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脇役から主役へ!なりあがり主人公の冒険譚

皆様、はじめまして。夢見るもりもりたです。

この度、コロナで暇ですから書いてみることにしましました!続きが気になるような声がありましたらどんどん書いていきたいと思います!

みんなが一度は考えたことがあるような設定で少しテンプレから外れた転生ものを書いてみました!

皆様の暇つぶしになればいいなぁと思います。

改善コメントや感想をくれればどんどん改善していきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします。

「それじゃあ、今日もよろしくねっ」

「あぁ、わかったよ。」

「大丈夫、大丈夫!今日が最後だからね。」

快活な声で告げられたお願いに反し、俺こと緑川守也は憂鬱そうな声で呟いた。それもそうだ、なぜなら俺は今から

ーーーー人を殺すからだ。

一度や二度じゃない、もう何度目になるかわからない人殺し。しかし、俺はいまだにお縄につかずにおめおめと生きながらえている。

それには、とある複雑な事情があるからだ。

先ほどお願いをしてきた人物はイリスと名乗っていて自称女神だ。

わかってる、俺が頭おかしいことを言っている自覚はある。最初は俺だって信じていなかったさ。でも、何人も殺しているのに警察沙汰にもならず日常を送っている時点で信じなくてはならないだろう。

話が逸れた。複雑な事情とは言ったが詳細を省けば単純な話で、死ぬほどお金に困っていた俺にあの女が声をかけてきた。それだけのことだ。

当時の俺は目先のお金欲しさに加えて、かなりの自暴自棄であった。勢いに任せて殺してしまってからはそれを引き合いに出されてイリスに脅迫されてまた殺す。それを繰り返している。

さて、また俺は手を汚すわけだが手順はいつも同じ。

トラックで轢き殺す。これだけだ。

話は変わるが「転生者」というものをご存知だろうか。そう、最近流行ってるあれだ。

だいたい高校生くらいの若者がトラックに轢き殺されて異世界を救うために理から外れた力をもらい転生する。

疑問に思わないか?誰が殺しているのか、ということを。

勘のいい人ならば気づいたかもしれないが、その第一段階である「殺す」という手順を担っているのがこの俺だ。

転生はするんだと自分に言い聞かせているが、少なくとも地球での生は終わる。これは紛れもない殺人であるだろう。本当に後味が悪いのだが少しずつ慣れてきている自分がいることもまた事実だ。

あと、警察沙汰にならないのも神からの依頼であるからイリスが隠蔽してくれている。らしい。

「今日は、誰を殺すんだろうか……。」

事前にもらった情報に目を通す。そこには標的となる高校生の名前、年齢、顔、住所、交友関係、そして轢き殺す場所と時間が事細かに書いてある。

今日の標的な高校二年生の女の子であった。

「くそっ、あの性悪くそ女神め……!」

何度も思う。この詳細な情報は要らないだろう!俺の罪悪感を掻き立てるためなのか知らないが今度会ったら詰め寄ってみよう。できれば二度と会いたくないがな!

情報では幸か不幸か、今いるところからさほど離れていないので存分に自己嫌悪に陥ることができる。

それに今日が最後だ。こんな地獄の日常からついに解放されるんだ。

「…時間か。」

指定された場所に向けてトラックを走らせていく。都内の住宅地の一本道。この道を走り抜ける最中で角から飛び出した女の子を轢き殺す。

「大丈夫、いつも通り。いつも通り。なんやかんやいいつつイリスはいつもうまくやってくれている。おれは捕まらない。」

もう女の子を轢き殺す罪悪感よりも轢き殺した後の我が身についてしか考えられない。人のことを考えられない。この仕事が終わっても俺は正しい人間に戻れるのだろうか。

ーーーーグシャ

トラックに不意に衝撃があった。何度も経験した人を轢いたときの感覚だ。後はこのままいつも通り走りされば終わりなんだ。こみ上げてくる吐き気を飲み込みながらより一層アクセルを踏み込む。

しかし、今日はいつも通りにはいかなかった。

俺は視界の端である女を捉えた。何度も顔を合わせた俺が二度と会いたく女。

「イリス!?なぜこんなところに!」 

しかもあの女、携帯でどこかに電話していたような気がする。嫌な予感がする。

イリスに事情を聞くために戻る?だめだ、危険すぎる。もし今想定している最悪な予感が的中したら俺の人生は終わりだ。

やはりいつも通り、逃げるしかない。

………どこに?

もし今想定している最悪な事態、イリスが警察に通報ということが起きたとしたら家がない俺は即座に捕まることだろう。この車を置いて逃げようかと思ったがそれも無理だ。お金もなく、しかもここは都内。なにもできない。

