Give you
見ないで。
ここはわたしとあなたの愛の巣よ?
来ないで。
近づかないで。
私を嫌いになって。
愛って何?
目の前に寝ている恋人に向かって私は問う。
ねえ。愛って何?
現れる、幻想はコーヒーの匂い。誰かの血液。鉄臭い水溶液。
手に持った銀の鈍器は私に怒りを囁いた。
許せない。あんなやつ許せない。
愛って何だったの?私を愛してくれるんじゃなかったの?
嘘つき!嘘つき!嘘つきなんて死んじゃえ!!
アンモニア水溶液にフェノールフタレイン液を混ぜたようなあざやかな「あか」
綺麗。綺麗。綺麗。
動かない人間ってこんなにも美しいのね。
愛した彼の瞳孔を舐める。
彼の味。私しか味わえない、私専用の食材。
私の舌を通って、その味は全身に浸透する。
体内を
血液を
肺を
臓器を
巡って
巡って
脳に快楽が訪れる。
魅惑の味。
蠱惑的な顔。
私を誘う、甘いケーキ。
あゝ、ダイエットしなくちゃ❤️
でも、残すなんて愚の骨頂。
食べ物は最後まで食べられてこそ、美しく輝く。
タンパク質。脂質。無機質。炭水化物。
柔らかいガラスを抉って口に放り込む。
イクラをつぶすように、中から液体が漏れ出る。
あなたの一部は私の一部になるの。
嬉しい。
私の体に順応していくあなたの一部が
こんなにも喜びに満ち溢れて、脈動する。胎動する。
コリコリとした感触。これは?
あなたが今まで吸い取った思い出を、私との出会いを食べてあげる。
バリッ
魚の骨のようにその部位を砕く。
手に持つは銀の鈍器。
怒りの象徴。そして、私の部下。忠実な僕何も喋らず、黙々と仕事を繰り返す。
薄い皮を剥がす。両方。2つついている皮。
切り取ると、何か哀愁が漂う顔になってしまったけれど、あなたが悪いのよ?❤️
ん。独特な食感。少しゴムっぽいけれど、ちゃんと肉の味がする。
転がった殘りの玩具をチラリと見る。
動かず、私を見守る玩具首から先には、白い糸が縺れ出ていた。
ああ、糸が勿体無い。けれど、あれは後でも構わない。
まず私がするべき行動は……………………
あ
な
た
の
脳
を
味
わ
う
こ
と
優しい味。私を包み込むような。そんな味。
今まで味わったことのないA級グルメ。いや、S級。
顎が砕ける音。
わたし?あなた?
どうでもいいや。飲むのに顎は必要ない。
蟹味噌を飲むようにジュルジュルと下品な音を響かせながら、あなたを流し込む。
あゝ、これがあなたの記憶。あなたの感情。あなたの一部。
ご馳走さま
おいしい