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01

物書きの知識のない人間の趣味による妄想の掃き溜めでございます。誰かの暇つぶしになれば幸いです。

 


「おぎゃああああ、おぎゃあああ」



小さな木の枠組みにこれでもかと詰められたふかふかの綿の中で泣き叫ぶ小さな生き物。

お腹が空いているのか、母に抱きしめてほしいのか、手を目一杯握りしめ、顔面のパーツがすべて中央に集まった顔で、声の限り泣き叫ぶ姿が外から見える。

赤ん坊がいるベットの反対側には、葉っぱの形をした黄緑色の絨毯の上に、ゆらり、ゆらりとゆれるロッキングチェア。そこに座っているのは、美しい絵画のような人。淡い水色の真っ直ぐな髪は、風でゆられると空気に溶けていくようにも見える。中性的な顔立ちで、見ようによっては男にも女にも見えるその人の、一重でタレ目な黄金色こがねいろの瞳は閉じられている。


 いつもなら少しすれば泣き止んでいるのに、今日は一向に泣き止まない。何かあったのかもしれないと俺は洗濯途中の服を放置して歩き出す。

キィッと軋む木のドアになぜか心臓が走り出す。嫌な汗まででてきた。震える声で名前を呼ぶ。


「……カナ?」


ゆらり、ゆらりと揺れるイスの横にはだらりと力が抜け落ちた手が見える。


「なぁ、寝てるのか?寝てるんだろ?……カナ?……………ッ」


カナの顔を覗き込み、肩に手を置いた瞬間、息をのむ。そこには、穏やかな顔からは想像もつかないほど真っ白で冷たくなったカナがいた。


――今日、命の恩人が赤ん坊を残して息をひきとった。






 目が覚めると奇妙なまるで魔法陣のような模様の上に立っていた。


「……ここは、どこ、だ?」


わけがわからず周りを見ると、魔法陣の外にぼんやりと光る赤い丸が二つ見えた。あたりは薄暗く、模様の周りにいくつかあるろうそくの小さな光では、それが何かがわからない。密室なのか空気がくぐもったような感覚で少し息苦しい。


「キオク…フウイン………セイコウ……テンイ、カイシ」


およそ人の声には聞こえない、機械的な音が聞こえると、魔法陣が光りだす。


「いや、ちょっ、まって!?な、何が起こって」


いるんだと声がしたほうに歩こうとした瞬間ぐにゃりと景色がゆがむ。そっとあたりを窺えば、宇宙空間のように暗闇の中に小さな光が無数にあった。幻想的な景色に感動していたが、すぐに激しい二日酔いのように気持ちが悪くなり嗚咽するが何も出てこない。どれくらいたったか、感覚がないため正確な時間はわからないが、体感では一時間くらいたった後、突然現れたうす水色の小さな光に引っ張られた。掃除機に吸われるように吸引される。吸引力によるものか、それとも無理やり小さな箱に詰め込まれているのか、身体中が痛くて悲鳴をあげる。


「お……い、あの子……すけ……げて……」


ぐにゃりとゆがんだ空間にあったうす水色の光が目の前に迫りチカチカと光を増していく。ギュッと目を閉じると、かすかに声が聞こえたような気がしたが、あまりの気持ち悪さに意識を手放してしまった。






 目が覚める事二回目。おはよう、こんばんは!ええい、あたりはオレンジ色だが、朝なのか夕方なのかわからない!!いや、そもそもどうしてこんなことになったんだ?思い出せない……。まてまて、まずは俺は誰だ!?と蹲る。体育座りをして丸くなると不思議と落ち着いた。パニックになって喚き散らさなくて済んだが、半泣き状態である。


 ああ、そうだ、俺は不良に体育館裏に呼び出されて、サンドバックに……、ってそれは読んでた漫画の話だ。ええっと、そう、仕事をしてた。残業だったんだ。毎日毎日残業で楽しみといえば帰りにコンビニで適当に選んだ漫画買って読むことだ。けど、おかしい、漫画の途中から記憶がない……。



 目が覚める前にいた場所の模様を魔法陣みたいだと思ったのは、異世界転生モノやファンタジー漫画を読んだ事があるからだ。ただ、どれも神様的な存在がいて、説明があって、転生しまーす!って感じか、生まれ変わってましたー!って感じじゃなかったか?俺は俺のまんまだよな?

ほら、手だって、白くて……細長、い?


「俺って日本人だしこんなに肌白くないし、手だってこんなにスラッとしてなかったよな」


「……あの」


自分一人しかいないと思っていたのに声が聞こえて変な声がでる。


「ひゃいっっっ!?」


大の大人がずいぶんと情けないものだと客観的に思うが、かなり油断していたんだ。どっぷり自分の世界にはいってて誰かいるとも思ってなかったのだ。


「あの…どちらさまですか?」


そりゃ俺が聞きたいと目をぱちくりした。ただ、先にこの場にいたのはきっと声をかけてきた人なのだろう。そう考えるとここで体育座りしながら独り言をぶつぶつ呟いている俺はとんでもなく怪しい奴なのでは…。


「あ、怪しいものでは……」


とりあえず、言葉にしてみたけれど、相手の反応が怖くて顔をあげれず、しかし、長めの沈黙にも耐えられなかった俺は他人にはとても信じられないだろう自分にとっての事実を話し始める。


「いやっ、そのっ、ここがどこだかわからなくてっ!いつも通りに!仕事帰りにコンビニ寄って帰ったはずなんです!漫画を読んでたのに、気付いたらここにいて!!俺も何が何だか……っ!!」


しどろもどろになりながら顔を上げ話しかけてきた人を見るとそこには絶世の美女が佇んでいた。しかも何やら耳が尖っている。

これは、ファンタジーでよくみるエルフとかいう生き物なのでは…??とぼんやりしていると目の前の美女は顔をぐしゃりと歪めて笑う。


「どうして君から愛しい人の香りがするのか…」

「は…?」

「同じ赤い髪色、同じ紫の瞳、けれど魂が歪んでいる。こんな歪な魂は見たことがない」


座り込んでいる俺に目線を合わせるようにしゃがむと頬に手を当てられ瞳を覗かれる。美女ってだけで、どう接していいかもわからないのに、この急接近。緊張で顔が赤くなるのも仕方ない事だろう。


「い、いやっ、ちょっ、お、俺は黒髪黒目のに、にに日本人ですヨ!?」


顔を隠すように腕を前に広げれば目の前の美女は先程の苦しげな顔からフッと力を抜いた笑みを浮かべた。


「…生娘のような反応だな。まぁ、よい。ここで話すのもなんだ、怪しいものかどうかはこれからの行動を見て決めるとしよう」


そういって立ち上がり付いて来いと言われ後ろに見える一軒家へと向かった。

正直何が何だか分からない状況で知らな人についていくことに抵抗があったが、草原から先に見えるのは右も左も後ろも森だったため、行動を起こそうにも危険を感じ、素直についていくのであった。

最後まで読んでくださってありがとうございました。

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