講座が増えた男装女子。
まさかの魔物と遭遇して、竜の産卵に立ち会い、私は三日目の朝だというのに、すでにお腹いっぱいである。私はただの一般庶民だったのに、なんでこんな事になっているんだ。
一方あれだけぺったりくっついていた星竜のキノは疲れてしまったのか、私のシャツのポケットの中で爆睡をしている。‥君は本当に大物だね。
ちょっと緊張しつつ、フィクトルさんのいる執務室へベルキスさんと一緒に報告へ行く。
すると、話を聞いていたフィクトルさんものすっごい険しい顔になっていく。
え、何かまずかった?私は思わず心配になってベルキスさんを見上げると、椅子に座って聞いていたフィクトルさんはベルキスさんをじろっと見上げる。
「産卵‥、僕も立ち会いたかった!!!」
「そ、そこ?!」
「あのねミヒロさん!産卵の瞬間ってなかなか立ち会えないんだよ!僕まだ一回しか見てないんだよ‥。いいなぁ〜〜!!見たかった!!もうベルキスそういう時、ちゃんと呼んでよ!!」
ぶうぶうと文句を言うけど、なるほどフィクトルさんも竜が好きなんですね。そうなんですね。
「竜の巣の外回りだって警備は必要だろう。クチナシが竜の巣に入り込んで来たらもっと最悪だ」
「そうだけどさ〜〜。しっかしミヒロさん竜の巣の産卵に立ち会えるなんてすっごいね。しかも竜に触ったとか‥、普通は怒られるんだけどね〜」
そ、そうなの!?
あの赤い竜、優しくて良かった‥。思わずホッと息を吐く。
「だけど、そっかミヒロさん。最深部まで入れるなら他の騎士と組ませて竜の巣を調べてもらうのもいいかもね」
他の人?
ベルキスさん以外の人って事?
と、ベルキスさんがすかさず「ダメだ」と言い放つ。
「まだ日が浅い上に、この世界の事も知らないのに、竜の巣に他の騎士と入るのは危険だ」
「そりゃ日が浅いし、世界の事も知らないけど、ベルキスと結婚してるし問題ないだろ?それに女性だったらいざ知らず、同性だよ?問題ないでしょ」
えーと‥、実は女でーすとは言えない。
私はなんて答えたものかと思っていると、ベルキスさんの表情が途端に無表情になってフィクトルさんはちょっと後ずさる。
「ちょっと!そんな怒った顔をしてもダメだからね!竜の巣に入れる騎士は少ないから、少しでも竜に慣れて欲しいんだってば!ベルキスだっていつまでもここに配属されているとは限らないんだから!」
「‥俺はずっとここにいるし、ミヒロはダメだ」
「ベルキス〜〜〜!!」
フィクトルさんの眉が下がって、ほとほと困り果てている。
どうしたものかと私はベルキスさんを見上げる。
「‥あの、私は別に大丈夫ですよ?」
「ミヒロ!」
「ほらほら、ミヒロさんいいって!!ね!ベルキス!!」
ベルキスさんは私をジトッと睨むように見つめるけど、私は男子。
結婚したけど、あくまで友人。
‥友人なら、こんな時なんて言う?ちょっと悩んで、私はしっかりベルキスさんを見つめる。
「‥ベルキスさんのお仕事、頼りないだろうけど‥少しでも手伝わせてください」
「‥だが、」
「困ったら鍵を使います。助けて下さいね」
シャツの中に掛けてある鍵を指差して、ベルキスさんに笑いかけると‥、ベルキスさんは小さく息を吐く。
「ラスカか、フィクトルとなら‥」
「え、僕もいいの?!」
「‥消去法だ」
「酷い!僕、優しいよ?」
何だろう、ちょっと白々しく聞こえるのは‥。
気のせいか?
ベルキスさんは私の頭をわしゃっと撫でて、シャツの中を指差す。
「‥鍵は常に手に握っておけ。護身術はマナー講座の後に教える」
「授業が増えた‥」
「当たり前だ。何かあったら危険だ」
「ベルキス〜〜。パートナーを大事にするのはいい事だけど、僕達も信じて〜〜」
フィクトルさんがちょっと面白そうにベルキスさんを見上げている。
「‥本当にベルキスはミヒロさん大事なんだね〜。ラブラブでいいねぇ」
「ら?!!!」
思わず顔が赤くなって俯いたけど‥、
私の中の乙女心が「君は男子だぞ〜〜?」って突っ込んだ。知ってるってば。現在女性ではない私は、すんと表情が静まって顔を上げるとフィクトルさんに、「怒った??ごめん!」って言われたけど、怒ってはいない‥。虚しいだけである。
竜が大好きなフィクトルさん。
キノに触りたくて、お菓子を常に常備するようになります。




