お仕事初日男装女子。
食堂で大盛り上がりした騎士団。
結局、演習場での朝礼の結婚報告は割愛されたけど、騎士さん達は口々に野太い声で「おめでとうございまぁああす!!」と叫んでいた。すごいなベルキスさんへの憧れ‥。
「‥ミヒロ、竜の巣に行くぞ」
なんか若干疲れた顔をしているけど、ベルキスさん大丈夫か?
「‥ベルキスさん、すっごい慕われているんですね」
「あ?ああ、ただ仕事しただけなんだがな」
「いや、十分すごい事だと思いますけど‥」
ただ仕事をしただけって言うけど、あの黒い竜のディーに乗って戦ったんでしょ?とりあえずすごい事なんじゃないか?
全く自分を飾らないどころか、そんな話もしないから、あまり戦っている姿がちょっと想像できないけど‥。そんなことを考えていると、あっという間に竜の巣の扉の前だ。
門番の人に声を掛けてから、ベルキスさんが竜の巣に繋がる木の扉を開けると、ギィッと重い音がして、扉の中を覗くと真っ暗だ。
「今、明かりを点ける」
そう言って、手元の持っているランタンの中にふっと息を吹きかけたと思ったら、ぼんやりとした明かりが点いた。
「あまり眩しいと竜が驚くからな」
「なるほど‥」
「この明かりはミヒロが持っていろ。俺は大体この中は覚えている」
「ありがとうございます」
ベルキスさんはもうここに12年も働いているから、地形は全て頭に入っているらしい。すっごいな!
ランタンで辺りを照らしつつ歩くと、昨日は気付かなかったけど、ちょっとヒヤリとする洞窟の中。一年中この温度らしく、その為に竜を育てるのに最適な空間らしい。なるほど〜〜。確かに寒すぎても暑すぎても困るもんね。
竜の巣に一度に入れるメンバーは二人一組。
唯一ベルキスさんは竜達に許されていて、いつでも入れるようだ。は〜〜!竜からの信頼は絶大なんだな。でもこの人、私をしょっちゅう騙すよ?そう思いつつ、隙あらば私を騙すベルキスさんの横顔を見上げる。
ぼんやりと照らされた横顔はキリッとしていて今日も格好いい。強くて、竜にも信用されてるってなれば、それは確かに騎士団の人達もあんな風に憧れるのも当たり前‥なのか?
と、急に私の首元に何かが触れた。
「ひゃぁあ!??」
「ミヒロ!?」
「く、首、首に何か!!!」
ベルキスさんがすぐに私に近寄って、首を見て‥、そっとそれを取ってくれた。
「な、なんだったんですか?」
「竜の子だ。これは一番小さなタイプだな」
ベルキスさんの手の中を覗き込むと、手の平サイズの小さな竜が目をパチパチと瞬かせて私を見上げている。よく見ると淡く発光していて、とても綺麗だ。
「可愛い上に綺麗‥」
「これは希少種なんでな、乱獲されてもうここにいるだけだと言われてる」
「乱獲‥。竜を?」
「薬にもなるし、武器にもなるからな。昔は多かったそうだ。今は法によって禁止されている」
‥どの世界にもそういった事はあるんだな。
なんだか複雑な心境になるけれど、図らずも守るお仕事に就く事になったんだし、それなら私もしっかり竜を守らないとな!
じっと私を見ている竜の頭をそっと指の腹で撫でる。
「えっと、今度からここで仕事をするミヒロです。よろしくね」
そう言うと、小さな竜は「キュ」と高い声で鳴くと、パタパタと空中を飛ぶ。
私は釣られて上を見上げると、
「あ!!え?星??」
天井一杯にキラキラと輝く星のような光に目を見開くと、ベルキスさんが面白そうに笑う。
「面白いだろ?あれは星竜って言うんだ」
「綺麗ですね‥」
「そうだろ。しかも人懐っこいんだ。ミヒロを覚えたろうから、また首元にやってくるぞ」
「え‥」
思わず首元を抑えると、ベルキスさんが可笑しそうに笑う。
「首までちゃんとボタンを閉めておいて正解だったろ。人懐っこいから、くっ付いてくるんだが爪で引っ掻かれる時もあるんだ」
「あ、それで‥」
「‥まあ、竜の巣以外でも気をつけておくに越した事はない」
え?普段も引っ掻かれるの??
私はベルキスさんを見上げると、
「‥‥ミヒロはすぐに騙されるな‥」
「それベルキスさんにだけは言われたくないです!!」
「そうか、じゃあ今後は気を付けてくれ。さ、仕事だ。これから竜の位置を教えるから、数がちゃんといるかチェックしてくれ」
うーん、なんか上手く躱されたように思うけど、まぁいっか。
ランタンを片手に早速ベルキスさんと竜の数チェックだ!
ゴツゴツした岩場を歩きつつ、竜の数をチェックしてくけど、あっちにもこっちも竜がいて、これを全部覚えてるベルキスさんすごくない?!と、私は感動した。
‥すぐ騙すけど。




