Fog Ocean
愛って何?
こんなに愛してるのに
深い。深い海の中。
手を伸ばせば、私は助けを求めれるのか?
深呼吸。息を乱さないように、白い空気を肺に取り込む。
私の目的は、ただ一つ。この場から早く逃げ出すこと。
何も見えない海の中から財宝を探し出すように、私は出口を手探りで探していた。
アキトく〜〜ん〜〜???ど〜こ〜に〜い〜る〜の〜??
……ただ、この海には一匹の化け物がいる。
その化け物は……私を執心深く追いかけ、見つけ次第……
……殺す。
息が乱れることで漏れ出てしまう呼吸音すらも閉じ込めたくて、私は歩むペースを少し下げる。
そもそも、なんで私が狙われているのか?まあ、それの関しては理由は明確だ。
彼女から、会社から私は逃亡した。
人外じみたあの場所から私は逃げ出したかったのだ。
あ〜〜あ〜〜愛しの〜〜アキトく〜〜ん!!
その声を聞くだけで体が震える。
これについても理由は既に分かっている。
……私の友人を……殺していたのだ……
いや、それだけならどれだけ良かったことか。
彼女は私の友人の……頭を……
みーつけた❤️
その声を耳が聞いて理解するまでに1秒未満。私は反射的にその声から離れた。
酷いよ〜。なんで逃げるの〜?
彼女の放つ蠱惑的な雰囲気に私の脳みそが快楽に溶けようとする。
もう一度その声が聞きたい。あの人の元で生きたい。あの人を愛したい。
そんな欲求が頭の中を駆け巡る。
今なら間に合うからさ〜。い〜っぱいアイしてあげるよ〜?
下半身の欲求が、男性としての本能が、彼女の猫撫で声にストレートに響く。
……だが、負けてはならない。理解している。あの女が予想以上の悪魔であることを。
……ふ〜ん。強くなったね、アキトくん。
私の名前は「森下 彰人」
ますます、欲しくなっちゃった〜❤️
そして、目の前にいる彼女は私の働く会社の「社長」
彼女の近づく音が聞こえる。あの声から抜け出せた私だ。もう、どんな誘惑にも乗らない自信があった。
黒い髪。
心臓が掴まれる。
驚愕した。
彼女は
社長は、滅多に……いや、人に素顔を見せない。
見る方法としては、殺されるぐらいだが、その美貌を見たと同時に死ぬのだから楽しむ暇もない。
黒い瞳。
今は彼女を残していない、日本人の特徴をもった美しい女性。男性にとっての欲望の象徴がそこに立っていた。
自分が彼女の体に思考が根こそぎ奪われているの気づくのに数瞬。私は彼女から背を向け逃げ出した。
人間の本能としては、生物の本能としては、それは間違った選択なのかもしれない。けれど、私の理性が叫ぶのだ。
アレとヤるのはまずい。
結果、私の中の理性が本能に打ち勝ち私はこの閉塞世界の出口にまで行こうとしていた。
抜け出せる!!
私の頭が希望でいっぱいになった。心臓が煩い。いや、今はいい。この場から抜け出せるのだ。私の、友人の、みんなの悲願を、私は今叶えるのーー
気づくと私は転けていた。
何もないところで。
無様に。
吐息が溢れる。
またしても全身を恐怖が駆け巡る。
何故転けた?いや、そんなのどうでもいい。
圧倒的な存在感を後ろから感じる。
見たくない。嫌だ。嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
アイしてる。
地面にあったのは石ころでもなんでもなかった。
ただの植物だった。
私はアイに包まれた。
あなたは殺さない。だって、読者が悲しむんだもん。
せっかくのネーム付きなんだから、いっぱい「使わな」くちゃね。
アイしてる。