(短編版)死んだのでチートを貰ってちやほやされるはずが、スキル「翻訳EX」のせいで何もかもおかしくなってしまい、助けてくれた少女をサイコパスだと思い込んで彼女から逃げる羽目になってしまった
とあるスイッチのダウンロードソフトに影響され、この小説を書いてみることにしました。楽しんでいただけると幸いです
まるで、大量殺人鬼を弾圧するかのごとく、世間の目は俺をきびしく貫いた。家から出れば、好奇の視線でみられ、子供たちからは指をさされて笑われる。
27歳彼女なしフリーターの俺は、近所に住む情報通のおばさんの標的と化していた。彼女により、俺は『笑って楽しむ』ための存在にされてしまったのだ。……何でそんな状態なのに俺は家にこもらず、普通に外に出てバイトをしているのだろうか。もしかしたらやけくそになっているのかもしれない。
「相変わらず授業はつまらなかったな。こんな生活が毎日続くなんて、耐えられないよ……おい、あいつがいるぞ。良し! 殺しちゃえ」
「いいね~」
「楽しそ~う」
俺よりもやけくそになっている子供たちに遭遇してしまった。気づけば前も後ろも子供たちに囲まれてしまった。まあ、子供の力なら大丈夫だろう。
「おらっ」
「えいっ」
「そりゃっ」
……全然大丈夫じゃなかった。力が、抜けていく。あまりにも多くの人たちが俺をおもちゃにしていたせいで、子供たちから殺してもいい存在だと思われてしまったみたいだ。
まあ、子供なら人を殺しても普通の人生を歩めるのだろう。悲しいけど、俺は虐げられたまま終わり、俺を殺した子供たちは仕事に恋愛に大忙しの充実した人生をあゆむのだろう。
……むだかもしれないけど、最後の悪あがきをしよう。
ピッ、ピルルルルルルルルルルルルルルルル
最後の力で少年のランドセルからぼうはんブザーを引きちぎり、それを力いっぱい引く。……どうせ少年たちは大した罪には問われないだろう。それでも、なぜかあがいてみたかった。
……もう、いしきを保てそうにないや。こんなにもうるさくブザーが鳴っているのに、俺のいしきはどんどん遠のいていく。……おやすみなさい。
「お気をつけください」
あれ? 声が聞こえる。俺は死んだはずじゃ……ここはどこだ?
美しい声により目が覚めると、そこは、まっくらな空間の中だった。上も下も、右も左も、全てまっくらな空間だ。だが、何故か自分自身の姿はハッキリと見える。……声の主が、姿を現したようだ
その姿を見たとき、俺の心臓は破裂してしまった……いや、心臓が破裂するほどのしょうげきを受けたのだ。あまりにも美しい。
もしオークションで販売したのなら、一束だけで家を買える金額になると思えるほど美しすぎる長い髪に、見ているだけで現実とうひできるほどの現実離れした可愛らしさを持つ顔。完璧な美を前にして、俺は目の前の存在が女神であることを悟ったのだ。
「よく見ました。私は神の女神です。私を称賛してくれてありがとう。」
あれ? 俺は彼女を直接ほめていないはず。まさか、俺の脳内を直接……
「これは本当です。 神は心を探求する能力をもっています。」
心を探求する能力……すごい、すごすぎる。さすがは神様だ。人間にはできないことを普通にこなしてしまう。
……神様という事は、何らかの理由によって俺……いや、私をここに呼んだのかもしれない。一体何のために……
「世界を見るために。 私たちはあなたを異なる文化の世界に送り、世界がどのように変化しているかを見ることができる幸せな女神です」
……ダメだ、私には理解することができない。彼女の言っていることが、何一つ分からない。私は、このくうかんでも役に立たない人間なのかな。
「あなたはむだな人ではありません。 私はあなたの人生を知っています。あなたはその日の寒さのために、壊れることなく自分のペースで働いて、すばらしい人生を送ってきました。 ……生まれた世界との相性が悪いだけです」
やさしい笑顔を浮かべていた女神様は真剣な表情になり、力づよく私の存在を肯定してくれた。そして彼女は右手を伸ばし、頭の上をやさしくなでてくれた。そして、優しく言葉をかけてくれる。
「それは言葉の相互関係の結果です。 あなたのスキルは私のスピーチをばかげた。 ……状況はオープンです! 歌ってください。 言葉が悪い理由を調べる」
歌う? この状況で、歌を……恥ずかしい。こんなに素敵な人の前で、歌なんて歌えないよ。
「恥ずかしがらないでください、あなたは私と同じようにします。 彼は困難な状況でも働き続けることができる人だからです。 ……あなたの歌は素晴らしいです」
相変わらず何を言っているのか分からないけど、彼女は天使の笑顔でこちらに微笑んでくれる。……彼女の期待に、応えなくっちゃ!
