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君と僕がいた夏  作者: 掃晴娘。
プロローグ
5/37

君との出会い④

 昼休み。

 コンビニで買った菓子パンを頬張っていると、背中とツンツンと突かれた。

 半分体を向けると、弁当を広げている彼女と目が合った。

「君ってお弁当じゃなくパン派なの?」

 僕の右手に握られたメロンパンを目にして言う。

 食事中は話しかけないでほしいな……と思いながら、無言でうなずく。

「そうなんだ。もしかして小食?」

「そういうわけじゃないよ。ただ、食べるのにあんまり興味がないだけ」

「胃に詰め込めれば、それでいい、みたいな感じ?」

「そう」

「そうなんだ」

 ピンク色の箸を咥えながら、ふーんと興味なさげに相槌を打つ。

 興味ないなら聞かなきゃいいのに。そう思い、前を向こうとして、再びツンツンと突かれる。

「なに?」

「君ってさ、何か部活に入ってたりする?」

「一応、美術部に入ってるよ」

「美術部? すごい、じゃあ絵上手なんだね」

「そんなことないよ。趣味程度みたいなものだから」

「じゃあさ、バイトはしてる? 好きな子はいる? どこに住んでるの?」

「いきなり訊きすぎじゃない?」

 目をキラキラさせ矢継ぎ早に訊いてくる彼女を少し疎ましく思い、ぶっきらぼうに言う。

「ね。転校生の気苦労が少し分かったかな」

「転校生の気苦労?」

 難しい顔をして、彼女は言う。

「転校してきたってだけで質問攻め。嬉しいし、ありがたいんだよ? いろんな子と仲良くなれるってわけだし。でも、根掘り葉掘り訊かれるのも、ねえ」

 少し疲れちゃう、と彼女は言った。

「だから、気苦労」

「僕を質問攻めにした理由は」

「何となく君にも共感してほしくて」

「したくないよ」

「つれないなあ。ご近所さんなんだし、仲良くしようよ」

「夏休み明けに席替えがあるから、あと一週間ぐらいだけどね」

 そうなの? と彼女は残念そうに言った。

「ここの席、結構気に入ったんだけどな」

 名残惜しそうに机をさすりながら言う。

「後ろからだとね、クラス全体が見えるの。授業中に手紙のやり取りをしている子たちとか、居眠りしちゃう子とか、景色を見てばかりの子とか」

 見ていて楽しいんだ、と言った。

「それにね」

 と、彼女は付け加えた。

「君がいるしね」

「何で僕?」

「私のイタズラ、もといサプライズにあんなにきれいに引っかかって驚いてくれるんだもの。離れるのは惜しいわ」

 君は逸材よ、と言った。

「またその事? 朝も言ったように―――」

 と言いかけたところで、遠くから、葵ちゃん一緒にお弁当食べよう! と誘われる声がして、僕は口を閉じた。

「うん! 今行くね!」

 彼女は弁当を手早く包み直し、気苦労してくるよ、と内緒話をするように口元に手をあて言うと、女子グループの方へと駆けていった。

 急に静かになり、ひとつため息をついた。

 先が思いやられる。

 早く席替えしてくれないかな、と思いながらメロンパンにかぶりついた。



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