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男装女子は竜を飼いならす。  作者: 月嶋のん
男装女子と竜騎士の日常。
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求婚される男装女子。


真っ暗なトンネルをベルキスさんは慣れた様子でどんどん歩いていく。


私はそこかしこで「キュウキュウ」だの、「グルグル」だの、「キェ!!」と鳴き声が聞こえてくるので、ビクビクだ。私は男ですよ〜〜。噛みつかないで下さい〜〜〜。



さっきのベルキスさんの言葉が確かならば、私は竜のいる世界へ来てしまって、現在竜の巣と呼ばれている場所にいたらしいけど、これからどうなってしまうのか、不安とか不安とか不安しかない。



「ここから出られる」



ベルキスさんがそう言って、目の前の木の扉を開くと、さあっと爽やかな風が頬を掠める。


そうして、眩しい光を感じてちょっと薄目になる。

うう、眩しい〜!

そっと目を開けて、私は驚いた。



扉を開けた先は、広い芝生が広がっていて、遠くには滝が流れている。

その滝が流れている大きな岩壁がまるで芝生の中を囲うように広がっている。‥これ、私の世界じゃないですね!完全に異世界ですね!?そもそも昼夜逆転してるし??!



私はベルキスさんを見上げる。



「あ、あの、つかぬ事をお尋ねしますが、ここって、なんという国でしょう?」

「リシャフを知らないのか?」

「‥もしかしたら、私、違う世界からここへ来た可能性が‥」

「違う世界‥異世界人だったのか?」

「え、もしかして異世界人って割とメジャーな存在!?」

「‥メジャーはよく知らんが、異世界人は年に数回現れると聞く」



そ、そうなんだ!

じゃあ、もしかして戻れる可能性もある?!と、期待に胸を膨らませていると、



「‥元の世界には戻れないから、こちらの世界で生きている」

「か、神も仏もいなかったぁああああ!!!!」



思わず頭を抱えてしゃがみこんだ。

なんてこった!!気が付いたら持ってたカバンもないから、まさに身一つでこの世界へ来ちゃったって事!?しかも帰れない!!じわっと涙が出そうになっていると、ベルキスさんが私の頭をポンと叩く。



「‥竜の巣に入ってくるなんて、死にたいか、ただの馬鹿かと思ったが、そういう事ならここは騎士団だ。ちゃんと保護してやる」


「っへ?」



顔を上げると、ベルキスさんが私をじっと見つめる。



「‥竜に好かれるって事は俺の仕事も少し減らせそうだしな」

「そ、そんな感じですか?!」



まさかの仕事の分担の為!?

い、いや、でも身一つでこの世界へ来たんだし、仕事があるのは願ったり叶ったりだ。私は立ち上がってベルキスさんを見上げる。



「‥あの、本当に仕事を?」

「竜は基本的に正しい人間を好み、悪意を持つ者を嫌う。竜の巣、しかも子竜の所に親もいたのに追い出されないって事は大丈夫だろ。そこは信用している」



まさかの竜のおかげで!!

神と仏はいたかもしれない‥。私は光明を見た気分になっていると、ベルキスさんは私をジッと見つめる。えーと、なんですか??



「‥ところで男として、俺と結婚しないか?」



っへ?

なんですと?



男として?

私はさっき自分は女だと言いましたよね?



「な、なんで、私が男として‥」

「面倒な事に求婚されていてな‥。そんな俺が男と結婚したとあれば先方も諦めてくれる。了承してくれれば仕事を融通するがどうする?」


「ど、どうって‥」



言いかけると、滝の方から誰かが馬に似た生き物に乗ってこちらへ走ってくる。銀色の髪に青い瞳をしたちょっと少年っぽさの残る顔立ちの青年がやってきた。お、またもイケメンだ!



けれどその人は私を気にする事なくベルキスさんに話しかける。



「ベルキスさん!!また皇女レイノル様から結婚の申し込みが来てます!!」

「‥またか。まぁ、いい。俺はもう結婚する」

「へ!??」



ベルキスさんの言葉に、銀髪のイケメンは目を見開く。

私も驚いて目を丸くするけど‥、あの、もしかして、そのお相手って‥。ダラダラと冷や汗が背中でナイアガラの滝になっている。


ベルキスさんはチラッと私を見て、小声で話す。



「‥仕事も寝床も欲しいだろ?まぁ、半年だけ一緒にいてくれればいい」



それ脅迫ーーーー!!!!

おい誰だ、竜の巣に入れるのは正しい人間って言ったのは!確かベルキスさん本人だよね!?その提案はどう考えても無謀だと思うし、それってどうかと思いますよ?!私はジトッと睨んだけど、仕事も寝床も欲しい。



「‥半年、ですよ」

「ああ。()として、頼むぞ」

「‥絶対無理があると思いますよ?」

「バレないように頑張ってくれ」



そんな他力本願ーーーー!!

涙目で睨むけれど、私は圧倒的弱者である‥。

ベルキスさんに最初に見つけられて果たして私は良かったのか、悪かったのか‥。小さく頷くと、ベルキスさんはふっと小さく笑った。



「契約成立だな」



こんな悪魔みたいな求婚ある?

クーリングオフはあるのだろうか、いやここは異世界、きっとないな‥。





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