「一曲目行きます!『まきびしガエル』」
「私たちはカエルのように前進します。 ポールピョンヤンリニュー」
「しかし、私の足は火でいっぱいです。私の足が痛いなら、私はそれをします。」
「恐れてそれはできません。痛みを乗り越えて先に進みましょう」
「……」
今までは恥ずかしくて歌なんて歌えなかった。けど今は、楽しんで歌うことが出来る。女神さまの存在が、私の心を落ち着かせてくれる。彼女を見てみると、心地よさそうな表情で私の歌を聞いてくれている。……こんなに安心して歌を歌えるのは、これが初めてだ。
あれ? 何か、変なものが見える。これは何だろう。
????(転生者)
筋力:6
魔力:5
対話:8
知能:10
器用:2
機敏:8
装備:なし
スキル
翻訳EX LV1
どんな言語でも翻訳することができるが、スキルレベルが低いので完璧に翻訳することが出来ない。(このスキルは世界に干渉することが出来る)
歌姫 LV1
人々の心を動かす歌を歌うことが出来る。
この情報は、一体何? 歌姫ってなに?
……あれ? 何か変な感じ。この不思議な感覚は、一体何? とても、恥ずかしい感覚。
……頭が少しだけ重い。全身がくすぐったい。
「それは難しい。 あなたはそのように見えます」
驚いた表情の女神さまが、冷静さを失いながら大きな鏡をこちらに向けてくる。……えっ、なにこれ?
そこに移っていたのは、カエルの歌姫だった。
女神様ほど長くはないけれど、劣らぬ美しさを持つ水色の髪に、まるで女神さまの子供のような純粋な顔。服装も変わっていて、緑色の手袋にカエルフード付きの黄色いドレス。
……今は驚いている場合じゃないかも。女神さまに、最高の歌を届けなくちゃ。
「まっすぐ行こう!」
「私 た ち は ま き び し エ エ ル。 着 地 の た め に 痛 痛 み を 伴 う う」
「そ れ で も 僕 ら は 飛 で で い ん ん だ だ」
「輝 く 未来 に 向 っ っ て い く た め に」
可愛らしい声に戸惑いつつも私は歌を歌い終え、女神さまは笑顔で拍手してくれる。
「とてもいい曲でした。 心を動かす美しい歌」
……良かった。女神様、喜んでくれた。
「素晴らしく見える。 それはあなたを続けるのに最適な姿です。 ……なんでこんな感じ?」
女神さまに姿の変化の事を質問される。……女神様でも分からないんだ。
う~ん。姿の変化の理由……あ! そうだ。『翻訳EX』とかいうスキルの影響かもしれない。たしか、(このスキルは世界に干渉することが出来る)とか書いてあったはず。
翻訳が世界に干渉する? ……確か女神さまは「恥ずかしがらないでください、あなたは私と同じようにします。 彼は困難な状況でも働き続けることができる人だからです。 ……あなたの歌は素晴らしいです」とか言ってたはず。
『あなたは私と同じようにします』『あなたの歌は素晴らしいです』
……この二つの翻訳文が合わさって、『歌姫』というスキルが出来上がった? 『あなたは私と同じようにします』と翻訳されてしまったから、私は女神さまのような存在になっちゃったのかもしれない。『あなたの歌は素晴らしいです』と翻訳されてしまったから、私は歌う存在になってしまったのかもしれない。それらが影響して私は歌姫の姿になってしまったのかな。
「それで全部です。 これが理由でした。 ……すでに2つのスキルを持っているようですが、再生のメリットとして、強いスキルを与える必要があります」
納得した様子の女神さま。……強いスキル? 一体どういうスキルなのだろうか。
「あなたは知的な適性を持っているようです。 次に、知性のための強力なスキルを1つだけ書きます」
知性のための、強力なスキル?
