Question
以前書いた「仮面」に少し続いているお話です!!
先にそちらを見てから読むことを推奨します!!!
期待の重さに潰されそうな僕を、先輩はいつも応援してくれていた。
「後輩君!!」
倒れた僕にすぐに水を持ってくる先輩。いつも通り、周りからは嫉妬の視線が飛んでくる。
こんな生活が始まったのは、いつからだったか。ただひたすらがむしゃらに練習を続けていた僕は薄れゆく記憶を取り戻すためにゆっくりと目をつぶって……。
そう。あれは、僕がこの部活に入ってすぐのことだ。
全く運動していない怠惰な生活を親が叱咤したことからだったか。僕はこの部活に入ることにした。
今思えばもう少し考えた方がよかったか。ただあの当時は親を見返したいというしょうもない考えに引っ張られてしまっていて、まともな思考能力を持っていなかった。
結果的に入ったのは、この学校で一番きついと言われている運動部。
……もちろん数日はこん畜生という気持ちで頑張り続けることができた僕にもだんだんと後悔の念が湧いてきた頃だ。
経験者が入るような部活だ。周りは僕を置いてみるみると成長していく。それでも追いつきたい……いやしがみつきたいという一心で僕は積極的に自主的に練習を続けた。
何でかな。何であんなに僕は必死だったのだろうか。
いや、初めて何かに必死になることを覚えて僕は少し喜びの感情を覚えていたのかもしれない。
兎に角、それぐらい僕は毎日を怒涛の勢いで邁進していた。
「お前の練習には何の意味もない」
ズシン。
その言葉は金槌のように僕の頭を直接叩いた。
脳がグラグラと揺れ動いたような錯覚。
あくまでそれは錯覚だけれど、僕が信じ続けていた「努力」の二文字が否定されたような、いや実際否定されたことによって僕の心は完璧に打ち砕かれた。
僕にそんな言葉をぶつけた彼は、彼は、とても優しい人間だった。
このまま続けても経験者と素人の差は縮まらない。さらに努力を積み重ねた先にあるのはその積み重ねた分だけの絶望なのだと、彼は身をもって教えてくれた。
なんだかんだ僕の練習を手伝ってくれたりしていた「友人」のような存在だと思っていた彼に突き放されたようなそんな言葉にまた別の絶望感が僕に襲い掛かってくるけれど、その役を自ら打ってでたあたりやはり彼は優しい人間なのだろう。
無意味。
無価値。
無駄、無必要。
心に空虚だけが募る。
無だけが僕の心を支配する。
親を見返してやるという火種はすでに濡れそぼったマッチとなっていて、役に立たなかった。
僕を活気づけてくれた努力に対する喜びの感情も既に粉々にされてしまっていた。
正しい意味で僕は、敗北したのだ。
結局のところ、努力に意味はなかったのだ。
やはり才能の前に努力が立つことはできなかったのだ。
でも僕はやめることができなかった。
もう部活に行くことはなかった。見せる顔なんて無かったから。
僕には何も残っちゃいなかったから。
でも何も残っちゃいない僕だったけれど、灰と化していた僕だけれど、
習慣というものは恐ろしいもので、やめることはできなかった。
がむしゃらに、止まった時を、取り戻そうと、無駄な空虚を、実体化させようと、触れようと、手を伸ばして、
目の前に現れたんだ。彼女は――。
彼女はお面を被っていた。綺麗なお面だった。
見たことのないような意匠が施されている……少なくともこんなお面を僕は知らなかった。
そんなお面をつけた彼女が目の前に佇んでいた。
「何度、生まれ変わっても貴方は変わっていなんですね」
凛とした佇まい。話し方。その二つだけで理解できるほどに彼女から溢れ出る気品。
モテるだろうな。
率直にそんな感想が湧いてしまった。ただそれぐらい彼女は美しかった。
……顔はわからないけれど。
「いつまでたっても、何度会っても、貴方は自分を作り続けるのですね」
ゾワリ。
それは悪寒なのだろうか。全身に鳥肌が蠢きだすのを感覚が捉える。
「き、きみ、は……」
怪しく微笑む。
……微笑んだような気がした。
顔は見えない。でも、彼女の感情が手に取るように僕にはわかってしまった。
「我慢する必要なんてないんだよ?」
その口調は少し砕けていた。
「心君」
「は、はい」
僕の名前は心ではない。
僕の名前は、
僕の名前は、
「心君」
もう一度呼ばれたことで意識が強制的にそちらに向いてしまう。
「貴方が我慢をして死んでから、私、ずっと貴方を追いかけていたの」
僕が死んでから……?
「ねえ。もう一度やり直さない?」
手を引っ張られる。
彼女からの質問。
僕はそれにどう答えていいかわからず、
「君からの答えを待ってるから」
続くよ!!(ほんとに短編、、??)