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ミラクル★フォーチュン  作者: よっしー
散策ツアー
19/19

19

そのあと僕たちは特に話もせずに日本庭園をぶらぶらし、しばらくしてみんなのところに戻った。すると弁天橋の辺りで山川がキョロキョロしているのが見えて、僕たちに気付くと山川はいかにもアッとなって駆けて来た。


「どこ行ってたんだよ。おれを一人にするなよ」


「悪い、ちょっとブラってた」


「あそこにハトが沢山いたよ」


「ハト?それより野鳥だろ?あそこら辺にいるぞ」


そう言って山川が双眼鏡を覗き始めると、ルナも続けて覗き始めた。しかしルナはなかなか見つけられないようで、「山川さん、どこ?」などと何度か山川に頼っていたが、やっぱり見つけられず終いには飽きて湖面を双眼鏡で覗いていた。


長らく井の頭池の方を観察したツアー一行は三角広場の方へ向かった。井の頭池の周辺はやっぱり人が多くて、大半は池だから実際に人が立っていられる場所の人口密度はかなりの数値になっていたに違いないので、僕は日本庭園までとは言わないが少々人気の少ないところへ行きたかった。その意味では三角公園はすごく良い場所で、広場だがら人が沢山いても人口密度は知れてるし、ベンチも多少あって少しは休憩できそうだった。正直足も疲れていたのだ。


僕は神田川沿いのベンチにドカッと腰を下ろした。広場の中央へ目をやると、そこにはボール遊びをする親子や鬼ごっこをしていると思われる子供たちがいたりして動きがあって、時おり吹く強い風に砂や枯れ葉が舞って何だか賑やかだった。そのあとに広場の北側へ目をやってみると、中央とは打って変わって全く静かでたまたまその辺りに人がいなかったから、風が吹かなければ動くものはないと言っても言い過ぎではないような状態だった。


そんな北側を見ていると何だか周囲の音が遠ざかり、強い風が吹いてもその景色はびくともしないように感じられたので、まるでそれは一枚の絵で僕はその鑑賞者みたいだったのだけれど、唯一動きとして強い印象を残したのは風によってひらりと裏返る枯れ葉だった。


ベンチのすぐ近くでは枯れ葉が多少のすき間を残して地面を覆っていて、風が吹けば幸運な一枚がひらりと裏返り、止まっていた世界に突然動きが加えられる。しかしそれは風が強く吹いていれば想像される動きであり、たいていの場合は僕にも多少その風が当たるので、それだけなら別に印象に残るほどのものでもないのだが、たまに僕が風を全く感じていないときに突然すぐ近くの枯れ葉が裏返ったりするので、僕はそれが目の錯覚だったんじゃないかと思って何とも不思議な気持ちになった。


とも子さんは相変わらず忙しくしていたが、僕たち三人は疲れたのでベンチに座ってボケっとしていた。午後の日差しは暖かくて、こうして座っていると日向ぼっこみたいで気持ちが良く、ときどき強い風が吹いても別段気になることもなかったので、僕は次第にウトウトし始めた。目を瞑ると身体が空に溶けて行きそうになって、眠りが近づいて来るのがよく分かった。夢もどうやら見え始めている。こんなときに見る夢はどんなのか想像もつかないが、おそらく股間を握り潰される夢ではないだろう。しばらく目を瞑っていると、僕は何か夢っぽいものを見てふと目を開けた。目を開けてもそこは何だか夢みたいだった。

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