「はい。ここに例があります。他の誰かの嘘を見て、それを証明するための知恵を彼または彼女に与えることができます。それで、あなたは政治的戦いに勝つことができます。また、しないでください。 相手の作品、好きな人の写真を読んでやることで、被写体にワクワクするスキルを与えることができます。 女の子から望まれること。」
……なんか、ピンとこない。翻訳のせいでどんなスキルなのかが分からない。もう何でもいいので便利なスキルを貰いたい。
「わかります。 それまでの間、「知識」スキルを送信してください。 このスキルを使用すると、すぐに不快になる可能性があります。 このスキルを効果的に使うことで、敵の攻撃を防ぎ、少女を病気から守ることができます」
????(転生者)
筋力:6
魔力:5
対話:8
知能:10
器用:2
機敏:8
装備:歌姫衣装
スキル
翻訳EX LV1
どんな言語でも翻訳することができるが、スキルレベルが低いので完璧に翻訳することが出来ない。(このスキルは世界に干渉することが出来る)
歌姫 LV1
人々の心を動かす歌を歌うことが出来る。
知識 LV5 ←NEW
効果的に使う事で、敵の攻撃を防ぎ少女を病気から守ることができる。ただし、このスキルを使用すると、すぐに不快になる可能性がある。
ステータスに、変なスキルが増えてしまった。……あれ? 名前欄が????になってる。どうしてだろうか?
「あなたは死んでいますあなたは生まれ変わり、新しい人生のように生きます。 もう一度名前が必要です」
女神さまが解説してくれる。そっか。私はもう、死んじゃったのか。過去の名前とも、別れなければならないのか。……名前だけじゃない。私を育ててくれた両親や、私に味方してくれていた友達とも永遠にお別れしなければならない。
……悲しい。
「……人生における愛と出会い。 ストレスを軽くすることはできません。 体重を克服し、牧岸カエルのように動く」
やさしく肩をポンポン叩きながら、女神さまは私をなだめる。……私、そんなに太ってないよ!
「あなたは大丈夫です。 ……さて、名前を付けましょう。 その優雅な外観と美しい精神にふさわしい名前。私たちの言語で表現されたあなたの溢れる魅力と正直さ……『オシア』。ええ、それは素晴らしい名前です。 今日からあなたはオシアです」
オシア……オアシスみたい。
「時間は近いです。 おしあちゃん、旅が楽しくなりますように」
女神さまが手を振りながら笑顔をこちらに向けてくれる。すると、次第に体の感覚がなくなっていった。……女神さまとのお別れは、ちょっと寂しいかも。
……
あれ、ここはどこだ? 私は死んだはずじゃ……
「パンは許可されていますか?」
パンですか。パン、パン……パン? 許可? そりゃ許可されているでしょ。パンを所有することが犯罪になる国なんて聞いたことないよ。ほしいなら勝手に買えばいいのに。……てかここどこ? 目の前の美しい女性は誰?
「翻訳が機能しなくなりましたか? はい、それは良い考えでした」
さっきからこの女性は何を言っているんだろう?
