ダンスする男装女子。
ダンスの練習をしていたら、ベルキスさんが部屋へ入ってきた。
あれ?もう訓練は終わったのかな?
時計をチラッと見ると、夕飯の時間に近いけど、早いような?とりあえずロアン君から離れて、お礼を言うとにっこり笑い返してくれた。未来の紳士だな。
ベルキスさんの方へちょっと小走りで駆け寄って顔を見上げる。
「ベルキスさん、お仕事お疲れ様です!今日、頑張りました!」
ロアン君に勉強面は褒められたんです!と、にこーっと笑ってベルキスさんに報告すると、ベルキスさんはちょっと驚いた顔をしてから、眉を下げて笑う。
「‥‥楽しかったようで、何よりだ」
「はい!ダンスもちょっとステップ踏めました!」
「なかなか飲みこみが早くて助かります」
「ありがとう、ロアン君!」
ロアン君にまたも褒めてくれて、私は嬉しくてニマニマしてしまう。
ベルキスさんはそんな私を見て、
「じゃあ、一曲踊るか」
「えっ!!今?!」
「練習しておかないと、レイノル様の足を踏むぞ?」
「ええ〜、本当にやるんですか?」
「今やっておかないでいつやるんだ‥」
問答無用でベルキスさんが私の腰に手を添えるけど、ドキドキしてしまう。
ご自分の顔の良さを自覚して欲しいなぁ〜。
「えーと、ベルキスさんつかぬ事お尋ねしますが、男性と男性ってどちらがリードをするんですか?」
「この場合誘った方だな。俺がリードする」
「了解で〜〜す‥」
うん、男性と男性ですよね。
はい、乙女心落ち着いてね。一応結婚してるけど、男性同士で友人同士という概念だからね。ロアン君はウキウキしながら私とベルキスさんを見上げる。
「じゃあ!僕、音楽掛けますね!」
「え、音楽付き?!!」
「習うより、慣れろです!!」
「ええ〜〜、で、出来るかな‥」
四角い箱をロアン君がいじると、音楽が流れてくる。
え、すごいな。それ今度見せて貰おう。
そう思っていると、ベルキスさんが足を動かすので私も慌ててステップを踏む。といっても、初歩の初歩。
ベルキスさんもそれを理解してくれていて、リードをゆっくりしてくれるので、何とか踊れてる。今更気付いたけど、ベルキスさんも踊れたんだな!流石副団長!
‥とはいえ、顔を合わせて踊らなきゃいけないんだけど、照れ臭いし、緊張してるし、ステップは気になるし、顔を上げられない!!
「‥ミヒロ、顔を上げろ」
「う、うぅ、む、難しいです」
「‥さっきはロアンと笑いながら踊ってたろ」
「だ、だって、音楽はなかったし、あとベルキスさんだと緊張する‥」
だってさ、ベルキスさん、顔がいいんだもん!
顔の良いイケメンと密着してダンスを踊っているだけで、心の臓がバクバクいってるのに、笑って踊れるか!!どんだけ鋼の心臓でも難しいからね!?
と、私の体がグルッと回転する。
「え?!」
「顔を上げないと、ずっと回転させるぞ」
「え、ちょ、待って?!なんで回転??わぁああ、ステップ分かんない!!」
「ほらこっちを見ろ」
「待って!!待って下さいってば!!」
クルクル回転させられて、もう目が回るし、ステップはめちゃくちゃになるし、何とかベルキスさんを見上げようとするけど、もはや不可能な気がする。
「無理ですってば〜〜!!」
慌ててベルキスさんの腕を掴むと、ベルキスさんは私の体をクルクル回転させて、そのまま腕の中にすっぽり包み込んだ。
え、何だ、それ。
「‥まぁまぁだな」
「いや、もうめちゃめちゃですよ‥」
「だが面白かったろ」
「お、面白いというか、踊れてたのか?みたいな‥」
「最初はそんなもんだ」
そうなのか〜〜?
私が疑いの眼差しでベルキスさんを見上げると、ニヤッと笑う。
う、顔がいい‥。
「次回は回転はやめて下さいね」
「じゃあちゃんと顔を上げろ。相手を見ないと失礼にあたる」
「頑張ります‥」
そう話すと、ベルキスさんが私の体を離してくれて、ようやく一息つけた気がする‥。
「ロアン君、ごめんね。せっかく教えてくれたのに‥」
「いえ、見せつけるには十分過ぎるくらいかと」
「見せつける??」
レイノル様にとか?
あ、そうか、そうか貴族の人に結婚したんだぞ〜って分かって貰わないとだもんね。ウンウンと頷くけれど、ロアン君は若干心配そうに私を見つめる。ん?何か違うのかな?
不思議に思っていると、ため息をついたベルキスさんが私に声を掛ける。
「‥ミヒロ、夕飯に行くぞ」
「あ、はい。ロアン君、今日はありがとうございました!」
「いえ、こちらこそ楽しかったです。あと宿題としてこちらの本を読んでおいて下さいね。女性へのマナーが書いてあります。明日までにざっくり目を通しておいて下さい」
にっこり笑って本を渡してくれたけど、これ結構な分厚さだよね‥。
ロアン君は結構なスパルタだな。
ロアン君の音楽はポップスも好きだけど、ジャズも好き。
「クラシックジャズもいいですけど、コンテンポラリーな曲調もいいですね」
って言われるけど、よくわかんなーい。




