺麗です。星座みたいですね」


アレクスは可愛らしいきょとんとした顔でマリカをみる。いい意味であざとい。


「セイザ?異世界の言葉ですか?」


「えーと、星の並びの特徴から連想できる人とか動物とかの事をいいます」


「へぇ、星で絵を描くなんて革新的ですね。僕も新しい何かを生み出せる人間になりたいです」


感心したようにアレクスは星に視線を戻す。伯爵家の三男であり、画家で生計をたてようとしている彼は新しい題材を見つけたのか見慣れているはずの夜空を夢中になって見あげていた。


今は昼下がりだが王国リコリスラジアータは年中暗闇が降り注いでいるためマリカたちがいる東屋も真夜中のように暗い。


「アレクスさんはどんな絵を描かれるんですか?」


「……」


「アレクスさん?」


「…」


「画家さーん!」


青年はマリカの話にインスピレーションを得たのか自分の世界に閉じこもってしまい、マリカが呼びかけても反応しなくなってしまった。


(ま、まぁ星は綺麗だしね。わたしはわたしで楽しもう)


なぜ画家の青年と東屋にいるかというとメガネさんの計らいだ。

マリカが後方を振り返ると今日もメガネさんは視界に入れないと認識できない程に存在感を消して仕えてくれていた。


異世界にきて二週間。

メガネさんが新しく紹介してくれた青年アレクスは伯爵家の人間だが素朴な雰囲気をしている。最近、婚約破棄したばかりで特別な相手もいない。


マリカが婚約者のいる男性は嫌だと伝えた事をメガネさんは汲み取ってくれたようだ。それに豪華すぎないという条件も満たしてくれた。

青年アレクスの婚約破棄理由は少しだけ気になるが、マリカは異世界人と成婚する気はないので独り身なら何でもいいということにしておく。


マリカとしては早く元の世界に戻って婚活を始めたいところだが何故か異世界人と見合いをしている。婚活以外で聖女専用部屋から出る良い言い訳が見つからないから仕方がない。


(元の世界に戻れる手がかりが掴めたらと思うんだけど何も見つからないや)


すぐ隣にいるアレクスから何かヒントを得られないか期待したが彼はまだ星に夢中になっていた。


(この前の男性の名前はなんだったかな。侯爵様って事しかもう覚えてないんだけど、あの人ともほとんど話ができなかったなぁ)


マリカはアレクスに気づかれないようにそっと席から離れてメガネさんに小声で話しかけた。


「邪魔しちゃ悪いのでもう帰ります」


「聖女様がそのような事を気にする必要はないのですが、もう彼との謁見はよろしいのでしょうか?」


「はい、せっかく紹介して頂いたのに今回も上手くできなくてすみません」


「謝罪は必要ありません。人選を誤りました、彼のことは放っておきましょう」


メガネさんはマリカの謝罪は受け取らず、聖女専用部屋に向けて歩き出した。

青年アレクスが見えなくなったところでマリカはメガネさんに問いかけた。


「この国の人たちってお見合いとかで知り合うんですか?自然に出会って恋して結婚とかないんですか?」


「そういった場合もありますが出生率を維持するために生まれた瞬間に教会が婚約相手を決めます。国民一人ひとりの身分関係も教会が管理しております」


「へぇ、戸籍とかも教会が管理するんですね」


「そうです。王国と名がついていますが王侯貴族は国の象徴のようなもので力はありません。実権を握っているのは聖女様や自分のような魔術師が所属する教会になります」


(あれ、それなら貴族の人達とお見合いしても何も教えてもらえないんじゃ)


マリカは次の計画はどうしようか考えていると、いつの間にか聖女専用部屋まで戻ってきていた。


後日、王国内で画家アレクスの新作絵画が大流行しマリカの部屋にも飾られることになった。抽象的だが星座のような作品だった。

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