「パンはパンでも食べられないパンは何でしょうか?」
……私の頭の中に、いきなりなぞなぞが……答えはフライパン。この変な空間と言い、特殊なな会話を行うこの女性と言い、色々とおかしいよ。
「正解です! 最初からこうしていればよかったですね……」
私はまだ何も答えていないのに。
「女神は心の中を読むことが出来るのですよ。……それにしても、困りました。翻訳機能の付与をまたしても失敗してしまいました。このままではあなたは彼女と同じように翻訳機能が不十分なまま異世界転生することになります」
翻訳機能が不十分? さっきのはあなたが変な言葉をしゃべっていたのではなく、私が間違って認識していたってこと?
「はい、そうなります。あなたに残された道は2つです。私から翻訳系以外のチートスキルを貰い、先ほどのような質の低い翻訳機能を持った状態で、記憶を持ったまま人として別の世界に行くこと。もしくは記憶を失って全く新しい存在として生まれ変わる事です。輪廻転生とも言いますね」
このまま記憶を失って別の存在になるなんてイヤ。でも記憶を持ったまま別の世界に行く場合、さっきみたいな意味不明な言葉を聞き続けなきゃいけない。そんなの頭がおかしくなっちゃう。一体どうすれば……彼女と同じように? 意味不明な言葉しか聞くことの出来ない状態で、別の世界に行ってしまった人がすでにいるの?
「はい。彼、いや彼女はもうすでに出発してしまいました。……それが、どうかしたのですか?」
彼女の冒険をみてみたい。それで、それを見てからどちらの道を選ぶか決めたい。
「分かりました。ちょうどあなたを送った後に見てみようと思っていました。……それじゃ、二人で一緒にオシアちゃんの冒険を見てみましょうか」
「あなたは素晴らしいですっ!」
カキィンッ
少女の剣と巨大蛇の尻尾が衝突し、すさまじい衝突音が響く。剣の衝撃によりひるんだ巨大蛇のスキを見逃さず、少女は私を抱いてダッシュで逃走する。
「なぜあなたは丸い腰の怖い森をさまよっているのですか? あなたが何か間違ったことをした場合、それは大きな問題になる可能性がありますよね?」
笑っていればとても可愛らしいであろう魅力的な顔をこわばらせ、私を睨みつけながら走る少女。その迫力は巨大蛇にも負けず劣らず。
……そう、私は女神さまと別れた後、森の中へと放置されたのだ。女神さまは案外お茶目なのかもしれない。街を目指して森を進んでいたところ、巨大蛇に襲われたのだ。スキル『知識』を使って防御しようとしたところで、少女がやってきて攻撃を防いでくれたのだ。
「あっ、あっ、す、すみ……」
女神さまとは違って少女は私の心を読んでくれない。それは話すのが苦手な私にとって深刻な問題。それに、少女が怖くて思うように声が出ない。涙を流しながら少女の顔を見ることしか出来ない。
「はっきり言わないとわからない。 ……私は悪いようです。 泣かずに理由を説明できますか?」
私が泣いちゃったせいで、少女は罪悪感を感じてしまったようだ。彼女は困った様子で私の手を掴んでなだめながら状況の説明を求めてくる。……私が泣かなければ、彼女はこんなに困らなかったはずだ。
どんどんと涙があふれていく。それに従い少女は困惑を増していく。負の連鎖が、広がっていくのだった。
やがて、冷静さを取り戻した少女が口を開く。
「ごめんなさい。気分を害することはありませんでした。森に入らずに美しい女の子を危険にさらしたかっただけです...私が話していることは何も言う必要はありません。」 。」
「ひっ!」
彼女の言葉を聞いたとたん、私の目から流れる涙の量が増えてしまった。この人のそばにいたら危険だと、私の心が訴えてくる。早速逃げ出さなくちゃ。
ガキィンッ!
少女が力を抜いている隙をついて顎に頭突きをぶちかます。強力な巨大蛇の尻尾攻撃を防いだ彼女でも、至近距離からの顎頭突きには無力だったようで、苦しそうに叫びながら私をホールドする腕の力を弱めてしまう。今だ!
全力で暴れ、少女の腕から逃れることが出来た。……だが。
ガシッ!!
