帰還!男装女子。
頬に当たる風が気持ちいいし、ベルキスさんの体もほかほかしてて、なんだか安心してウトウトしていると小さく笑う気配がする。
「もう着くが、大丈夫か?」
「うぁっ、はい」
「‥あと少しで寝そうだったな」
「だって朝早く起こされたんですよ?」
「そうだったな。よくあんな早く起きたな」
「‥ベルキスさん、隣で寝てないし‥」
私が呟くように言うと、ベルキスさんがちょっと固まった。
全くもう‥。椅子に寝てたのに疲れてないの?ベルキスさんの方を振り返って、顔色を見る。うん、体調は悪くなさそうだけど‥。
「‥ベルキスさんは、この後どうするんですか?」
「アーデル殿が街の方で事情聴取をするだろうから、俺はパティに戻って周辺を調査する」
「え‥、戻るんですか?それなら私も‥」
「今朝誘拐された奴が働くな」
「そ、それを言ったらベルキスさんだって私のせいでベッドで休んでなかったじゃないですか」
ああ、こんな時本当に男だったらなぁ。
‥そうすればベルキスさんも休めたかもしれないのに。私ときたら拐われるし、ベッドも半分こできないし、全然契約したのに役に立つどころか、足を引っ張っているだけではないか?知らず項垂れてしまうとベルキスさんが私の頭をわしゃっと撫でる。
「‥夜には戻る」
「え?でも‥」
「明日の朝、一緒に出勤しよう。しばらく通いで行くぞ」
夜、帰って来るの?
それなら自分の部屋のベッドで寝られる?
ちょっと安心して、静かに頷くとベルキスさんは優しく微笑んでくれて‥。それだけでなんか顔が赤くなる。いつからこんな優しい目で私を見るようになった?
思い出せないけど、その視線で見られるとなんだか照れ臭くて仕方ない。
「そろそろリシャフだ」
「は、はい」
ベルキスさんの言葉に前を見ると、山に囲まれた岩壁の騎士団の景色が目の前に広がる。すっかり見慣れた風景が目に入って、思わずホッと息を吐く。帰ってきた‥っておかしいんだけど、ようやく安心できる。
演習場にディーと降りて行くと、フィクトルさんとロアン君が立っていて、私を見るなりこちらへ駆けてくる。と、ロアン君の手からキノがものすごい勢いで飛んでくる。
「キノ!!!」
「キュウウウウウ!!!」
両手を広げると、キノが私の胸元に飛び込んできて、まるで私の安否を確認するように鳴く姿があまりにもいじらしくて‥、私は涙腺が決壊した。
人間の勝手でこんなに可愛い竜を資金の一つにしていた‥。
こんなに心配してくれる優しい竜を‥。
そう考えたら涙が止まらなくて、ディーの背中の上でキノを抱いてボロボロ泣きだす私をベルキスさんが抱えて一緒に降りてくれた。
だけど‥、涙が止まらなくてグスグスと泣いていると、ベルキスさんが私の背中をそっと撫でてくれた。
「ベルキスさん‥」
「‥もう大丈夫だ」
「はい‥」
「竜にも、ミヒロにもこれ以上手出しさせない」
ベルキスさんまで悲しそうな顔をして、私の顔を見つめるから涙が余計流れちゃうんですけど‥。でも、ベルキスさんはこれから仕事に行かないといけないんだ。頑張って泣き止まないと‥。袖でゴシゴシと顔を拭くと、ベルキスさんの指が私の涙を掬う。
「ベルキスさ‥」
だめだ。
これ以上、迷惑をかけちゃダメだ。
鼻を啜って、顔を上げると、ベルキスさんの顔が私の方へ近付く。
「え」
チュッと、額にキスをされて目を見開いた。
え、
キス?
思わず口を開けてポカンとベルキスさんを見上げると、ニヤッと笑って、
「泣き止んだな」
「なっ、なぁあああああ!!???」
「ついでに元気も出たな」
「そ、そ、そんな感じ?!!」
一連の流れに口をパクパク開けてベルキスさんを見ると、まだニヤニヤしてる‥。こ、こっちは色々あってだね?って思うけど、お互い様だった。
「もう大丈夫だな?下ろすぞ」
「あ、は、はい」
ベルキスさんがそっと私を下ろしてくれると、ロアン君がちょっと泣きそうな顔で私を見上げて、
「ミヒロさん良かった‥。お帰りなさい」
「ロアン君〜〜〜!!」
ロアン君に抱きつこうとすると、ベルキスさんにすかさず私の腕を引っ張られた。な、何??びっくりしてベルキスさんを振り返ると、
「‥まずパートナーにハグが先だろ」
「っへ?!!」
「もう!!ミヒロさん怪我しているんですよ!ベルキスさん、イチャイチャは後にして下さい!」
「い、イチャイチャ!!?」
ロアン君とベルキスさんを交互に見て、顔が赤くなってしまったが、いや‥契約結婚中です。あと「友人」です。でも、じゃあさっきのキスはなんだ?って思うけど‥。友人同士で額にキス‥ある?ギリギリあるか?私は異世界の常識に首を捻りつつ、生温かく見守っているフィクトルさんに助けを求めた。
うっかり更新忘れてた〜〜!!
で、慌てて今日の分を深夜に更新です。




