乙女心が誤作動、男装女子。
急いで着替えてきた私は台所へ降りていって、ベルキスさんと朝食を作った。
と、いってもベルキスさんが自分で作る!と言って譲らないので、簡単に目玉焼きとベーコンを焼くだけの朝ご飯だ。なにせ卵を割る所から苦戦したし‥。
「軽く卵をこう角の所で、コツンとやって、割れた部分に指と指をこうやって‥、それをお皿の中に落とします」
を、5回やった。
まぁ卵はエネルギーの塊だし、形が崩れても筋肉にいいのは変わらないだろう。
「‥ミヒロはいつもあんなに簡単に作れてすごいな‥」
形の崩れた目玉焼きを見て、心なしか元気のないベルキスさんに私は笑いを堪えるのに必死だった。だっていつも余裕で笑っているのに、上手くできなくてしょんぼりするとか!!!
「作ってくれようとしただけで嬉しいですって!」
「そうか?」
「はい!それに5個みんな消し炭になってないし、大成功ですよ」
「‥そうか」
私の言葉にベルキスさんはちょっと嬉しそうにはにかむ。
やばい、朝からイケメンが可愛い!!
私の中の乙女心が悶えているけど、わかる!私も悶えたい!でも、「男」だし「友人」なので平静だ!平静でいくぞ!
結局、私は2個、ベルキスさんは3個、目玉焼きを食べた。めっちゃお腹いっぱいになったけど、朝ごはんの話をしていたけどまさかすぐに作ろうとしてくれるなんて思わなかったから、嬉しくて‥。お腹どころか心も膨れた気分だった。ちなみに消し炭はキノがいたく気に入って食べた。すっごいな!?
朝食をたんまり食べて、出勤である。
お腹一杯のキノはシャツの中ですでに惰眠を貪っている。いいなぁ君は‥私は今日はラスカさんと仕事だよ。
と、騎士団の方へ歩く私とベルキスさんの所へ、アーデルさんが向こうの廊下から歩いてくる。おおう、朝イチで会うとは‥。
今日も爽やかな晴れ空の似合う王子様のごとき美しさのアーデルさんはニコニコ笑って、ベルキスさんに笑いかける。
「おはようございます。今日はベルキス殿よろしくお願いします」
「こちらこそ、どうぞよろしくお願い致します」
「ミヒロさんもおはよう。今度一緒に竜の巣調査行きましょう!」
「‥はい。ヨロシクオネガイシマス」
うう、竜が好きなのは分かったけど、何を企んでいるか分からない所がまだちょっと怖いんだよね。そろっとベルキスさんの背中に隠れるようにすると、ベルキスさんがそっと前に立ってくれるので感動してしまう。
と、ラスカさんがこちらへ駆けてくる。
「ベルキスさん!すみません!フィクトル団長がちょっと来てくれと」
「分かった。すぐに行く。すみません失礼します」
「はい。ああそうだミヒロさん、ちょっと聞きたい事があるんですが‥」
え?私??
ベルキスさんと一緒に行こうと思った私はまさか自分が呼び止められると思ってなかったので、驚いて振り返ると、アーデルさんは意味ありげに微笑むので何も言えねぇええ!!!ベルキスさんが私を心配そうに見つめるけど、これ、無理そうだな‥。
「ベルキスさん、団長の所へ行って下さい」
「‥‥‥分かった」
ちょっと無表情になったベルキスさんに、私はなんで怒ってるの??と謎だったけど、なんだか硬直したこの空気が居た堪れない‥。アーデルさんさんを見上げて、
「えっと、あちらの中庭で聞いても?」
「ああ、すまないね!それではベルキス殿、また後で!」
ラスカさんは私とベルキスさんを交互に見て、ちょっと心配そうな顔をしているけど、とにかく何かあっては困るのは主に私なので、ベルキスさんの顔を見るのも怖い。急いで中庭の方へ続く道を歩いていくと、後ろからアーデルさんが付いてきているのを確認してホッとしたその時、
「ところで、聖竜騎士団へ来る気持ちになった?」
って、いきなり普通の声量で聞くので私は飛び上がった!!
「な、なんてことを言うんですか!!っていうか、そういうのもっと声量抑えて下さい!!」
「え〜、結構いい話だと思うんだけどな?」
「いや、それは無理でしょ。そもそも私結婚してるし‥」
「でもその才能勿体ないよ。来てすぐに竜の巣に入れるなんてないよ?」
う、それを言われると嬉しいけど、でもなぁ‥まだ契約期間は5ヶ月もあるんだよなぁ。私がちょっと悩んでいると、
「試しにさ、2週間だけ違う竜の巣を見学してみるのは?」
「見学?」
「そう!それならずっと離ればなれにならないし、勉強になると思うよ」
2週間か‥。
確かにいずれ別れるんだし、この先の生活の事も考えないといけないし、色々な場所を見ておいた方がいいのかも‥。ここにいられれば一番いいけど、離婚したら一緒の職場には居づらいしなぁ。
「‥そうかも、ですね」
私がポツリと呟いた言葉にアーデルさんは嬉しそうな顔をしたけれど、瞬間、心が苦しくなった。うーん、乙女心の誤作動再び??




