騙されないぞ男装女子。
ベルキスさんに結婚を迫っていた皇女レイノル様から結婚のお許しは貰えたものの、その後のフィクトルさんと、ベルキスさんのやり取りで、私は異世界の常識とは‥と前途多難っぷりをまざまざと見せつけられた。
だけど、フィクトルさんもベルキスさんもそんなのお構いなしに、ドンドン書類を書いては「こっちにサイン」なんて言うので、私はもう無言でサインを書いている‥。もう不安でしかない。ラスカさんなんて可哀想な子を見る目でずっと私を見ている。
「はい、じゃあ明日までに身分証明書を発行して渡すね」
ニコッと甘い顔立ちのイケメンフィクトルさんが私に微笑みかける。
身分証明書は確かに必要である。私はお礼を言って頭を下げると、フィクトルさんはベルキスさんを見上げる。
「‥ベルキス、ちゃんと同意ある結婚なんだよね?」
ものすごい動揺が走って、私は思わずベルキスさんを見上げると、ベルキスさんは私を見つめる。え、な、何?
「同意も好意もなくて、キスなんかするか」
「〜〜〜〜!!!!??」
さっき頬にキスされたのを思い出して、瞬間私の顔が真っ赤になる。
そ、そ、そういえば頬にキスしましたね!!
え、ていうか、同意はともかく好意もあったの?!それとも演技!?私の頭の中は一気に混乱したけれど、フィクトルさんは私の様子とベルキスさんの顔を見て、ちょっと安心したようだ。
「それならいいけど。今度は僕にもちゃんと相談してね」
「ああ、そうする。あと、ミヒロの物をちょっと買ってくる」
「あ〜、そうだね。ベルキスの部屋なーんにもないしね。夜の訓練に間に合うように帰って来てね」
二人は話は終わりだとばかりに、立ち上がるので私も慌てて席を立つ。と、フィクトルさんがニコッと微笑む。
「ミヒロさん、ベルキスを頼むね」
「え、っと、はい!」
ペコっと自分の世界のくせで頭を下げたけど、こっちの世界にお辞儀という文化はあるのだろうか。疑問に思いつつも、ベルキスさんがさっさと部屋を出ていくので、私も慌てて付いていった。
そして二人で人気のない廊下まで歩いていくと、ベルキスさんは足を止めた。
「‥結局、色々巻き込む形になったが、何かあれば全部対処する」
「ありがとうございます‥、あの、一つ聞きたい事が‥」
「なんだ?」
同意はともかく好意はあるんですか?
って、聞きたいけれど、その勇気はない‥。万が一違ったら恥ずかしくてこの一年一緒にいるのが困難でしかないだろう。ちょっと考えて、ベルキスさんを見上げる。
「ベルキスさんって、恋愛対象は男性ですかね?」
「‥‥ミヒロには男性として結婚をしてくれと話したが、対象は異性だ。ただ契約中は同性として接する。友人として付き合ってくれ」
「あ、なるほど‥」
好意は好意でも「同性」としての好意‥。
つまり友情ね!!
あ、はいはい。あっぶな〜〜〜!!ベルキスさんサラッと言うから勘違いしてた!いや、良かった!!早めに確認して良かった!!私はホッと胸を撫で下ろすとベルキスさんが私をじっと見つめるている事に気が付いた。
「‥ベルキスさん?」
「不便を掛けるがよろしく頼む」
「は、はい!こちらこそお願いします!」
ニコッと笑うと、ベルキスさんはちょっと目を丸くする。
「‥‥ミヒロ、簡単に騙されるなよ」
「それベルキスさんが言っちゃいます?」
ベルキスさんは「確かに」と呟くと気まずそうに微笑んだ。
私とベルキスさんはすでに皇女レイノル様もフィクトルさんもラスカさんまで騙しちゃったんだぞ?これって国を騙したって事だよね‥?異世界に来た初日からものすごい事をしちゃってない?思わず冷や汗がナイアガラ再び!になりそうな私。
「何かあれば全部俺が責任を取る」
「‥そこもお願いしちゃっていいんですかね?」
「当然だろ。俺が結婚を迫ったことにする」
「っへ?!!」
「あまりにも可愛らしかったので、結婚したと話す」
ニヤッと笑うベルキスさんに思わず目を丸くする。
瞬間、真っ赤な顔になるとベルキスさんはイタズラが成功した!とばかりに笑って、頭を撫でる。
「‥‥本当、騙されるなよ」
「くっ!!!ベルキスさん悪い人だ!!悪い人!!!」
人の乙女心を弄ぶなんてものすごい悪い人なんだぞ!
ジロッと睨むけど、きっと私の顔は真っ赤なので全く威力はないだろう。ベルキスさんは小さく笑ってまた歩き始めるので、私は睨んだまま歩き始めた。は〜〜!!イケメンは心臓に悪いわ!!
一応、こっちの世界は同性結婚は普通にあります。
ラスカさんちのお兄ちゃんは同性婚だったりする。




