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男装女子は竜を飼いならす。  作者: 月嶋のん
男装女子と竜騎士の日常。

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お手伝いだ男装女子。


ベルキスさんと最深部まで足を進めると、昨日と違って空気が暑い。


「‥なんか、暑くないですか?」

「‥恐らく別の竜が産卵しているんだろう。熱が放出されるんだ」


産卵!??

ベルキスさんはそう言うと、横に繋がっている穴の奥へと歩いていく。

と、そこは水色の竜とは違う、更に大きな赤い竜で‥、じっと地面に蹲っている。



「やはり産卵か。父竜は‥出かけているのか」

「え、ど、どこに??」

「餌を採りに行ってるんだろ。それを察知して魔物が近寄って来てたんだな」

「洞窟にいるのに??!」

「独特の匂いがするらしいな」

「執念がすごい‥」



思わず感心していると、岩場からぞろぞろと黒い丸い目玉みたいな魔物がそこかしこから出てきた!!!丸い黒いボールがうじゃうじゃと出てくる様子は気味が悪い。そういえば卵を食べようとするって言ってたな!!さっきの大蛇よりは怖くないけど、こっちはこっちで嫌だ。



そう思っていると、ベルキスさんは私を地面に下ろして剣を取り出した。



「俺は魔物を倒すが、この竜は初めての産卵で緊張している。ミヒロならば大丈夫だと思うから、側についていてやってほしい」


「か、噛みつかれたりとかは!??」

「ここにいる時点でそれはないな。そもそも星竜が気に入ってくっついているくらいだ」



星竜‥。

ふと首を見ると、つぶらな目で私を見上げている。

君はこんな時でも平静だね‥。


「‥分かりました」

「頼む!」


そう言うや否や、ベルキスさんは剣を構えて魔物を倒しに行く。

私は私で大きな赤い竜の側へ駆け寄ると、赤い竜は黄色の目で私をチラッと見上げると、目を伏せて耐えるように口を噛んでいる。



だ、大丈夫らしいけど‥。

何か私にしてあげられる事、ないだろうか‥。



グウ‥と、低く唸っている竜を見ると、心配になってくる。

苦しいのかな、痛いのかな‥、一人で産卵なんて不安だろう‥。そっと近寄って、長い首に触れて、ゆっくり撫でると赤い竜はちょっと目を開けて私を見つめる。


「ご、ごめん。嫌だったらやめるけど‥苦しそうだなって‥」


そう言うと、赤い竜は静かに目を閉じた。

どうやら撫でていいらしい。


私は少しでも楽になったらいいな‥と気持ちを込めつつ、首を何度も何度もさすりつつ、ものすごい数の黒い目玉の魔物を追い払うベルキスさんを見る。



竜の巣に誰でも入れる訳じゃない。

それでもって、魔物から卵や竜も守る仕事って、こんなにもハードなんだな‥。ベルキスさんの「竜を守るだけの騎士」と見ている人達の目ってどんな仕様なの?って思ってしまう。



「グゥゥウウウウ‥!!!」



赤い竜が唸って、私はハッと顔をあげる。

と、尻尾の辺りから私の顔くらいあるんじゃないか?って大きさの卵がコロコロと出てきた!



「あ、産まれた!!」



私が声を上げると、赤い竜はふうっと息を吐いて‥そして体をゆっくり起こすと、その卵をゆっくり自分の体に引き寄せる。これで終わり?なのかな‥。



「産まれたか?!」

「あ、ベルキスさん。一個だけだけど産まれたようです」

「ああ、大型の竜は大体一つだけ産むんだ‥」

「そうなんですね‥。あ、魔物はもう大丈夫なんですか?」

「あらかた片付けた。魔物は卵が産まれた一瞬を狙うんだが、産まれてしまえば親が交代で守るからもう大丈夫だ」



そっか‥。それは良かった。

ホッとして赤い竜の前にしゃがむ。


「頑張ったね‥。お疲れ様でした」


そういうと、赤い竜はちょっと顔を上げて、私の首の方へ近付くので星竜はパッと私の背中へ逃げた。あ、こら、ずるいぞ!!


スリッと、私の顔に赤い竜は顔をすり寄せて、まるで笑っているかのように目を細めて、静かにまた卵を抱え直した。



「‥えーと?」

「お礼を言ったんだな」

「そうなんですか?!大した事してないのに‥」

「いや、竜は気持ちを察知するからな。不安な中、嬉しかったんだろう」



自分だって大変なのに‥。

竜が大事に卵を抱えている姿を見て、胸がジンとする。

ベルキスさんがこの仕事が好きって言ってたの‥わかる気がする。



「竜って、可愛くて優しいんですね‥」



私がそう呟くと、ベルキスさんは嬉しそうに頷いて、背中に隠れていた星竜は私の肩で「キュウ!」と鳴いた。



「‥そういえば、君はそろそろ家に帰りなさいよ?」



私がそう話すと、星竜はすかさずシャツのポケットに潜り込んだ‥。

帰る気ゼロか‥。

ベルキスさんを見上げると、「しばらく一緒でもいいぞ」って言うけど。いいのか?希少種なのに‥。シャツのポケットから顔を出した星竜は、「キュウ!!」とまるで賛成!のように話すけど‥、全く君達は気楽だな?





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