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期間限定の最愛  作者: くぅ
2/2

2人の共通点



仕事へ向かう車の中で、ずっと彼女の言葉がリピートする。

「もちろん!楽しみにしてる!」


会社へついて車から降りる前に、一言

「りっちゃん、おはよう!」

返信は来るのか、また不安になるのと同時に、俺自身の中に迷いがあった。


彼女と俺は子供の頃からお互いを知っている。

俺が小学生になった時、通学班のリーダーは6年生のりっちゃんだった。

当時の俺は、まさにクソガキ。

リーダーのりっちゃんによく怒られていた。


1つ忘れられないのは、俺がふざけて車の前に飛び出した時の事。

りっちゃんは俺の腕を引っ張って列に戻し、車に頭を下げていた。

また怒られるくらいにしか思っていなかった俺に向かって

やっぱりりっちゃんは怒った。

でも、その顔はいつもと違っていて、半泣きだった。


「敬大になんかあったり、怪我したりしたらみんなが心配するんだよ!」


そう一喝された後、りっちゃんは泣き出しながら、怪我をしていないか、痛くないか、強く引っ張った所は痛くないかと聞いてきて、クソガキながらに、これはさすがにやりすぎたのか?と思った。

あの時のりっちゃんの顔は今でも鮮明に覚えている。

そして、大人になった今思うのは、彼女は子供の頃から人一倍責任感が強い分、心配性でもある。


その後、彼女が中学生になってから、お互いが大人になるまで俺達は一切接点がなかった。

当たり前だよな、彼女は俺より歳上の人だから。


大人になって、俺も地元へ戻ってそこで再会したりっちゃんは、もう結婚していて子供を連れていた。

隣には旦那らしき人が立っていたけど、俺の顔を見るなり

「敬大!!久しぶり!元気?」と笑って話しかけてくれたのが妙にほっとした。

それどころか、俺は当時彼女がいたのに、大人になって綺麗になったりっちゃんにドキッとすらした。

子供に話しかける時に屈託なく笑うその顔に思わず魅入ってしまった。

「知り合い?」隣に立っていた男が彼女に尋ねる。

そうだよと答えるその一瞬を俺は見逃さなかった。

なぜなら、いつも明るくて笑ってる顔が、一気に曇ったからだ。

その隣に立っていた男に、俺はなんだか妙にイラついた。


それから数年後、俺は俺で結婚して子供もできた。

大人になってからの2度目の再会は、俺達が当時通っていた小学校が取り壊しが決まり、卒業生イベントの時だった。

その頃には既に、嫁との喧嘩も増え、イライラしては物に当たってしまう俺になっていた。

それでも家族は守るべきものだと、当時は信じて疑わなかった。


大勢の人の中から彼女を見つけて、今度は俺の方から声をかけた。

久しぶり!元気?みんながみんなそう言っては会話が始まるのと同じように、彼女とも話し始めると、彼女は

「何があった?前と表情が全然違うんだけど」


そこから、お互いの夫婦に関しての話が始まる。

夫婦ってなんなんだろな…そう呟いた俺の言葉に、彼女は右手で左腕をギュッと掴みながら、本当になんなんだろうね…

その言葉とギュッと掴む腕が妙に気になる。


その日に連絡先を交換して(半ば無理やり俺がきいたようなもんだけど)、何度か連絡を取るうちに、ギュッと掴む腕の真相を知った俺は、自分でも信じられないくらい怒りが込み上げた。

彼女は結婚して子供を産んだ直後から、ずっとDVを受けていた。

誰にも言わないで。彼女がそう望んだから誰にも言わなかった。でも、放っておくことも出来なかった。

結局俺のその行動が、別の意味で彼女を傷つけることになったのに、放っておくことができなかった。



そんな事を思い返しているうちに、彼女から

「おはよう!今日もお互いお仕事頑張りましょー!」と返信が届いた。

そのメッセージの最後にこうつけ加えて。

「また連絡来て安心した」

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