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Don`t Read(人生観)  作者: 安川瞬
9/19

Kill Me

あなたの愛よ永遠に

「ねえ。私を殺して」


毒リンゴが地面に落ちる。

万有引力。

宇宙の法則。

そんな常識のように。

まるで当たり前のことのように。

息を吐くように。

事実息を吐きながら。

彼女はこれから起こるであろう未来。事実を口にした。



研ぎ澄まされたナイフが地面を溺れる。

うねりうなり、ナイフは言葉に身を変える。

僕を映してそいつはつぶやいた。


「彼女を殺せ」


殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!


発狂の渦。暴れだす涙。銀の粉末が空を切る。

肺を巡る硝煙の匂いが、懐かしく思えた。

幼馴染の声がまた耳の鼓膜を震わせる。


「私を殺して」


「」


肺はすでに閉ざされた。

咽頭はすでに閉ざされた。

希望はすでに閉ざされた。

絶望はすでに顔を向けていた。

幼馴染はすでに笑っていた。


残されたのは鏡。

銀のナイフ。

周りに落ちた血の頭。

濡れた顔。

笑った顔。

泣いた顔。

そして硝煙の叫び声。

ニトロ加速器が外で咆哮をあげていた。


「ころし「いやだ!!!!!!!!」


「いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ!!!!!!!!!!!!!!!」


ナイフを拾う。

投げる。

窓の炸裂音。

走り出す。

抱きしめる。

彼女の匂いが前面のすべてに広がる。

彼女の匂い。香水の匂い。


「私を殺してよ」


できるわけないだろ。


床に広がる血液。

あふれる涙。

すでに痛みはなかった。

麻酔が全身を駆け巡る。

すでに痛みは快楽になっていた。

倒れる。


独リンゴ。

彼女はいつだって孤独だった。

僕しかいなかった。

そんな彼女を殺したのは僕だった。

僕は彼女から逃げた。

逃げてしまった。

怖かった。

愛がとても怖かった。

逃げて逃げて。

気づいて戻ってきて、

戻ってきて……。

そこにはもう彼女はいなかった。


「もう私は私じゃないの」


「あなたを愛していたのよ」


「ずっとあなたのことだけを考えてた」


「ねえ。どこに行ってたの?」


「私もう頑張ったよね」


「私を殺してよ」


「こんな私私じゃない」


「もうあなたに嫌われたくない」


「あなたを愛しているから、もうこれ以上愛したくない」


「銀のナイフで!私を刺して!!」


すでに賽は投げられて、もう出目はでていた。

絶望。

救いはなかった。

どこで間違えた。どこを直せば僕は平穏に生きていた?

十年前は伸びていた手がもう伸びなかった。


「5歳の時、約束してくれたものね」


「私を愛してくれるって!!」


忘れるわけがない。

時間がさらにゆっくりと引き延ばされる。

すでに加速器は鳴りやんでいた。


「殺して」


「殺してよ!!」


「早く!!!」


「ねえ!!!!」


「あなたの愛した私はもう死んだの!!」


「もう私は死人なの!!!」


「殺して!!!!!!!!!」












抱きしめている手に冷たさが宿る。

僕は死人。

君も死人。

シャンデリアに灯がともる。

加速器が鳴り響く。


骸骨の王子とお姫様が舞踏会。


君への愛は死してなお。

銀のナイフが躍る舞踏会。

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