結婚受理!男装女子。
ベルキスさんから熱っぽい視線を一身に受けて私の乙女心は瀕死だ。
だって美形だよ!?かなりの美形に「妬ける」とか言われた事ないし!!ても、それも現在男として結婚した私に言っている訳で‥。乙女心はなんというか複雑骨折している気分だ。
一方、形だけはイチャイチャしている私達を見て、レイノル様は顔が真っ赤で、こちらをチラチラ見ながら照れ臭そうにしている。可愛い。私も本来あっち側の人間だったはずなのに‥!!
「で、でも、急に結婚なんて信じられないわ!」
「姫、一目で恋に落ちた愚かな男をどうぞ許してください」
ベルキスさん、いけしゃあしゃあと言ってるけど、さっき竜の巣で会ったばかりで恋も何もあったもんじゃないけどね‥と、心の中でそっと呟く。レイノル様の後ろで固唾を吞んで見守っていた騎士さん達が「まじか!」「純愛だな!!」とか言ってるけど、本気で信じてるの?ちょろすぎない?大丈夫か、騎士団なのに‥。
乙女心は飛び上がるセリフだが全く嬉しくない。
だってこれ男に言ってるセリフであって、女の私ではない。
複雑な心境の私を、お姫様が睨みつける。
「‥貴方が私のベルキスを」
「違います!私が‥」
「お黙りベルキス!貴方、こちらへ来なさい!!」
え、なにこれ殺される感じ?
フィクトルさんを見ると、完全に顔がパニックに陥ってるし、ベルキスさんはちょっと眉間にしわを寄せている。
騎士さん達が再びどよめき、この一連の流れを固唾を呑んで見守っている。いや、ぶっちゃけ助けて。私は小さく微笑んでお姫様の方へ一歩進むけど、内心はナイアガラのような滝汗が背中で流れまくっている。
レイノル様は私をじっと見つめるので、私は顔がもう引きつりそうだ。
「‥本当に、愛しているの?」
「はい」
「‥それなら、ベルキスにキスも出来るわよね?」
ザワッと今日イチのどよめきが起こった。
おいおいおいおいおいおい、なんつー事を言い出すんだ!お嬢さん!!!私とベルキスさんはさっき出会ったばかりで、しかも相手も私も現在男性と男性という関係なんですよ!??
あ、待って?
聞いてなかったけど、もしやベルキスさんは男性が恋愛対象?!
しまった!そっちも聞いてなかった!!
「えっと‥」
「やっぱり!お姉様の読んでいた小説では、恋人はキスをし合うって書いてあったのに、できないという事は愛し合ってないって事ね!」
情報源んんん!!!
ちょっとピュアで可愛いなって思わず思っちゃったけど、そんな場合じゃない。どうしたものかと思っていると、ベルキスさんが静かに私の方へ歩いてくる。
「ミヒロ」
ベルキスさんに呼ばれて振り返ると、
チュッと何かが頬に当たる。
そうして、それがベルキスさんの唇だと気付いて、私の顔は一気に真っ赤になった。瞬間、レイノル様は「きゃあ!!」って言って手で顔を隠すし、後ろの騎士さん達は「わぁあああ!!」「ちょ、バカ俺も見たい!」とか言ってるけど、そろそろ殴っていい?
「‥レイノル様、これで信用して頂けますか?」
ベルキスさんの言葉に、レイノル様は顔を真っ赤にして口をパクパクと動かすだけだ。そらそうだよね、小説でときめいちゃってる女の子がこんなイケメンが頬にとはいえ人にキスしたの見たら、刺激強いだろうしね。
しかし、今ならこのまま畳み掛けられる気がする!
私はベルキスさんに寄り添って、にっこり微笑みかけると、ベルキスさんはちょっと驚いた顔をする。いいから合わせてくれ!!
ベルキスさんの腰に手を添わせつつ、レイノル様を見つめる。
「‥レイノル様、どうか私達を認めては頂けませんか?それともここで唇にキスをしないとダメですか?」
「ちょ、ちょっと待って!!!それはいいわ!!結構よ!!っみ、認める!結婚を認めるから!ちょっと二人とも離れて!!」
真っ赤な顔で恥ずかしすぎるわ!!と、必死に止めるレイノル様に私は心の中でガッツポーズを取った!よっしゃ!!言質頂きました!!!
レイノル様の趣味は、メイクとお姉様の恋愛小説をこっそり借りて読むこと。
(しかしお姉様にはバレバレという)