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…24… 王都へ





 ヴィリーの荷馬車を降り、彼らと別れて、そこからは徒歩での移動だろうとヘルトルーデは思っていたが、ローデヴェイクは違ったようで、彼は王都へ向かう適当な乗合馬車を無理矢理に停めて強引に乗り込んだ。


 御者や乗客の苦情など何の其のな態度の彼に、猫のヘルトルーデは身の置き所が無く、ローデヴェイクの肩の上で身を縮める。

 暫くそうしていたが、ヘルトルーデの性格的に耐えられなくなって、乗合馬車にはそれなりの人数の乗客が居た事から、彼の耳に猫の口を寄せて話し掛けた。


「(ねえ、どうしちゃったの?)」

「なにがかな? ヘルトルーデ」

「(目立つの、良くないんじゃない? 王都に行くんだし)」


 ローデヴェイクが肩に乗るヘルトルーデへと顔を向けた。

 距離が近すぎる。

 そう思って猫の身を引こうとすると、ローデヴェイクの手がヘルトルーデを押さえた。


「だからだよ? 此処まで来たら逃げ隠れしても仕方ないからね。堂々と王都に入り、堂々と城に帰るよ。寧ろ迎えに来いとさえ思うね」


 ヘルトルーデを押さえる手に少しの力が加わった。

 猫の身がしっかりと固定されるのを感じ、ヘルトルーデが疑問に顔を上げると、それを利用してチュッと口を合わせてくる。


 ヘルトルーデはそんな彼の行為に呆れて力が抜けてしまい、猫の尻尾が垂れ下がった。

 猫好きなのは理解するが、ヘルトルーデは呪いで獣化した猫で、本来は人なのだ。


「(あのね、ローデヴェイク)」

「王都に着いたようだよ? 降りようか。―――ミィちゃん、ラディ、ついでにヴァル、足元に気を付けて降りてね」


 猫の躰を押さえる手はそのままに、ローデヴェイクが乗合馬車から降りた。

 続いて三人が降りる。


 王都に入るのに、これまでの街であった諸手続きは無い。人の往来が激しいので、そのような事はいちいちやっていられないからだ。代わりに警備兵が幾人も立っている。

 雰囲気的には威圧感を放つ訳でもなく、のんびりとした感じに見えるが、仕事をしている証拠に彼らの眼光は鋭い。


 警備兵らの目の前を通り過ぎる時、ローデヴェイクが商売の時以外では深く被っていた外套のフードを取り払った。

 銀色の髪が陽の光に煌めき、彼の非常に整った容姿が露わになる。

 周囲が騒めき、警備兵らの鋭い眼光がローデヴェイクを捉えた。


「(……ローデヴェイク)」

「気づかれないなら自ら主張してみるしかないよね? 王都は広い。歩いて行くのは、もう、うんざりだよ。―――さて」


 肩に乗っている猫のヘルトルーデごと、ブワリと光の魔力が巻き起こった。

 ローデヴェイクが何らかの魔法を発動しようとしている。

 猫の毛も、ローデヴェイクの銀色の髪の毛も、彼の聖職者の服も。そして側に居るミロスラヴァ、ラディスラフ、ヴァルデマルに加え、周囲に居る者ら全てがローデヴェイクの起こす光の魔力の奔流によって、髪と衣服をはためかせた。


「(ローデヴェイク、何をしようとしているの? 此処は王都よ? この巻き上がる感じ、大きな魔法を使うつもりはないよね? そうだよね?)」

「使うつもりだよ?」

「(え?)」

「ヘルトルーデ、真正面を見て。遠くに城が見えるでしょ? あれが王城だよ」

「(う、うん。王都にあるお城だから、王城なのは分かるけど……)」

「あの城はね、いずれは王太子である私の物になる。つまりね?」

「(つ、つまり、何? あのね、此処で魔法を使うのは、)」

「自由に壊してもいいという事だよ、ヘルトルーデ」

「(……え、何を言っているの?)」


 獣の毛が逆立った。

 ピリリとした軽い痺れも肌に走る。

 それはローデヴェイクが大きな光の魔法を放つ前兆に他ならない。

 これまでの彼との旅で、ヘルトルーデは何度か見た事があった。


「(ローデヴェイク、止めて!)」


 両腕を広げ、左右の手それぞれにローデヴェイクが光の力を集結させる。

 バチバチとした昼間でも眩しい光が集まり、濃くなって、ますます輝き、目を開けていられなくなっていく中、光球がどんどんと成形されていった。

 大きく膨れ上がった光球は、次第に凝縮していく。

 無理矢理に密度を上げているのだ。

 ローデヴェイクが、今にもはち切れんばかりの光球を纏う両手を合わせた。

 その結果は言うまでもない。


「祝砲を上げよう。王太子の帰還だ―――」


 ドン、という轟音を立てて、凶悪でしかない光球を、ローデヴェイクが王城の一画に向けて放つ。

 直後、巨大な硝子が割れるような音が王都全体に響き渡り、時をおかずに城の一画が崩れる破壊音が遠くでする。


 その一連の光景に周囲が唖然とする中、口を開く事が出来たのはヴァルデマルただ一人で、彼は「魔王であった我ですら、怒りの感情に任せて魔王城の破壊はしなかったな。王城に張られた魔法防御結界を破るにしても遣り方があるだろう。力業とは呆れたものだ」と言い、それに対してローデヴェイクは「魔王であった存在に影響など無いだろうけれど、不快である事は確かでしょ。ミィちゃんとラディが可哀想だからね。それに、内側の悪意あるものに対処できない欠陥品なんて要らないよ」と吐き捨てた。




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