「あぁ………もうどうでもいいわ。」

俺は諦めて現場に戻ることにした。今まで何人もの若者の命を摘んできた。ここらが潮時だろう。

あの女の最後の意味がわかった。俺に見切りをつけるってことだろう。

気づけば助手席にあの女が座っている。

「あれー?逃げないの?」

「うるせぇ、くそ女神。どうせ俺は終わりだろ。」

「もー、口悪いなぁ。まぁ、終わりなんだけどねー。警察にも通報しちゃったしねっ!」

「そんなことだろうと思ったよ。どうせ今日が最後って言った時点でそうするつもりだったんだろ?」

「うんうん、察しがよくてなによりっ!今危険がある異世界を救えるだけの人材はもう確保できたからね。平たく言ったら君はもう用済みなんだー。」

「俺はこれからどうなるんだ?」

「ん?普通に死刑じゃない?今までのひき逃げも全部暴露しておいたよっ!」

「ふっっっざけんなよ!そんな数えきれない数の殺人なんてバレたら即死刑だろうが!」

「だから言ってんじゃん。君はバカだなぁ。それにね、君が殺したのは11人。そんなに数えきれないだけの人数かな?」

「……!?」

「あのね、君にもう人の心はないのっ!お金のために人を殺すことを受け入れた狂人なの!自分を正当化して未来ある若者の命を摘んだ、犯罪者なの!」

「それは、お前が指示したからじゃ……」

「ほらっ!警察の皆様がお待ちだよ!早く降りた降りたー!」

「待てっ!話はまだ終わってないぞ!!!」

話していたらいつのまにか事故現場についていた。大きく凹んだ車体と事前に通報されていたナンバーを照らし合わせ、俺を犯人と特定した警察官が俺の周りを取り囲む。

隣にあの女の姿はもうない。

「ひき逃げの現行犯で、逮捕する。」

「はっ、好きにしろよ。」

それからはとんとん拍子であった。ろくな取り調べもされずに裁判にかけられた。若い男女を轢き殺していたこともあって世論は死刑を求める声が多かった。あのクソ女の予想通り速やかに死刑が求刑され、そのまま死刑に決まった。そこから月日は流れて俺は無事に死刑を執行され、21年という短い生涯に幕を閉じた。

しかし、死後俺に待っていたのは地獄ではなかった。

なぜか俺の意識はある。あたりを見渡してみるが何もない真っ暗な空間であった。目の前にポツンと質素な椅子が置いてあるだけで、あとはどこを見ても無限に広がる闇しか見えない。いや、考えようによってはこういう地獄かもしれないなと思い返したところで声が聞こえる。

「妹のイリスが迷惑をかけました。」

闇の丘からひょっこりでてきたイリスそっくりの女。

「ここは、どこなんだクソ女」

イリスに似ているだけでとても失礼な態度を取ってしまったがまぁいいだろう。妹って言っているってことはあいつの姉。どうせろくでもないやつだ。

「クソ女って酷すぎませんかね…。一応私たち初対面だし、私って女神なんですよ?」

ポツンと置かれた椅子に座りながらその女は文句を言っている。かなり気弱な口調と言い座っている椅子の質素さといいなんとも女神とは思えない不思議な女であった。

「申し遅れました。私の名前はアリスといいます。イリスの姉の女神です。この度はご迷惑をおかけしました。」

「迷惑は確かにかけられた気はするが、自分が選んだ道だ。イリスに恨みはないよ。」

大嘘だ。逆恨みかもしれないが知ったこっちゃない。殺されるだけならまだしも俺のやったことが世間の目にさらされてしまったことで弟2人には迷惑をかけるだろう。それが許せないのだ。

「あなたがイリスを恨む気持ちはわかります。ですのでお詫びと言ってはなんですがあなたも転生してみてはいかがでしょうか。」

「そんなことはいい。それより俺の悪評を消し去り弟2人が無事に暮らせるように世界を変えてくれ。それだけでいい。」

「申し訳ありませんがそれはできません。」

「それは、なぜだ?」

「もうすでに起きてしまったことであることに加え、今世界を変えるとかなりのねじれが生じてしまうのです。」

「どうしても、できないのか。」

「ですから、今できるのは転生くらいです。転生して今度は自分の意思で自由に生きてみてはいかがでしょうか!」

「そうだな……俺にはまだやったことがないことが多すぎる。それも悪くないかもな。」

「そうですか!それでは早速、転生の儀を」

「待ってくれ。やはり転生するということはなにかしらの特典がもらえるのだろう?」

「そうなのですが、これまでの転生者たちに目ぼしいものは全て与えてしまったので世に言う、ちーとと呼ばれるような特典は残っておりません。」

「………そ、そうなのかぁ。」

「こ、この中から強そうなものを見繕っておきますのでどうかお許しを!」

あのクソ女に似た見た目でぺこぺこされると少し気分が良くなってくるな。

「わかった。それじゃあ転生の儀とやらに取り掛かってもらおうかな。」

そういい終わる前に聞きたくなかった声が聞こえてきた。

「ねぇ、おねぇさまぁー?なにしてんの?」

「あ、イリス!こ、これはね」

「あぁー、守也を転生させようとしてるのかぁ!」

「そうなのよ、何か問題でも、あったかしら?」

「ううん、問題ないよー。でもさ、強いスキルないから困ってるんでしょー?私から何個かチートって呼ばれるスキルあげるからさ!それでいいんじゃない?」

「おい、イリス!お前の言葉は信じられ………」

「はい、お口チャーーーック!」

「もがっ!!!」

謎の力で口を閉じられた俺はなにも言えなくなる。

「うん、イリスがくれるならきっと守也さんも次の世界では不自由なく暮らせるでしょう。うん、そうしましょう。」

俺の意見がガン無視で決まったスキルと転生先。そもそもスキルの使い方や効果、何個あるかなどは一切の説明がない。

「それでは、女神イリスが命じる!!汝、緑川守也を世界を救済する勇者とし、第二の生命を与える。」

「それじゃあ、せいぜい足掻いてみてね?」

遠のく意識の中、最後に聞こえた言葉はどう解釈しても不穏なものであった。

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