……捕まってしまった。私の左手は、ガシリと少女の右手に捕まれたのだ。
「ひぃぃぃぃっ! 私を、危険にさらさないでください。ごめんなさいっ、ごめんなさい!」
捕まっちゃった、捕まっちゃったよ。女の子を危険にさらしたがる少女に、左手を掴まれちゃった。……これは、死を意味する。私は再び、暴力によって生命活動を停止されてしまうのだ。
最初から無理だったんだ。巨大蛇の攻撃を受け止めることの出来る奴から逃げ切るなんて出来っこなかったんだ。そんな奴に出会った地点でジ・エンドだったんだ。
「ちいぃぃぃぃぃしぃぃぃぃぃきぃぃぃぃっ!!」
余りの恐ろしさから、知識のスキルを発動してしまった。……だめだ、今使ったところで意味がないのに。今の私は少女に捕まっている状態。攻撃をいくら防いだところで彼女から逃げ出さなければ意味がない。でも、冷静さを失った今の私はそのスキルにすべてをかけるしかなかった。
……なに、この感覚は。凄く、孤独な感じ。とても、つらい。
私は、不思議な感覚に苦しめられる。……あっ、スキル『知識』にはデメリットがあったんだ。すっかり忘れてた。
……私は、かなり出力を上げて『知識』のスキルを使ってしまった。
……
「ひぃぃぃぃっ! 怖い、怖い、怖いっ! 誰か、助けて。もう殴らないで、私をさらさないで。大人数で私を囲まないで。そんな目で見ないで、私を笑わないで……誰か、助けて」
ここはどこ? なんで何もないの? 何であいつらがいるの? 何で誰もいないの? ……あの子供たちは、どこ?
「びゃぁぁぁぁっ、ひゃあああああっ、ああああああっ!」
「ああ、いい。あなたは目を覚ましている。」
ん、ここはどこ……んんっ! 凶悪少女に、抱っこされてる。……私は、これからどんな目にあわされるの?
「本当に申し訳ありません。 私はあなたの契約条件を考慮せずに私の感情を打ち負かしてしまいました。 ……大変苦労しましたよね。 不幸な状況がありましたよね?」
慈悲深い表情で私の頭をなでる凶悪少女。……契約条件? もしかしてこの子、奴隷商? 私、奴隷として売られちゃうの?
……いや、そっちの方が都合がいいかもしれない。この凶悪少女は女の子を危険にさらして喜ぶ凶悪。対して奴隷を購入する人は恐らく快楽を求めている普通の人。相手が普通の人なら、『歌姫』のスキルで心を動かすことが出来るかもしれない。こっちのルートの方が、逃走成功率が圧倒的に高いはず。
問題なのは、凶悪少女の玩具にされてしまう事。それは奴隷化よりも最悪だ。前世と同じように、いや、前世よりも悲惨な一生を過ごすことになってしまう。何としてでも避けないと。
「……覚悟は決まりました、私はもう、泣き叫びません。早めに私を売ってください」
「私は歌に自信があります。私の歌は、きっと購入者を満足させることが出来るはずです」
「また、私には少女を病気から守るスキルがあります。上手く使えばお金を儲けることも可能なはずです」
「ですが、これらの能力は私の精神がおかしくなると失われてしまいます。つまり、あなたが余計なことをすると、私の商品的価値が著しく低下してしまうという事です。……価値が下がる前に、早めに私を売ってください」
凶悪少女が素直に私を売ってくれる確率はかなり低いと思う。でも、それでも最悪を避けるためにはその可能性に賭ける必要があるのだ。
彼女は私の話を聞いた後、左手を私の頭の上に乗せ、無言で私の頭をなで続ける。そして、優しい表情で口を開く。
「恐れることはありません。 私はあなたと一緒にいたいです。愛と安心をもって生きることはあなたの責任です。 私は永遠にあなたのそばにいるよ。 私は恐れていません」
私は絶望した。このままでは凶悪少女から、愛と安心(虐待・拷問)を押し付けられながら、永遠に一緒にいなければならないだろう。……先ほどのように冷静さを失っちゃだめだ。最悪の未来を避けるために、逃げ出せる隙を見つけて一気に少女から離れる必要がある。
……町が、見えてきた。遠くから見たら、中世ヨーロッパのような感じがする。入り口には門番が立っていて、その奥には大きな城が見える。きっと、お城を中心とした街なのだろう。
