路地裏
『バキッ』
頬に強い打撃を受けて目が覚める。そこは見覚えのある場所だった。
知った複数の顔がこっちを見下ろしている。
「あれ?起きたぞ?こいつ。・・・・・誰だっけ。」
俺を見下ろすうちの1人が言った。派手な金髪の長髪を後ろで束ねている。俺もこいつの名前を知らない。
「誰だっていいだろ。」
金髪の隣に立つガタイのいい男が、めんどくさそうに返した。
・・・・。そうだ。俺はこいつらに殴られて気絶してたんだ。・・・それにしても本当に不思議だ。
いつも俺が気絶から目を覚ますのは、こいつらの気が済んでからいくらか経ってからだった。
「まあ今日は報酬受け取ったし、見逃してやるか。」
全身黒づくめの身長が低い男が気味の悪い顔でニヤニヤしながら俺に言う。
その時俺はふと思った。ああ、目覚めなきゃよかった・・。
それを聞いてもホッとした顔をしない俺を見て、黒づくめの男は舌打ちをした。
「チッ。こいつ、もう慣れてきてやがる。遊びがいのないおもちゃは面白くねぇぜ?」
ガタイのいい男が路地裏の汚いゴミの上に倒れている俺の腹を思いっきり蹴った。
思わず声が出る。
「こいつは’絵’じゃなくて’音’が面白えんだよ。さあお前らパチンコ行こーぜ。ここは臭くてかなわねえ。」
男たちはさっき俺から受け取った金をこれみよがしに持ちながら、路地裏を出ていった。
ーーー何か、目が覚めるまでここじゃないどこかにいた気がする。
俺は歩けるくらいになるまで待ってから、ゆっくり体を起こし、パチンコを遠回りにしてマンションに帰った。