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男装女子は竜を飼いならす。  作者: 月嶋のん
男装女子と竜騎士の日常。

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竜騎士は想う。(ベルキス視点)

ベルキスさん視点です。


いつの間にか雨が上がったのだろう。

昨日の昼過ぎからずっと雨が降っていた雨音が聞こえなくなって、時折鳥の鳴き声が聞こえる。



「そろそろ夜明けか‥」



窓の向こうを見るけれど、空は未だ少し暗い。


びしょ濡れだったミヒロを抱えて野営地に戻った俺はアーデル殿に持っていた小袋を渡してから、ミヒロの休んでいた家に入って魔法で服を乾かすと、冷え切っている体を暖める為にベッドに座ってミヒロに毛布を掛けて抱え込んだ。



そうして、今は静かに眠るミヒロの寝顔をじっと見つめて、

1ヶ月前の事を思い出した。



珍しく竜達が騒めいているから急いで見回りに行ったら、まさかの竜の巣の最深部にいた少年と見間違えた女性、ミヒロ。



突然竜の巣に現れたミヒロは、自分と同じ黒髪、目も黒目がちなのに魔力を感じなくて不思議に思ったら、異世界から来たと話すのですぐに納得した。



そうして不安そうにしているミヒロを見て、結婚をどうにか回避したかった俺は、咄嗟に「男」として「契約結婚」をしてくれと話して、強引に事を進めてしまった。



そんなミヒロは竜に驚いたり、かと思うとレイノル様に堂々と接したり、素直に俺を信じてはその度に騙されても、けろっとしていて‥。自分で契約しておいてなんだが、この子はこの先1人で生きていけるのかと不安になった。



そうだ。

最初は「男の子」のようにミヒロに接していた。

それなのに時々、自分から「友人」として接してくれとお願いしたくせに、誰かと信頼しきって話をしているミヒロを見ると胸が騒めくのに気が付いた。



そんな簡単に人を信用するな。

危険だぞ。そう思う度に全部その言葉が自分に返ってくる。強引に自分の為に結婚した男の言葉ではない‥と、自分で自分に落ち込む。



からかえば怒るくせに、すぐに笑って、

騙せば怒るくせに、すぐに安心したように見上げるミヒロ。



でも、あと半年足らずでミヒロと俺は別れる。

1人でも生きていけるように、そう思って色々すればするほど、ミヒロの笑顔に和む自分がいて、これではいけないと離れようとすると気になって仕方がない。



パーティーに行けば、貴族に対して立ち回るし、

そうかと思うとレイノル様だけでなく、アーデル殿にまでいつの間にか気に入られて‥。こちらが「結婚しているから」まだどこかで安心できるけれど、この関係が無くなったら?



あの笑顔が誰かに向けられたら?

ザワッと胸の奥で仄暗い感情がくすぶるけれど‥。



そもそもミヒロは俺を「契約相手」だとしか思ってない。



「いずれは1人でも出来るようにしたいし‥」



あの日‥、

アーデル殿と見学にと話が出た際に、そう言ったミヒロの言葉に思い切り横っ面を殴られた気分になった。



それなのに‥あの日、気付いてしまった。

側に、このままいて欲しいと。



‥こんな自分勝手な事で散々振り回しておきながら、都合がいいにもほどがある。そんな自分の気持ちを見透かすように、アーデル殿にまでチクリと牽制されて、側にいる事ができなくなってしまって‥。



でもそれではダメだと自分に言い聞かせた。契約期間中は、想いを告げる事なくミヒロを約束通り守ろう。そうして、契約を終えた時に改めて気持ちを告げよう。



そう思って、昨日の朝‥、

誓うようにミヒロの額にキスをした。

周りにちょっとした牽制もあったけれど。



自分でまったく虫のいい話だと思って、ふうっとため息を吐くと、



「ん‥」



ミヒロが小さく腕の中で身じろぎする。


雨の中、クチナシから逃げているミヒロを見つけられたのは、もう奇跡だったと思う。草の報告をアーデル殿に受けて、ロアンに見せた途端に青ざめた顔をしたのを見て、飛び出すようにこちらへ飛んできて、本当に良かった‥。



目を覚ましたら、きっと驚いて戸惑うだろう。

罪悪感と、後悔が絶え間なく押し寄せるのに‥腕の中で静かに眠るミヒロの寝顔に安堵感と手離したくない気持ちが上回ってしまう‥。



「‥本当に、俺はろくな人間じゃないな」



ポツリと呟いて、ミヒロの体を抱え直す。

気持ちを言ったら、きっと怒るだろうな。殴られてもいいかもしれない。



泣かれたらきっと動揺するだろう。

嫌われたら、落ち込むのは確実だ。



その先のことを考えると、胸がキリキリと痛むが原因が自分だけにどうにもできない。ああ、こんなダメな俺を少しだけ好きになって欲しいなんてとんでもないと自覚してる‥。分かっているのに、意識だけでもして欲しいと思う欲の深い自分を叱咤して、ミヒロの体をぎゅっと抱きしめると、窓の向こう朝日が上るのが見えた。





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