「気をつけて、努力してくれてありがとう」
「いいえ、それはあなたがしていることではありませんか? ……あれはどんな美少女?」
門番と凶悪少女は話し合い、門番は私の存在について少女に尋ねる。
……そうだ、良いことを思いついた。もし凶悪少女の性癖が、『幼い女の子の精神を持つ子供を虐待すること』ならば、彼女は『元男性の異世界転生者』に興味はわかないだろう。すべて伝えてしまえばいい。
「私の今の名前はオシアです。女神さまに導かれこの世界にやって来た異世界転生者です。……今はこんな姿をしていますが、実は私は、前の世界でおじさんをやっていました」
ちらっと凶悪少女の顔を見てみる。……だめだ、ほほえましい顔をしている。多分私に対する興味を失っていないのだろう。彼女は門番と一緒に優しい目をこちらに向けてくる。
……ならば。
「助けてください! 森を彷徨っていたら、この凶悪な少女に捕まってしまい、ここまで連れてこられました。彼女は嫌がる私を無理やり連れてきたんです」
瞳に大きな涙を浮かべ、門番の男性に力強く抱きつく。困惑する門番に対し、私は抱きつく力を強めていく。
「お願いします。この少女に、私には今後一切近づかないと誓わせてください」
門番の男性は、私の必死のお願いを聞き、気まずそうな様子に。
「ええと、ええ、はい、あなたは私を抱きしめるのをやめることができますか? ...我慢できないのが気になります」
私は男性から光の速度で離れ、彼の言葉を待つ。
「あじいちゃん、ごめんなさい、でもこの子に近づいてもらえませんか? 私は本当に彼女が嫌いです」
「......この子は親の祝福しらず、単独での支援を要請しました。人との距離を短くすることができません。あまり好きではないしないで」
「私はオセアニアが大好きなので、彼女の両親はそれを理解できませんでした。オセアニアでは見つけられなかった素晴らしい体験を彼女と体験したい。いつかみんなと一緒に笑ってくれるといいな」
だめだ。門番の男性は私を凶悪少女のもとへ送り、凶悪少女は私をハグして放さない。
……詰んだ。
もう、運命を受け入れよう。彼女の『愛』によって『安心』させられる前に、その内容を聞いて本番に備えよう。
凶悪な本性を持つのにもかかわらず、彼女の顔からは溢れそうなほどの優しさと慈悲深さを感じる。……もしかしたら、少女を危険にさらすことは彼女にとって慈善活動のようなものかもしれない。私は恐る恐る優しい顔をした凶悪少女に質問する。
「あなたが私に与えてくれる『愛』と『安心』について教えてくれませんか?」
その瞬間、街への門の前に一輪の花が咲いた。凶悪少女が、とびっきりの笑顔の花を咲かせたのだ。私達を見ていたギャラリーも、そのあまりの美しさに思わず視線を奪われてしまっている。多くの人を虜にする笑顔を放っている凶悪少女は、エキサイティングしながら言葉を述べる。
「オシアカーンはついに私を受け入れました ……私があなたに与える愛、つまり……私はあなたを受け入れます! あなたの過去がどんなに汚れていても、あなたがどのように見えても、私はあなたを「今」受け入れます。あなたの性格がどんなに曲がっていても、どんなに利己的であっても、私は同意します。 私の愛を込めて、「みんなと一緒に暮らす」ことの大切さを教えてください」
「私があなたに与えている安心は……私は何があってもオセアニアを守ります。世界があなたの敵に行くなら、私は世界の敵になります。この街の誰もがあなたを差別し始めたら、この街の人々を世界の敵に変えて、他の国から彼らを非難してください。あなたの健康な成長を妨げている人がいるなら、私はあなたと喧嘩します。 ……だから、心配しないで?」
彼女の言葉を聞き、私の目からは涙があふれる。何で私、こんなところで泣いているのだろうか。
……
「それじゃ、今からオシアちゃんの冒険を一緒に見てみましょう」
すごい。女神さまがぱちんと指を鳴らすと、真っ暗な空間の中に森の中の映像が映し出された。一人の少女が森の中を歩いている。……とても、可愛い。
でも、どうして森の中を武器も持たずに一人で歩いているのだろうか?
「……転移場所の設定をミスしてしまいました。オシアちゃんが無事に街までたどり着けるといいのですが」
質の悪い翻訳だけじゃなく、この駄女神様も不安要素に追加しなくちゃ。……やばい、オシアちゃんが巨大蛇に襲われている。貰っていたチートスキルによっては彼女に対抗手段はなく、ここでオシアちゃんは死んでしまうかも。
「そこは大丈夫です。結果的に彼女には防御スキルを与えることになってしまったから。あの程度の相手の攻撃ならいくらでも防げると思いますよ。……でも不味いことには変わりはありませんね。スキルの使い過ぎによるデメリットによって、彼女の精神が壊れてしまうかもしれません」
デメリット? チートスキルにデメリットなんてあるの?
「本来なら、彼女にはデメリット効果のない『察知』のスキルを与えるつもりでした。違和感に気づき、敵の不意打ちを防いでくれるとても優れたスキルです。もしオシアちゃんに『察知』があれば、蛇の存在に先に気づいて避けることが出来ていたでしょう。しかし、翻訳の暴走により、彼女には使うたびに不快になってしまう可能性のある『知識』スキルが付与されてしまいました。敵の攻撃を防ぎ、さらに少女を病気から守ることも出来る、意味不明なスキルです」
『知識』のスキルが敵の攻撃を防ぐ防御スキル? もう、意味が分からない。……やばい、蛇の口が大きく開き、オシアちゃんを丸のみにしようとしている。もし食べられてしまったら、防御スキルも意味をなさないんじゃ……
「あなたは素晴らしいですっ!」
カキィン!
「なぜあなたは丸い腰の怖い森をさまよっているのですか? あなたが何か間違ったことをした場合、それは大きな問題になる可能性がありますよね?」
蛇の丸のみが防がれた? きれいな少女が出てきて、オシアちゃんを守ってくれたんだ。……でも、何で彼女はいきなりオシアちゃんを称賛したあと急に怒り出したの?
「彼女は、オシアちゃんに注意を促しただけです。そして、丸腰で危険な森を歩いていたことを叱っているのです。……本当に彼女は優しいのですね」
……翻訳のせいで、全然優しい少女に見えないんだけど。
「あっ、あっ、す、すみ……」
「はっきり言わないとわからない。 ……私は悪いようです。 泣かずに理由を説明できますか?」
ほら、オシアちゃんが怖がっちゃったじゃん。でも彼女もちゃんと謝っている。案外根はいいやつなのかも。
「ごめんなさい。気分を害することはありませんでした。森に入らずに美しい女の子を危険にさらしたかっただけです...私が話していることは何も言う必要はありません。」 。」
「ひっ!」
……前言撤回。オシアちゃん、早くそいつから逃げたほうがいいよ。
「彼女は、危険な状態のオシアちゃんを見て、彼女を守るためについ大きな声を出してしまい、オシアちゃんを泣かせてしまったことを謝っているだけです。もう何も言わなくていいよ、とやさしく声をかけているのです」
私には、オシアちゃんがサイコパスに絡まれてしまったようにしか見えないんだけど。
「言葉というのは不思議ですね。話している側の感情とは関係なく、受け取る側の感じ方によって印象が大きく変わってしまう。……だからこそ、すれ違いというものが発生してしまうのかもしれません」